最後の言葉



目を閉じて。

そこは、

すべての体温が奪われてしまうほどの

闇の中。

そこに、ゆれながら、

青白い炎が灯ったロウソクがたった1本しかありません。

凍ったような空気に負けそうな、その炎は

この瞬間、たったひとつの暖かさ。

それは、産まれたばかりの子供のように。

それは、初めて目にしたあの人の死の前ように。

その体温を

ただただ、あなたは愛(いと)おしく感じています。

あ。

ロウソクがどんどん、溶け出して

あっというまに、水たまりのように

薄くなってしまいました。

ロウソクの芯に、か細いく揺れる炎を見てあなたも

寂しくなってきてしまいました。

白状します。

実は、この「炎」は、あなたの「言葉の炎」です。

あと一言。

たった一言。

あなたの、この舌を。

唇を。

一言、動かしてしまったら消えてしまいます。

だけど、焦らないで。

でも、急いで。

ただ、このまま。

じっと見ていたとしても

凍るような風に揺さぶられ始めた

炎は、放っておいても消えてしまうでしょう。

さあ、最後です。

■ あなたは、だれに何と伝えますか?


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