旅蛙のメモリー

旅蛙のメモリー

PR

Profile

junbogart

junbogart

Keyword Search

▼キーワード検索

Calendar

Favorite Blog

富岳風穴  ('24 盛… New! ジゼル1043さん

チップを新たに鼻根… New! 保険の異端児・オサメさん

なりゆき散策日記 みみ☆19さん
ハープエンターテイ… 47弦の詩人さん
りえばぁのきときと… リエさん0037さん

Comments

@ Re[1]:茨城・鉾田一 悪夢の9回、戸田投手の思い出(02/14) てつやさんへ メッセージありがとうござい…
@ Re[1]:防府商-鹿児島実(56回夏準決勝) の思い出(12/05) papayoyoさんへ こちらこそありがとうござ…
国民洗脳から目を覚ませ!@ Re:ワイオミング州・グランド・ティートン(1) シェーンの景色を求めて(02/11) 馬鹿メディアである、テレビ、新聞、週刊…
てつや@ Re:茨城・鉾田一 悪夢の9回、戸田投手の思い出(02/14) 懐かしい記憶が甦りました ツーアウトから…
2008.10.12
XML
カテゴリ: 茶の湯に学ぶ

「月に雁(かり)」という安藤広重が描いた絵がある。切手収集家にとっては、切手趣味週間の切手として、「見返り美人(菱川師宣画)」と共に、その名は良く知られている(右)。小中学生の頃、切手収集を趣味としていた私にとっても、当時より、この2枚の切手は手の届きようのない垂涎の的であった。

"後の月"と呼ばれる十三夜にあたった11日、茶の湯教室での観月茶会が行われた。いつものように発見や学ばされることの多い茶会であったが、「月に雁」もその一つである。

私にとっては、京都大覚寺( こちら )での中秋の名月(十五夜)に続く、晩秋の十三夜の月を愛でる茶会。夕刻、一瞬、黒い雲が通り過ぎで雨が落ちることもあったが、陽が落ちて、茶会が始まるころには、薄雲の切れ間から月が顔を出し始めた。いろいろ調べると、「十五夜をしたなら、必ず十三夜もしなければいけない」という言伝えもあるようで、今年、両方の月を拝むことが出来た私は幸運と言ってもいいだろう。

十三夜の月

さて、この日の茶席で用いられていた棗、その蓋に描かれた鳥、それは二季鳥(にきどり)と言われるものであった。初めて聞く言葉であったが、その意味するところは、秋から冬(つまり二つの季節)にかけて北方から渡ってきて、春の訪れと共に帰り去っていく鳥のことであり、それが雁の異称であるという。

まさに、この季節に相応しい題材であるが、この日は十三夜の月が輝いている。亭主から、棗の説明の後で「月に雁」の言葉が出たのであるが、これはこの茶会の一つの演出であったことに気付く。(実はその場で解釈出来なかったのだが、帰ってから復習しているうち、そうだと確信する。)

それは、既に席入りの時に始まっていたのである。まず、待合で白湯を頂いた後、露地草履に履き替え、腰掛待合へ移動して待つ。暗い露地(茶庭)には、行灯が風情を醸し出しており、見上げれば十三夜の月が空高く輝いているが、庭を照らし出すほどではない。

やがて、手燭(てしょく)と呼ばれる灯りを手にした亭主(師匠である)自ら現れ、いよいよ席入りとなる。亭主を先頭に、正客、次客と順番に連なって、露地の中を進んでいく。露地は低い塀で、外露地と内露地とに分けられていて、そこに設けられている中潜(なかくぐり)と呼ばれる中門を通り抜けると、本席のある内露地へと至るのである。

月明かりの露地は、足元がおぼつかない。しかも苔の絨毯となっているので、飛石を踏み外さないように、手燭の灯りに導かれ、前の人との距離を空けないように連なって進む。これこそが、雁行(がんこう)と呼ばれるのである。それは、まさに「月に雁」を体現したと言ってもよかろう。

茶室内は、短檠(たんけい:席中を照らす灯具)と蝋燭の灯り(手燭、膳燭)、つまり火の灯りだけに照らされ、幽玄そのものである。そして、掛け軸には月の文字。それは、棗に描かれた二季鳥が月灯りの下、雁行する光景を演出しているようにも思えるのであった。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2008.10.14 21:10:36
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: