蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

阿修羅城の瞳

キャスト   病葉出門 ・・・市川染五郎
       闇のつばき・・・天海 祐希
       安倍邪空 ・・・伊原 剛志
大阪・松竹座 2003年9月

2000年夏、市川染五郎と劇団☆新感線との初共演作品として、上演された。
今回は3年ぶりの再演。
前回は、完璧に出門に魂を抜かれてしまい、しばらく社会復帰できなかったので、今回も大いに期待して、松竹座の門をくぐる。

細かい部分のセリフや衣装などは、新しくなったようなのだが、新鮮な驚きはなかった。
染五郎さん自身慣れたからなのか、前回のような躍動感が感じられず、今回は出門に魂を全て抜かれるということはなかった。もちろん彼の出門は妖艶でお茶目で、魅力的なのは言うまでもないが。
つばき役の天海祐希は、もともと好感を持っていた女優なので、彼女のつばきを見るのを楽しみにしていた。
前回のつばき役は富田靖子。演技が上手い女優なのだが、個人的に好きなタイプではない。つばき(阿修羅王)を演じるにしては、崇高な神々しさがなかった。ただ、形容しがたい「邪」というモノは感じられた。
今回の天海祐希は、上品な美しさがあるので、つばきの近寄りがたい殺気などを表現してくれるものと期待していた。
確かに、つばきが阿修羅に転生してからの声などは、さすが元宝塚の男役、男でも女でもない、中性的な雰囲気を醸し出していた。
ただ、難点をいえば色気がない。たとえ中性的な雰囲気があっても、そこに恐ろしいほどの色気(うっふ~ん、あっは~んとかじゃなくてね)を感じなければ、阿修羅の恐ろしさや、出門が惹かれる訳、邪空に言い寄るシーンなど、納得がいかない。特に出門の背中の傷を舐めるシーンに、色気が欲しかったのだが・・・。
今回の拾いモノは、邪空かな。伊原剛志さんが男くささを発散していて、私の魂は邪空にお持ち帰りされてしまった。
前回の邪空役は古田新太さん。彼も上手い役者で、邪空の哀しみや出門への想いを余す所なく表現していた。(ドラマ「スタアの恋」でもいい味だしていた)
ただ、哀しいかな、ルックスが私好みじゃない。(すみません)
伊原邪空は、出てきた時点でトキメイてしまった。舞台の上手で出門が何やらやっているのに、目は下手に立っている邪空に釘付け。
出門の思いもわかる、しかし邪空も頑張って~という、相反する感情に身を苛まされながらの観劇。邪空が死んでしまったとき、ガックリしてしまった。
でも古田邪空に比べて、伊原邪空はクール。古田邪空は死ぬ前に、出門への複雑な思慕を吐露したのに、今回はほとんどナシ。なぜ?
伊原邪空のルックスとクールさは、とても気に入ったのだが、その部分が物足りない。人間でありながら、鬼の感情で動いてしまった邪空の弱さや屈折を表現してこそ、出門の強さ(愛する女に刃を向ける)が際立ってくるはずだ。

その他のキャストも、前回のほうが私好み。
美惨:(前回)江波杏子→(今回)夏木マリ 抜刀斎:渡辺いっけい→橋本じゅん 安倍清明:平田満→近藤芳正 鶴屋南北:加納幸和→小市慢太郎

今回の「阿修羅城の瞳」では、それぞれのキャストの個性が弱くて、前回に比べ個々の役柄がリアルに立ち上がってこなかった印象を受けた。






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