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その⑦ ~副作用 脱毛PartⅡ~


女性にとって、というか、私にとっては
非常にショッキングなことでした。

未だに思います。
ありえないじゃん、って。
抗ガン剤の治療をしている最中、会う人会う人に
「大丈夫。また生えてくるよ!」って言われました。
家族や友人が励ましてくれているのはすごく嬉しかった。
でも、そういってくれているみんなには髪の毛がある。
私には髪の毛がない。正直なところ、そういう風に
変に卑屈になっていました。

私は髪が抜けきる前に髪を剃りました。
「そこまですることないんじゃないの?」
「本当に今剃っちゃうの?これで髪が抜けるの、止まるかもしれないよ?」
そんなことを言われたこともありました。でも、私は早く坊主に
なってしまいたかった。長い髪が抜け落ちていくことに、耐えられなく
なっていたんです。

でも、ひとつだけ気になっていたこと。それは
つき合っている彼のことでした。

彼には、病気のことは全て話していました。週末になると、
毎週のようにお見舞いに来てくれました。病気をしてもしなくても、
別に何も変わりはないから、そういってくれていました。
髪の毛が抜け始めたこと、それがとてもショックだったこと、全て
伝えてありました。でも、薄くなった髪の毛を見せることは出来ずに
いました。
「髪、剃っちゃおうかと思って。」
悩んでいてもしょうがない。受け入れてもらえなくてもしょうがない。
ある日、思い切って私はそう切り出しました。
「やけくそになってない?」
彼はそういいました。違うよ、と答えると、「だったらいい。」そういって
賛成してくれました。

坊主になった彼女なんて、いらないんじゃないか、周りに髪の毛が
さらさらの可愛い子なんていくらでもいる。大きい病気を抱えている
私と付き合うことが重荷になるのであれば、私から離れていって欲しい。
そう思ったこともありましたが、彼はいつもと変わらず私と接し続けて
くれました。

ちなみに、抜けるのは髪の毛だけではありませんでした。
体中のむだ毛はほとんど抜け、生えてこなくなりました。
私は眉毛・まつげは残りましたが、薬によっては眉毛やまつげも
抜けてしまうそうです。
さらに、爪も伸びなくなり、耳垢も出なくなりました。
体中の何かを成長させる細胞すべてが、ストップしてしまいました。
抗ガン剤の投与が終わって、薬が抜ければ、それらもすべて
生えてきます。腹立たしいことに、髪の毛よりもむだ毛のほうが
早く生え始めてきました。。。

髪の毛がなくなるか、命がなくなるかって言われたら、
当たり前だけど、命を取ります。そんなことはわかっていても
鏡を見るたびに、鏡をたたき壊したくなりました。
丸坊主になった時点で、すっきりしたと思っていたのに、一度ついた
心の傷はなかなか治らず、ふとした瞬間に気分が落ち込みます。
それは、少し髪の伸びた今でも変わりません。TVでシャンプーや
ヘアワックスのCMが流れ、さらさらの髪をしている芸能人を
見る度に、外に出て歳の近い女の子を見る度に、私は自分の容姿と
比べてしまいます。

髪の毛を剃ったことで、良かったこともありました。
まずは、シャワーの時間が驚くほど短縮できたこと。
シャンプーをする度に大量に抜けていく髪の毛と格闘を続ける手間が
なくなりました。抗ガン剤を投与している時は、ただでさえ体力が
落ちます。そんなときに、長時間のシャワーは体への負担も大きかったんです。
時には、看護士さんやお見舞いに来てくれた家族に髪を洗ってもらわなければ
ならなかったので、これは助かりました。

毎日毎日髪を洗う前の自分と、髪を洗った後の自分のギャップに
苦しむこともなくなりました。

そして、掃除が楽になったこと。髪の毛が抜けだしてから、必需品は
ガムテープでした。枕、ベット周り、洋服、帽子・・・。あらゆる所に
大量の髪の毛がくっついて、それをいちいちガムテープで掃除しなければ
なりませんでした。朝起きたらペタペタ。帽子を取り替えたらペタペタ。
もともと、自分の周りを片づけたり綺麗にしておくことが苦手な私に
とっては、非常におっくうなことだったので、これも助かりました。

丸坊主にしてから、私は病院内で帽子を被ることを辞めました。
単純に被っているのがめんどくさくなったから、抜けている最中
よりも、人に見せられる姿になったから、坊主の自分にはやく慣れたかった
から、と理由はいろいろです。

でも、一番の理由は、開き直りでした。

別に坊主なんてたいしたことじゃない。悪いことをしてるわけでも
ないんだから隠すこともない。変だなって思う人にはそう思わせておけばいい。
私は自分の意志で髪を剃ることを決めたんだから、その結果に
堂々としておきたい。そう思っていました。

病棟内には、抗ガン剤で髪の抜けた患者さんがたくさんいました。
でも、坊主になったそのままの姿でいたのは、私だけでした。
それぞれの人には、それぞれの考えがあって、帽子を被ったり
バンダナを巻いたりしていました。例えば、そういう姿を見せて
人に気を使わせたくないと思っていたり。私もよく両親に怒られました。
「あんたはいいかもしれないけど・・・」けど、何?私だってなりたくて
なってるわけじゃない。他人に気を使うほど、私には余裕がありませんでした。

私は、自分の我が儘に周りを巻き込んでいたのかもしれないけれど、
ありがたいことに、病棟の方や、私の周りの人々は、それを受け入れて
くれました。
「こんなこと言っていいのかわかんないけど、似合うね!」
「帽子かぶってるよりいいじゃん!」
友人達はそういってくれました。
本当は、ショックだったかもしれません。見たくなかったかも
しれません。気を使っていたのかもしれません。それは、私には
わからないことだけど、少なくとも私にとっては、
「また生えるよ!」という言葉より何倍も嬉しい励ましでした。

抗ガン剤の中には、脱毛の副作用がない種類の物もあります。
病室のみんなや、ドクター達と、もっと医学が進歩して、
抗ガン剤の全てからこの副作用がなくなるといいね、とよく話していました。




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