蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「ジギル&ハイド」




韓流ミュージカル「ジギル&ハイド」の日本公演千秋楽に行ってきました。
場所はNHK大阪ホール。ここには何度か来たことがあるのですが、床や壁が木材で出来ていて、反響はそれほどシャープではないけれど、全体的に落ち着いていて温かみのあるホールです。

ジヌ友のsabatoraさんやともさんのおすすめに、迷っていた心をそっと押された形で観劇してきました。(笑)
でも日本の楽だというのに、まだS席に空きがありました。当日券も出ていたみたいです。口コミでの前評判は良かったのに、あまり宣伝していなかったからかな?もよりの駅にもポスターを貼ってなかったです。もったいない。

今回はもちろん韓国語での上演なので、字幕つきでした。
この字幕、上手と下手の両方に置いてあったんですが、1階の後ろからだとちょっと字が小さかったです。オペラグラスを忘れた私には、ぎりぎり見える限界の大きさ。お隣のご婦人は肉眼ではほとんど見えなかったらしく、オペラグラスで字幕を見ていたそうです。
セリフを読むのに必死で、なかなか役者の演技に目がいきません。それが残念でした。リピーターだったらよかったんですが。

それから素晴らしい歌の後、拍手が沸き起こるんですね。ま、これは当然のこととして、その後「ブラボー!」とか「ヒュ~!」とか声をかけるファンが多数いました。きっとリピーターの方々なんでしょう。チョ・スンウssiの歌声は素晴らしかったので、声をかけたい気持ちはよく理解できるのですが、初めてこのミュージカルを見た者として、ちょっと気分をそがれたように感じました。掛け声のたびに、「ジギハイ」の世界から現実に引き戻されてしまうんですよ。高揚した気分のまま、次のシーンを見たかったです。

さて、気になったことはここまでにして、作品自体や役者についての感想を。
「ジギル&ハイド」のストーリーは、くわしいことは知らなかったので、『この先はどうなるのかな?』というワクワク感を持って見ていました。ストーリー自体は複雑に絡み合ったものではなく、しごくシンプルなものでしたが、とても深い内容で、じっくりと考えさせられました。

チョ・スンウssiはとても魅力的な役者でした。彼の作品は映画「ラブストーリー」しか見ていないのですが、強烈に印象に残っています。
決して美男子ではないけれど(スンウssi、ミアネ~)味のある表情と、『もう一度彼の姿を見たい』と思わせる不思議な魅力。これは役者としてとても素晴らしい要素を持っているということですよね。

今回の「ジギル&ハイド」でも、善の象徴であるジギル博士と悪の権化であるハイドを見事に演じ分けていました。もちろんそれは別の人間を表現しているというものではなく、同じ人間の中に息づいている“善”と“悪”の表裏一体の要素をきちんと観客に伝えていました。
ラスト近く、混乱に陥ったジギル博士が、ハイドと交互に人格を現すというシーンがあったのですが、ここが見事でした。
照明の色によって、それぞれの人格の変化をわかるようにしていたのですが、それ以上にスンウssiの声や動作によって、別の人格になっていることがはっきりとわかりました。

彼の歌声はとても艶やかでセクシーでした。オペラ歌手の声とはまた違うんですね。オペラ歌手の中でも、私はドミンゴさんが好きなのですが、どちらかというとスンウssiは、ドミンゴさんに近いような気がします。艶があってセクシーで、その歌声を聴いただけで恋に落ちてしまうような、魅力的な歌声。

それからミュージカルナンバーがどれも印象的でした。
特に気に入ったのは、ルーシーの歌う 「No one knows who I am」
私はこの曲を聴いたとき、すぐに『OSTを買おう!』と決心したのでした。(笑)

そう、今回はハイドとルーシーに惹かれてしまいました。ジギル博士とエマのカップルも素敵だったのですが、世の中の酸いも甘いも味わいつくしたルーシーと、殺人を重ねながらも悲しみを湛えたハイド、このカップルに共感を覚えました。
ハイドがしばらく身を隠すとルーシーに告げにきたときに、2人で歌う「It's a Dangerous game」が圧巻。セクシーでなんとも魅力的な歌声に、どきどきしてしまいました。

白い色が、それだけで存在していても目立たないように、黒という相反する色と共存してこそ、あの清らかさが際立ってくるんですよね。人間も同じかな。もちろん神のように美しい心だけで存在することが理想だけれど、人間にそれは不可能だから・・・。善と悪が複雑に絡み合ってこそ、1人の人間としての魅力と深みを感じられるのではないかな。
今回「ジギル&ハイド」を見て、そんなことを考えました。
悪役に魅力を感じられたのは、やはりスンウssiの演技力のおかげでしょうね。哀しみを湛えたハイドは、ほんとうに魅力的でした。

カーテンコールのとき、ジギル博士の扮装でお辞儀をしていたスンウssiが、突然束ねていた髪を振り乱してハイドに豹変した時、心臓を打ち抜かれたような気分がしました。衝撃的に素敵でした。

日本公演の千秋楽だったので、彼の挨拶がありました。日本語で「ありがとうございました」あとはハングルで。
観客は熱狂的な拍手。何回も投げキッスをするスンウssi。
舞台と観客が一体になった瞬間でした。

「ジギル&ハイド」公式HPは ココ
(舞台のダイジェストを動画で見られます)


2006年3月24日  NHK大阪ホール



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