蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「メルシィ!人生」




2004年に見たレンタル映画の中で、かなりポイント高い作品。
私の大好きなパトリス・ルコント監督の 「橋の上の娘」 に出演していた、ダニエル・オートゥイユが主演。
「橋の上の娘」では、どことなく翳のあるストイックな男を好演していた。
一転、この「メルシィ!人生」ではコメディタッチの役を演じている。
他の出演者は、ルコント映画には欠かせないジャン・ロシュフォール、ジェラール・ドバルデュー、ティエリー・レルミットなど。
このティエリー・レルミットなのだが、どこかで見た顔だとずっと思っていたら、最後に思い出した。

13年程前に見た 「妻への恋文」 という映画に主演していた俳優だった。
ちょいと訳ありで東京に行き、そこでふらりと映画館に入って見た作品なので、よく覚えている。
「妻への恋文」の監督はジャン・ポワレ。
この作品が監督デビュー作になったが、その後急死し、遺作となった。
主演女優は監督の内縁の妻だったカロリーヌ・セリエ。
奇しくも彼女への最後の恋文となった。
映画の内容は、今考えるとルコントの「髪結いの亭主」に似ていなくもない・・・。
大幅に脱線してしまった、「メルシィ!人生」の話に戻ろう。

フランソワ・ビニョン(ダニエル・オートゥイユ)は冴えないサラリーマン。
ゴム製品を作っている工場の経理を担当している。
20年間真面目に働いていたのだが、目立たない性格のためかリストラに遭いそうになる。
妻に逃げられて、定期的に会うはずになっていた息子にもけむたがられていたビニョンは、前途を悲観して、マンションのベランダから飛び降りようとする。
隣の部屋のベランダから、老人が声を掛ける。
「真下にあるのは私の車だ。飛び降りるのは止めてくれ。ポンコツだが、屋根にはまだ傷がついていないんだ」と。
それがキッカケで老人に悩みを打ち明けるビニョン。
老人はビニョンがリストラにあわないような方法を教えようと言う。
彼がビニョンに伝授した方法とは?

最高に面白い作品だった。
ビニョン自身は変化していないのに、周りの見る眼が変わるだけで、彼の評価がガラリと変わる。
人間の思い込みがいかにいいかげんなものか、思い知らされる。
そして差別意識というものの、脆さも露呈。
クスッと笑い、またはブハッと爆笑をさそう場面も数々。
最後はなんだかほんわかと心がハッピーになる映画。

フランス映画の奥深さをしみじみと感じた。




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