アメリカ版ガンコ親父



夫:「なに食べたいか言ってみて」
妻:「うーん、コレといってないな」
夫:「じゃ、なに食べたくないか言ってみて」
妻:「タコベル、CiCi’sピザ、キャプテンD’s、
   えーとそれからRyan’sでしょ、後は~」
夫:「・・・・・わかったよ、もういいよ」

ちなみに、私の食べたくないものはすべて
夫の大大大好物である。

ガックリ落とした肩に、哀愁を漂わせる背中。
30を過ぎたいい大人の男を、こんなにも
うなだれさせてしまうのか、飯というものは。

とにかく、うちの夫ときたらいつも同じものを
食べていれば幸せという「味貧乏」な男なのだ。

ところで、
私の父というのは、食べものにはまるっきし
融通の利かない人で、ご飯にみそ汁と漬物、
そして魚という実にバラエティに乏しい食生活を
こよなく愛するガンコ一徹男だ。

だから、
私の母はカレーやハンバーグやスパゲティを
子供達用に作りながらも、必ずみそ汁を作り、
魚を焼くまたは煮るというご飯の支度をしてきた。

まったく、2度手間というヤツである。

そのおかげで、
カレーに冷奴、スパゲティにたくあんなどという
微妙な組み合わせの晩ご飯を食べながらも
子供心に、「食べものにうるさい父のような
メンドクサイ男とは結婚するまい」と誓っていた。

ところが、現実はどうだ。
好きで一緒になった男というのは、アメリカ版
「うちの親父」と言えるほど、偏食大王だった。

タコス、ピザ、ステーキ、ハンバーガー、ポテト。
それだけを食べていれば、ご機嫌なのである。

日本で、バブル景気のいい時に大学生だった
私としては、こっちで新しいレストランができたよ、
あっちで人気のレストランよ、と聞けばすぐにでも
おいしい味巡りにチャレンジしたくなるというのが
性ではないか。

しかし、
アメリカのレストランほど、この「グルメど根性」を
見事台無しにさせてくれるものはないので、私の
この「グルメど根性」はとっくの昔に枯れている。

アメリカ生活、7年。いいのか悪いのかは不明。




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