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その② ~ぽやぽや病 partⅠ~



手術をしてから、3.4日経った頃から、私は
急に自分の記憶がなくなるようになってきました。
まるでいきなり記憶喪失になったかのように、自分が直前に
何をしていたのか、さっぱりわからないのです。
「あれ?私今なにしてたっけ???」
そう思ったのが気が付くきっかけでした。最初は
単に忘れっぽくなっているんだと思ったのですが、あまりにも
記憶が抜け落ちていく状況に私は徐々に怖くなっていきました。

感覚的にいうと、とてつもなくぽやーっとしている感じ。
なので、私と姉の間で、これを「ぽやぽや病」と名付けることにしました。

「なんでぽやぽやしてるんだっけ?」
「ぽやぽやしてていいんだっけ?」
「私っておかしい?」
毎日そんなことを会う人に繰り返し繰り返し聞いていました。
ゴミ箱が置いてある場所が突然思い出せなくなって、空のペットボトルを
持って病棟を一周したり、同じ内容のメールを何度も送っていたり・・・。
周りはおもしろがりながらも結構心配していました。

このままだと、治療がスムーズに行かなくなる。
日常生活にも支障が出てくる。そう思っていたそうです。

自分のしたこと、言ったことを、分単位にノートに書きとめていかないと、
自分がこの瞬間までしていたこと全てが解らなくなってしまいました。
やらなければいけないことは全て付箋に書いて貼り、
誰かに聞きたい事も、付箋に書いて貼っておきました。そうしないと、
聞こうと思っていたことも、やろうと思っていた事も全て
思い出すことが出来なかったからです。
あっという間に私の周りは付箋だらけになってしまいました。

ちょうどぽやぽやがひどい時に、24時間完全蓄尿をしなければ
ならなかったのですが、すぐに蓄尿のことを忘れてしまうために、
2週間くらいかかってしまったこともありました。
看護婦さんやドクターに「蓄尿してる?」と言われては、
「・・・忘れた。」の繰り返し。それからは病棟中のスタッフ全員私の
顔を見るたびに、「蓄尿!」が合言葉の様になっていました。
最終的には、ベット周り全てに『蓄尿!!』とかいた付箋を貼り、
挙句のはてにはスリッパにもその付箋を貼り、なんとか終了したのでした。

結局のところ、「ぽやぽや病」は、急激に大きなストレスを受けたために
一時的に記憶喪失のような状態になっているのでしょう、という
ことだったようです。

今の私には、この期間の記憶がほとんどありません。
ノートに書き記してあることと、わずかな記憶しか覚えていないのです。
退院後、家族や友人からこの時の話をされても、ぽっかりと
穴が開いたかのように、何も覚えていません。
病理検査の結果も、ちょうどこの時期に出ていました。

病理検査の結果、私の腫瘍が良性ではなかったことがわかりました。


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