Welcome to My Novel Jewel Box

Welcome to My Novel Jewel Box

PR

Profile

jewel55pixiv

jewel55pixiv

Calendar

Archives

September , 2024
August , 2024
July , 2024
June , 2024
May , 2024

Comments

通りすがり@ Re:ブラック・ジャックの優しさ 2005.11.9(11/09) ホットドックを少女におごる場面は最高^_^
王島将春@ Re:ロマノフ王朝の最後 2005.12.2(12/02) はじめまして。福井市在住の王島将春(お…
与太話@ Re:過去と未来で接触し合った飛行機 2009.10.23(10/23) チェロキー(PA-28)は1960年初飛行ですの…
matt@ mzcIVVxHQHOgPzB C2Oocf http://www.FyLitCl7Pf7kjQdDUOLQO…
matt@ LWXUkqTOhhIFxyqleuS t48pUe http://www.FyLitCl7Pf7kjQdDUOLQO…

Favorite Blog

パンドラの小箱-Pand… mariko95さん
AGNUS DEI 結城… yasuha☆さん
悠々楽々 peony60さん
Sakura's Diary sakura1259さん
Sweet Kids' Club englishpalclubさん

Keyword Search

▼キーワード検索

Shopping List

お買いものレビューがまだ書かれていません。
January 19, 2006
XML
私は、単に 「ウィノーナ・ライダーが好きだから」 と買い求めた映画 『エイジ・オブ・イノセンス』 を、たまたま11歳の息子と観ることになってしまったのだが、このことで、 「人を恋慕う心」が自然と子供の心に滲みこんでいくのではないか ―と思った。

 この映画は恋愛ものだが、品の良い恋愛映画なので、親のアドバイスがあれば、子供には悪くはない、良質な映画だったからだ。

 例えば ニューランドがエレン(ファイファー)を口説いている場面

 「あなたと会いたい......」
 「だめよ......でも......」
 「一度だけならいいでしょう―明日。明日お会いしましょう。劇場前で」 「......明後日にします」などと、恋する男女の会話が続く。

 私は、 「ウィノーナが可哀想じゃない。婚約したくせに、他の女性と?しかも人妻だぞ」 と怒りのこぶしを握り締めて観ていた。すると、また息子が、今度は完全に身を乗り出して観ている。

 「何でこの人、この女の人も好きなの?」と私に訊く。

 「え~と......うん、婚約者がいるけれど、あの黒髪の綺麗な若い人ね。でも、この男の人はさ、こっちの女の人の方が好きなんだよね。どっちも好きなんだけど、こっちの方がずっと好きなのね。この女の人は、もう結婚しているのに。 こういうのって、いけないんだよぉ

 ニューランドは、メイ(ウィノーナ)とエレンが従姉妹どうしであるので、 自分がエレンに迫ると、エレンはニューヨークの社交界でも格式高い彼女の一族の名を汚すことになる ―と、理性で恋慕の情を押さえ込む。そうしてメイと、約束通り結婚する。

 彼は、弁護士という職業柄、エレンの祖母からも頼まれて、 「上流階級の女性が離婚するのは、あとあと醜聞となる」 と思う。そしてエレンに会って、 「あなたはヨーロッパにいるご主人と離婚するべきではありません」 と説得する。 「裁判での離婚は、苦しいものです。ヨーロッパにお帰りになって、ご主人と暮らした方がいい。ご主人もあなたとの復縁を望んでおられます」 と強調する。

 エレンはすすり泣きながら、 「私にとって、今の結婚を続けることは、死に等しいのよ......それでもあなたがそう言われるのなら―分かりました。離婚はしません」 と言う。それを見たニューランドは、気持ちがまたぐらついてしまう。 (こらっ馬鹿者!)

 「私とどこかに逃げましょう―二人だけで」
 「......そして駆け落ちする?だめよ」
 「離婚して下さい!」
 「『離婚するな』とおっしゃったのは、あなたじゃないの!」

「こりゃ男の方がグラグラしてるじゃないか」 と思いながら、私がじいーっと映画にかぶりついていると、いつの間にか、息子もかぶりついている。

 「これ、喧嘩してるの?」
 「いやあ、喧嘩じゃないよ。お互い好きだって言っているの」

 「ああ、『結婚して下さい!』って書いてある、ホント」
 「あー......いや、『離婚して』って言ってるのよ」
 「『リコン』って何のこと?」
 「ええっと......結婚することの逆!逆!別れちゃうってこと」

 「ふ~ん。でもこの女の人は旦那さんがいるんでしょ?」
 「そっそう(汗)...... でもこの男の人は、その旦那さんと別れて下さいって、今、この奥さんにお願いしているわけなのね~ (汗) この男の人、いっけない人よね~ あんなにキレイな人と結婚したのに......」

 私の説明に、息子も「うん」とうなずいている。私は、わが子の、予想外の関心の高さにやや焦りながら、それでも映画を観ていた。

 ニューランドは、愛らしく美しい妻メイと暮らしながら、いつもいつもエレンのことばかり考えている。新婚旅行でロンドンやパリに行っても、エレンのことばかり。

「私は、『結婚』という牢獄につながれてしまった......」

 こう考えるニューランド。美しく微笑みかける若妻メイ。メイが居間で、彼と二人で過ごす時。メイは 「家庭の幸福と安定」の完全な象徴 に見える。無心に刺繍をするメイをじっと見つめながら、ニューランドは怖ろしいことを考える。

「もしも妻が死んだら―?若く、健康でも、早く死ぬということはある......そうしたら、私は完全に自由の身だ......」

 そんな夫の心中も知らないかのように、にっこりと微笑むメイ。自由になりたいという気持ちは、ニューランドを旅へと駆り立てる。彼は、日本の浮世絵画集を眺めては、旅への夢を膨らませている。

 「何をご覧になっているの、あなた」
 「日本についての本だよ......未知の国だ。まったくの別世界さ」

 「日本?ずいぶん遠い国ね」
 「そう、遠く未知の国だ―メイ、私はしばらく旅に出ようと思う」    「旅に?どちらにいらっしゃるの?」
 「そう―どこでもいい。日本、インド、中国......」

 すると、メイは不安と喜びを綯(な)い交ぜにしながら、立ち上がる。

 「その旅行には......私もご一緒でなければならないわ......いいえ、私は旅行にはいけないわ......」そう言いながら、彼女は夫の膝に頬をすり寄せる。「今日、お医者様に行ったの。それで分かったのよ......」

 そうして、 ニューランドは子供ができたことを知る 。その時の彼の顔は、喜びでも何でもなかった。むしろ絶望的な表情を浮かべる。エレンとはもう二度と会えない。会ってはならない、と思ったからだった。

 この場面になってくると、もう息子はゲームをすっかり止めて、私と膝を並べて映画に見入っている。

「それからの私の人生にはいろいろなことが起こった......体の弱い長男は教会に行けず、書斎で洗礼を受けた...私と妻とが子供たちのことについて語り合ったのも、この書斎だ...長女メアリーが嫁ぐ朝、花嫁の父として娘にキスをしたのも、この書斎だった......」

 妻のメイは、3人の子供に恵まれるが、子供の一人が肺炎になり、看病をしている間に感染し、40歳ほどで亡くなる。映画の画面には、立派な書斎の机の上に、所狭しと並べられた、メイの若い頃からの写真が飾られている場面が映る。

メイは家庭の幸福を噛み締めながら、この世を去った......

「エレンとの想い出も薄れて行き......まるで幻のようになり...エレンのことを噂に聞いても、ただ亡くなった人を思い出すかのようになっていった―エレンは、私の心の中で、もはや死んだ人となった」

 このニューランドの独白の字幕も、息子はしっかと見ていた。それで、私にこう尋ねた。

 「『死んだ人』だって。あの女の人、死んだの?」
 「いや、生きているんだけれど、もう完全に会わなくなったから、まるで死んだ人のように思えるって意味なのよ」
 「ああ、なるほど」

 やがて、 長男は20代の青年となり、ヨーロッパで建築家として活躍する ようになる。その頃、父親のニューランドは57歳になっている。西暦1890年代の頃らしい。もう欧米では電話が普及している。妻も亡くなり、年を取り、エレンとの昔の逢瀬をぼんやり考えているところへ、ヨーロッパにいる息子から電話がかかる。自分の新しい仕事を見てくれと言うのだった。

 ヨーロッパに行くと、息子は社交界でのエレンの話をする。父の昔の浮気相手とも知らず、息子はエレンの住む邸宅前まで案内する。

 「僕も会ったけれど、エレガントな貴婦人だよ。パパも会ってみる?」  「いや、止めとこう」
 「なぜ?そこのすぐ3階に住んでいるのに。階段上がればすぐだよ。エレベーターもあるのにさ。どうしても会わない?じゃあ、僕は何て言い訳すればいいんだい?」

 ニューランドは、エレンに会いたい気持ちを抑えながら、息子に意味ありげに笑って見せる。「言い訳ぐらい、自分で考えろ」

 「『父は、エレベーターが嫌いな古い人間ですから』とでも?」     「......『古い人間ですから』だけでいい」

 長男は、エレンに父親の言付を伝えに行く。ニューランドは、エレンのいるという3階の開き窓をじっと見つめる。 今にもエレンがあの窓に現れるのではないか...... そういう期待をこめながら。けれども、やがて、その窓は、召使によって、静かに閉められてしまう。彼は邸に背を向け、杖をつきながら、木枯らしの舞うヨーロッパの街を一人去っていく......

 こういうラストシーンだった。私は、 「許されない恋―禁じられた恋」に胸を焦がすニューランドの心 にジーンと感動した。 「愛しているのに一緒になれない......」 ということほど、人を悩ませ悲しませることはないのだ、と思うと、人間の心はか弱く、痛いほど切ないものだと改めて感じ入った。

 11歳の我が息子も、黙ってラストシーンまで観ていた。まだ幼い彼の心には、こういう映画はどう映っただろうか。最初は、 「関心ない」と言っていたし、私も「そうね~お子様はゲームのお時間よぉ」なんてふざけていた のだった。けれども、いつの間にか、一緒に『エイジ・オブ・イノセンス』を最後まで観ていた。

 私は、 「11歳にはまだ、こういうのは早すぎるんじゃないかな」 と思ったが、11歳なりに、何か感じ取ったことはあるに違いない。学校で、ただ「男女の体の違い」を詳細に教える「性教育」は、どこか即物的で、味気ない。

 11歳には、恋愛映画は早いかも知れないが、6歳から「性教育」を教え込むよりは、13歳くらいになってから、こういう映画を観る方がよっぽど良いのではないだろうか。 「人を恋し、愛慕う心」―人の心の機微や情緒を育む ことを大事にした方が、人間らしく成長するのではないだろうか。そんなことをも考えさせる映画が、『エイジ・オブ・イノセンス』なのだった。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  January 31, 2006 11:55:49 PM
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: