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その⑥ ~副作用 脱毛PartⅠ~


私の場合、それがこの「脱毛」でした。

ドラマでは見たことがあったけど、本当に
髪が抜けるんです。おもしろいくらいに。

まず始めに、頭皮がぴりぴりと痛くなってきました。
1クール目が終わった位のことだったと思います。
そして、だんだんと髪の毛が抜けやすくなってきました。
それでも最初のうちは、それほどたくさん抜けていくというわけでは
なかったので、「ん?なんだ、抜けないじゃん。」とタカを
くくっていました。

ある日、シャワーを浴びにいって、髪を洗ったとき。
それは私にとって突然の出来事でした。
「ごそっ」と、本当にそんな音が聞こえてきそうな程、
大量の髪の毛が抜け落ちました。
「・・・???」手のひらに絡まっている大量の髪の毛を見て、
私はしばらくぼーぜんとしていました。
何が起こったんだろう。そう思って、手についている髪の毛を
洗い流し、もう一度髪の毛をひっぱってみました。
「ごそっ」
手のひらには、さっき以上の大量の髪の毛。

これはショックでした。

病室に戻る途中、病院職員のおばちゃんに
「どうしたの?具合悪い?」
と聞かれ、我慢できずに大声を上げて泣きました。
「髪の毛が・・・。たくさん抜けちゃったよ・・・。」
病室に戻ってからも、しばらくは泣きっぱなしでした。
そんな私を一生懸命励ましてくれたのは、同じ病室にいる
方々でした。
私のいた病室は、抗ガン剤治療を行っている患者さんばかりで
私も含め長期の入院の方がほとんどでした。みんな私と同じように
副作用で髪の毛は抜けていて、頭にバンダナをまいていました。

私が泣きながら病室に帰ってきたのを見て、みんな揃って
バンダナをとり、
「ほら、私たちも髪の毛がないのよ。でもちゃんと生えてくるから!」
と励ましてくれました。脱毛の副作用がある抗ガン剤を使用している人に
とっては、誰もが通る道。みんなそれぞれに辛い思いをしているけれど、
だからこそ元気がない人を見ると励ましてくれる。
この時期の私にとっては、同じ辛さを経験している彼女たちの励ましが
一番心に響きました。

それからしばらく、私の精神状態はぼろぼろでした。
ぽやぽや病も重なっていたので、その時のことは断片的にしか
覚えていませんが、家族や友人の前では
「やばいよー。はげちゃったよー。」と明るく振る舞いながら、
朝主治医が回診にきて「調子、どう?」と聞くたびに、
すごく不機嫌に「調子はいい。でも髪が抜ける。」と繰り返していました。
ぶつけようがない怒りをおさえられずに、わざわざゴミ箱の中に
たまった髪の毛を見せて、「ほら、今日はこんだけ抜けちゃったよ。」
と、毒づいたこともありました。
でも、私以上に私の髪の毛が抜けることを気に病んでくれていた
のも、主治医のドクターでした。「大丈夫。生えてくるよ!」と
気休めの励ましをいうでもなく、
「そっか・・・。また抜けちゃったか・・・。」
そういって肩を落とし、自分のことのように悩んでくれました。
「あ、ごめん。そんなに気にしなくていいって。しょうがないし・・・ねぇ。」
別に誰が悪いわけでもない。だからこそ、辛かったんです。

髪は頭のてっぺんから抜け始め、だんだんとその範囲は広がっていきました。
毎日鏡を見るたびに、自分が別人になっていきます。帽子を被らなければ
ならなくなっていきました。

この時期のお見舞い品は、全て帽子。友人達はかっこいい帽子を
次々と見つけだしては持ってきてくれました。その時期の私に出来る
唯一のおしゃれ、それが帽子でした。中には、早く渡したいからと
わざわざ郵送してくれた友人もいました。
この時にみんなにもらったたくさんの帽子コレクションは
かけがえのない私の宝物です。

周りのみんなのそういった気遣いや励ましの甲斐あって、私も日に日に
髪の毛が抜けていくことに対して、「ま、しょうがないか」と思うように
なっていきました。正確に言うと、そう思わなければ自分の中で何かが
壊れてしまいそうで、無理矢理そう思っていました。

そしてとうとう、ある外泊の日、私は家で丸坊主にしてもらいました。



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