蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「小倉遊亀展」



小倉遊亀は明確、である。



ほんっとに久しぶりに美術館に行きました。

兵庫県立美術館で開催中の 「小倉遊亀(おぐらゆき)展」



小倉遊亀展




最初に書いたように、彼女の作品はどれも「明確」でした。
日本画のイメージって、どこか儚げだったんですが、違ったんです。
人物画には明確に肉体が存在し、静物画には明確に物体が存在していた。

まさにそんな感覚。

たとえば彼女の代表作の「娘」1951年作
(県美の「小倉遊亀展」のTOPにある作品)

意志の強そうな表情と、机上の花瓶の質感、レースのテーブルクロスの繊細さ、そして彼女の太ももの肉付きの良さ。
どれも明確に彼女が存在していた、いや存在していることを示唆しています。

静物画でも同じこと。

画家の手にかかれば、咲きこぼれる花たちも、しっかりとした存在感を醸し出しています。
花は人間よりも生きる時間が短いけれども、だからといって人よりも弱い存在ではないのです。

生きる時間が短いからこそ、印象に残る。決して毒々しい自己主張はしないけれども、明確に見た者の心に入り込む。そんな風に花々を描いている画家の手に驚嘆しました。

2000年7月に105歳で鬼籍に入った彼女ですが、その年の9月に絶筆である「盛花」が院展に出品されました。
精密さはありませんが、その色づかいは艶めかしく、花弁を開ききり、我が世を謳歌する椿の妖艶さに魅了されました。


いくつになっても、人としてどう生きるかを考えなくては、と思った展覧会でした。




兵庫県立美術館で開催中の「小倉遊亀展」は2010年4月4日(日)まで。


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