いつも通りで時々異常。

3(後編)


指差す先にはシートに置かれた大量の刀がある。
「ああ?見りゃ解るだろ。か・た・な、だよ。」
「解りますけどこんなにいらないでしょ…」
彼がそう言うのも無理は無い。
決して広いとは言えない車内には、長さも大きさも様々な刀があるのだ。
「キミは何を聞いてたのかな?」
かなりの速度で運転しているっていうのに、思いっきり顔をこちらに向けている。
危ないと言ってもオレンジ色の髪した彼女は聞かないだろう。
「危ない、って言っただろ?」
「え?鞘さんの運転がですか?」
高速でパンチが飛んできた。
片手をハンドルから離しての腰のはいったパンチ。
どうして運転しながらもそんなモノが打ち出せるのかいささか不明だが、そんなことよりその反動で車線が大きく逸れた。
ぶつかれば確実に車両大破まっしぐらだったが、隣に車が走ってなかったのが幸いだった。
「あっぶな…」
一瞬の沈黙。
「…今のは置いといて、今回は早蕨家相手だって言っただろ?」
自分でも反省したらしく、今度はちゃんと前を向いてバックミラーを通してこちらを見て言ってくる。
「いや、でもこんなにいらないでしょ…。」
そう言って一本手に取ってみると、どこかで見たような感じの刀だ。
「あれ?これって…」
黒光りする鞘におさめられていた調度両手を広げたくらい大きさの刀。
「ん?あぁそれだろ?それは桐生家の家宝で、切れ味抜群なんだぜ。」
「へぇー…桐生家のですか。通りで見た事あるはずだ。ってウチのじゃないですか!!」
「あははっ、カワイイなーともくんは。」
笑いながらまたもこちらを向いてきた。
さっきの事故未遂は覚えてるのだろうか。
「かわいいなー、じゃないですよ!どうやって持ち出したんですか!」
「もちろん親父さんに許可は貰ったよ。使わせて下さい、ってな。」
はぁ…この人は。
どうせ詳しい説明はしてないんだろう。じゃなかったらいくらあの親父でも家宝は貸すまい。
自然と呆れ顔になる。
「まあまあ気にすんなって。と…着いたぜ。ほら、早蕨神社だ。」
いつの間にか、例の少女の気配が消えた、あの大鳥居の前に着いていた。
昨日術を返されそうになり不本意ながらも本気を出さざるをえなかった場所。
これから鞘さんと一緒ってのはちょっときついけど、頼りになるし仕方ないよな…。
「さて…じゃあまずは見てまわるか。」
本人曰く「護身用」の刀を一本、ひょいっと持ち上げて車から降りる。
「はい。」
一度式神で見ていたのだが、その事は伏せておいた。(勝負したことも勿論だ)

二人はその大きな鳥居をくぐる。
下から見上げると本当に大きなものだ。

その鳥居は彼に、美術の授業で習った有名な彫刻家が彫ったという「考える人」を最上部に携えた「地獄の門」とかいうのを連想させたが、それが何なのか良く知らなかったし、間違っていたらバカにされると困るしってことで鞘さんには黙いた。


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