蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「横溝正史集~面影双紙~」

書籍名:「横溝正史集~面影双紙~」
著者名:横溝正史
出版社:ちくま文庫

感想:1981年に映画化された「蔵の中」という作品は、主人公の姉役を松原留美子というニューハーフの女性?が演じたことで話題になった。
話題になったから原作を読んだのか、すでに読んでいたのか忘れたが、あまりの耽美な世界に、私はすっかり横溝正史の耽美的な作品群に魅せられてしまった。
さすがに映画は見なかったが・・・。

横溝の作家生活は大正10年から昭和55年まで、60年にも及んだ。
60年の作家生活を、作風に分けると3つの時期に分かれるらしい。
横溝正史といえば、探偵金田一耕助シリーズが有名だ。
金田一耕助が活躍するシリーズは第三の時期らしいが、私が気に入っている「蔵の中」などの一連の耽美的な作品は、第二の時期にかかれた。
ちくま文庫から出された「怪奇探偵小説傑作選-2 横溝正史集」には、「面影双紙」「鬼火」「蔵の中」「貝殻館綺譚」「蝋人」「山名耕作の不思議な生活」「双生児」「丹夫人の化粧台」「妖説血屋敷」「舌」「面(マスク)」「誘蛾燈」「湖畔」「孔雀屏風」「かいやぐら物語」などの作品が収められている。
ほとんどの作品には幻想的な世界が出現し、登場人物はその世界に巻き込まれていく。
傍観したまま物語が終わる時もあり、身を破滅させて幕を閉じることもあり、読者は絶えずハラハラドキドキと次頁をめくることになる。
どんなに太陽が照りつけている昼間を描写していても、どこか薄い皮膜を被っているような感覚。
独特の美的感覚と耽美的世界。
そのひんやりとした空気に纏わりつかれ、主人公と一緒に心中する読者が増えないことを祈るばかり。



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