"菜翁が旨"さんのほほ~ぇむ健康ペ~ジ

いたちといたちごっこ

【プロローグ】

いたちとたちごっこをしている。

きょねんの暮れから、うちのキッチンが荒らされるようになった。

冬場なので、傷む恐れが無いので、テーブルの上にラップして、朝、食べよう、と、食卓の上に置いていた器のラップが破られて、食べ物がテーブルの上に散らかされいる。

きれいに片付けて、やっと朝の食事が終わって、ふと時計を見ると昼前になってしまっていた。

きょうは、ダイエット、朝昼兼用の朝食と言うことになってしまった。

朝から、テンウヤワンヤの大騒ぎであった。

おなかが膨らんで、落ち着いたところで、冷静になって考えてみた。

ねずみにしては、荒し方がひどい。

近郊には、ヌートリアと称する小動物が徘徊している。

戦後まもないころにに毛皮を剥ぐために輸入されたものが、捨てられたのか逃げ出したのかは知らないが、その小動物がいまでも徘徊して田畑を荒している。

ヌートリアというのは、のっそのっそと黒豆の畑の豆の木の中へ隠れこむのを観たことが有るが、いたちより大きく、犬・きつね・たぬきなどよりは小さく、灰色の毛皮をしている。

夜中に、台所で動物が徘徊している音がするので、懐中電灯を灯けて、そーっと近づいていった。

すると、ずぼっ、という音がして、ガスレンジの上から換気扇の羽根のあいだを一瞬の間に抜けて飛び出したものがいた。

素早い俊敏な動きだった。

わが家の換気扇は、古くて壁付きで外側にシャッターが付いている大きめのタイプだ。

換気扇が止まっている時にシャッターに触れてみたが、かなりの力が要る。

シャッターは、換気扇のスイッチを入れると同時に開く。

到底ネズミの力では閉じているシャッターのあいだをすりぬけることなど、無理だと思った。

こんな大きな動物が家の中まで入り込んだのだろうか、と、気味がわるくなって、対策を講じることにした。

早速、ホームセンターで六角形の穴の定番の金網を買ってきてシャッターを外側から覆った。

勿論、念のために、食べ物は、食器棚の中にしまい込んだ。

これで一安心、と、その夜は、ぐっすりと眠れた。

※   ※   ※

翌朝、台所の床が昨夜の食べ物がちらかって汚れている。

食器棚を見ると、数センチほど、開けられて、器のなかの食べ物が荒されていた。

※   ※   ※   ※   ※   ※

【コンクラーベ】(ローマ法王を選出する投票)ならぬ、「根くらーべ」の始まり。

食器棚はガラスの戸に引き手が付いている。
その引き手が4,5センチほど開けていた。
まさか、と思う行為である。
早速、ホームセンターで工作用木材を買ってきて加工して引き手となる部分だけを削って接着剤でくっつけた。
これで、引っかかるところが無くなったようなものなので、動物の手足で引き手でガラス戸を開けるのは難しいと思われる。

※   ※   ※

夜半に、天井裏をドタドタと台所の方角へ向かって嬉しげに(?)駆ける物音がした。

さては、いたち、と、しかし、食器棚の食べ物は、今夜は安心だ。

と、そのまま寝入って朝を迎えた。

※   ※   ※

食器棚の食品は、安全だった。

これで安心、と胸をなでおろした。

が、ガラス戸が少し堅かったので、良く見ると、取り付けた木材が敷居に擦れていた。

早速、肥後守で削って軽くした。

※   ※   ※

すっかり安心しきってぐっすり寝た翌朝・・・

また、食器棚のガラス戸が開いて食べ物が荒されていた。

使った木材に爪の先を引っ掻くように突き差して、軽くなったガラス戸を引き開けていた。

せっかくのアイデイアと苦労は水泡に帰した。

いたちの智慧がたいぞ~さんより勝っていた。

※   ※   ※
今更、これで諦める分けにはいかない。

いたちごっこは、まだまだ終わらないぞ。

いたちと、楽しい(?)根くらーべがはじまるぞ。

コンクラーベ。

【リフォーム?】

いつまでも、食器棚にこだわってられない。

なんせ、わが家は典型的な「田の字」型の家である。
その上、台所は、玄関からの続きの土間であった。
それを改造して床を張ったつくりである。
だから、今でも、台所の隅には昔のかまどを残している。
刃釜を載せて薪でご飯を炊く、かまどである。

そんな古民家といえば聞こえがよいが、そんな立派なものではない。
だから、今では柱が傾斜して部屋の仕切りの戸との間の上のほうには1センチほどの隙間がある。

そこをすり抜けて台所の方えと伝っていっているようだ。
屋外から入るところはいくらでもあるので、手の打ちようが無い。

ホームセンターで細長い木材を10数本買ってきて、戸の上下の溝にはめ込めるくらいの長さに切って、ドリルで両端、真ん中、そしてそれらの中間、合わせて5箇所に釘の穴を開けて、240番のペーパーで磨く。

ペーパーは40番から2000番まで持っている。
1000番はともかく2000番のペーパーは市販されていない。
が、それを持っている。
ガラスのレンズを磨けるくらいである。

ペーパーで磨いた木を柱に釘で打ちつけて、数日かけて完成。
これでいたちの通り道になっていたであろう柱と戸の隙間は防げた。

食器棚のガラスの戸が開いてれば出てらっしゃった、閉まったままならお休みだった、と判定。

明日の朝が楽しみだ。

ビール一本賭けよう。
これでも出ていれば、お預けだ。

※   ※   ※

よく考えてみれば、柱の補強が出来たようである。
いたち様々として、どちらになっても、ビールは頂くことにしよう。

かんぱぁ~い。

※   ※   ※   ※   ※   ※

【もぐらたたき】

いよいよ、もぐらたたきの様相を呈してきた。

天井のこんな細い隙間をも通り抜けしていることが分かった。
いたちの天井通り抜け

そこでこれを一つ一つ塞ぐことにした。

とりあえず、一箇所塞いでみたところ、また別の隙間を通り抜けしていることが分かったので、もう一箇所も塞いだ。

木材の板はホームセンターの木材コーナーの端材置き場のなかから手ごろな端材を見つけた。

一枚10円の「掘り出し物」だった。

反物の「はぎれ」が売られているように、木材も「端材」が売られているのだ。

もぐらたたきをする天井

残りの箇所は、とりあえず包装用のテープを貼り付けて通り抜けて剥がされるかどうかを楽しむことにした。

天井はまるで、もぐらたたきのようになってきた。

※   ※   ※

台所の換気扇に取り付けた防護網。

換気扇のいたち防護網

最初に緑色の網を取り付けたが、網の目を広げて簡単にすり抜けされたしまった。

手近に雨ざらしになって錆びていたよりメッシュの細かい網を取り付けた。

破ろうとしたのか、爪で引っかかれて引き剥がされた錆が地上に散乱していた。

これで、この換気扇は完全に通り抜けできなくなった。

ガラス戸と柱の隙間は…
いたち防護柱

このように細長い木材で柱と戸の隙間を埋めた。
電気コードは木材の上部に切り込みを入れて通過させた。
これを10箇所と少し、取りつけた。


これで、柱と戸の隙間も通り抜け出来なくなった。

お蔭で、隙間風も通りにくくなって、暖房効果が上がる、という

大きな「いたち効果」もあった。

これは「いたち様様」だ。

いままでの無銭飲食は許してやろう、という心根も多少は出来た。

※   ※   ※

さて、明日の朝は、天井に貼り付けたどのテープが破られているかな?

こんどは、もぐらたたき…か。

寒い日々をいたちごっこで楽しんでいる。

【エピローグ】

意外であっけない顛末だった。

人間の目線で考えていたことが、大きな間違いだった。

相手は警戒心の強い野生の動物、ということに気付いていなかったのだ。

わが家には、玄関と台所の間には、大きな隙間がある。

ここは、塞ぎようのない隙間だったので、あきらめて放置していた。

その隙間が残された通路になっているかどうかを確かめるために、その隙間に、野菜の支柱に使っている枯れた竹を隙間を塞ぐでもなく、立てかけていた。

それが倒されておれば、通路になっていることが確認できる。

夜中に、天井を駆ける足音の後に、大きな音がした。

飛び起きて、行ってみると、案の定、例の竹が倒れていた。

そして電気をつけて台所を調べてみたが、侵入はしていなかった。

また、隙間に竹を立てかけて、寝入った。

朝、確かめてみたが、竹は倒されていなかった。

※   ※   ※

翌日のよるも、同じようなことが起こった。

三日目の夜が明けた朝。

竹は倒されていなくて、台所にも侵入の形跡が無かった。

※   ※   ※

考えてみると、いたちには、罠が仕掛けられている、と思えたのであろう。

警戒心の強い野性動物は、自分が捕獲される罠が最大の敵である。

罠をしかけるに越したことがないが、罠と思わせる仕掛けでも良かったのだと、いたちから教えられた。

※   ※   ※

収穫の秋には、見る人をも楽しませてくれるすずめおどしのカカシが黄金色の稲穂のなかに立っているように、楽しいいたちおどしを考えてみようかな、と、必死(?)だった『イタチゴッコ』も心にゆとりが出来た。

ちなみに、ペットの犬や猫を飼っている家には、いたちは寄り付かないようである。




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