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蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~
「晩春」
NHK BSで、「晩春」を放送していた。
小津安二郎監督の作品は「東京物語」ぐらいしか見ていない。
「晩春」も同様に、モノクロで淡々とした世界が広がっていた。
気に入ったシーンは、父親と友人の大学教授の会話。
「海はあっちかい?」「いや、あっちだ」
「じゃ、東京はあっちかい?」「いや、あっちだ」
「昔からかい?」「ああ、昔からだ」
だいたいこういう風に言っていたのだが、このテンポが面白かった。
また紀子の友人が、父の額にキスをするシーンに、度肝を抜かれた。ええ?1949年公開作品よ?いいの?
最初は「退屈かも・・・」と思いながら、画面を追っていたのだが、紀子(原節子)の父(笠智衆)への想いが揺れ動くようになってから、食い入るように見た。
紀子の言葉使いや、父との生活などは、「最近はこんな言葉使いや生活をする父娘なんていないよな」などと、斜に構えて見ていたのだが、紀子が結婚を勧められて苛立ってくると、なんだか好感が持てた。上品な紀子が、友人や父に感情をぶつけるという部分に共感したのだ。聖人君子は余り好きになれない。ひねくれものの私。
笠智衆の演技は、棒読みで単調だと思っていたのだが、「晩春」までに100本以上の映画に出演しているところを見れば、これは彼独自のカラーだったのね。これまで、かなり年配になっての彼の演技しか見ていなかったのだが、年をとった笠智衆は枯れた演技で好きだった。
再婚すると言う父に反発し、自分は結婚しないでずっと父のそばにいたいと言う紀子。説得する父親。
上品な紀子の感情の激しさに好感は持ったものの、その内容には共感できないでいた。それは父娘の愛が男女の愛へ変質していくのを感じて、受け入れられなかったからだ。
しかしラストシーンの「りんごの皮むき」は切なかったなあ。
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