蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「声に出して読めないネット掲示板」

書籍名:声に出して読めないネット掲示板
著者名:荷宮和子
出版社:中央公論新社

感想:いや~、面白かった。
ちょうどイラクで日本人が拘束された時に、偶然買った。
世論やネット世界で、人質やその家族がバッシングされていく様子は、本の内容とシンクロしていき、恐いくらいだった。
著者は自称「女子ども文化評論家」の荷宮和子さん。
ネット掲示板=2ちゃんねる的なものとし、主に2ちゃんねるを読み、内容から現代の若者像をあぶりだしていく。
興味本位での物言いではなく、心のそこから今の日本を憂い、声をあげている。その姿勢には共感をおぼえた。
ジェンダーについての記述で、面白いところがある。
(以下抜粋)
<「フェミニストの言うこと自体はわからないではないけれど、あの人たちってどうしてああいう言い方をするのかしら」(中略)
つまるところ、他者を「論破」することこそを至上の目的としているため、他者の「言い方」のみに着目し、なぜ他者がそのような言動を取るようになったのかといった意味での他者の「心情」になどまるで頓着しない、どうやらそういう世代が社会の多数派となりつつあり、ネットの隆盛とは、そのことの表れではないのか、そう思えるのである。>

徹底的に2ちゃんねるを読み、その中から救われる点を探し出す。
それはとても良心的だと思った。
ただ後半になるにつれ、筆が進みすぎたか、だんだん激しい物言いになり、ホントに「声に出して読めない」単語が書いてあったりもした。
ま、これについて著者は<「公の場で」そして「良識のある女性として」使うことが許されている語句だけを使ったのでは、セックスにまつわる問題について、「いったい何が問題なのか」「果たしてどんな不都合があるのか」を、過たずに伝達したり議論したりすることは不可能である、そう私は認識しているのである。>と言っている。なるほどね。
<>内は本文より抜粋

内容は面白いのだが、残念に感じたのは、最後に自分のことを書いて終わったところ。
そこまでは、セックスについての記述など、なかなか激しい物言いだったのだが、最後で急に自分のことを言ったのには、なんだか言い訳がましく感じられた。
と言いながら、ラスト以外は十分に共感をおぼえながら読んだ。
彼女のほかの著書にも手を伸ばしてみようかな。



© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: