2004年01月04日
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久しぶりに一本書きたくなったので、大人向けの物語を。
似たようなお話はあちこちにあると思いますが、一応創作です。
推敲もなんもしてない一発書きです(笑)ので、タグも省略。
ご感想ございましたら、私書箱までどうぞ。(2004/01/24 7時頃)


あるところに、とても仕合せで平和な国がありました。
住民達はみなおおむね仕合せで、目立ったいさかいもなく、
時々ちょっとした問題は持ち上がりましたが、
始終戦いに明け暮れる国よりはずっと平和といえる国です。
住民も時々は不平や不満もいいますが、国中が大きく揺れるような問題はなく、
旅人が住民達にこの国の評判を聞くと、だいたい「満足している」ような国でした。

この国には王さまがいました。
国も平和だし、隣国とのたいしたいさかいもなく、
国民殆どの人から、「王さまはとってもいい人だよ」「すばらしい王さまだよ」という
答が返ってくるのですから、きっとすばらしい王さまなのでしょう。

しかし、こんな王さまにも、ひとつだけ悩みがありました。

「退屈」

なのです。

この王さまは、何もない島をひとりでずっとがんばって今の国にしました。
勿論いろんな人に手伝ってもらいましたし、
今でも彼等の多くは自分のために頑張って働いてくれています。
だからともいえますが、もう大抵のことは自分が何もしなくてもうまくまわります。

もともと確かにそのために今までがんばってきたのですが、
いざそうなってみると、王さまは退屈で仕方がなくなりました。

『はじめの頃はよかったな』

時々そんな物思いに耽ります。
忙しかったけど、自分が何かしている気になったものでした。
確かに今でも王さまの評判は悪くはないのですが、
昔はじかに王さまにいろいろ言ってくる人もいて、
時々はきついことも言われましたが、
それをバネにしてもっとよくしようとがんばったこともありました。

今ではそんなこともめったにありません。
王さまへの陳情はちゃんと専任の人達が対応していますから、

「王さまが見るべきものはちゃんとお渡しします。
 王さまはもっと大事なことをお考えになってください」

自分のために頑張ってくれているもの達にそう言われてしまうと、
王さまとしても余計な口出しはするまいと思うのです。

確かに考えることは沢山あります。王さまだって結構忙しいのです。
だけど....

とても気持ちのいいある晴れた日のこと。

王さまはお付きのものを下がらせると、
バルコニーに出て日光浴をすることにしました。
いつも演説や集会をする、みんなから見える高台のバルコニーです。

そこに、そう、はだかで。


....翌日のお城は大変な騒ぎでした。

おつきの人達は王さまがどうしてそんなことをしたのか解らずに、
王さま宛の問い合わせの対応に大童です。

お付き「王さま、昨日はどうしてあんなことを?今日は国民の問い合わせでてんてこまいです」

王さまはにっこりして言いました。

王さま「昨日の私のことを言ってきたものは、全部自分の所にまわすように。
 私の裸のことは、君達にはわからないだろう?」

お付き「わかりました王さま、しかし、なぜあんなことを?
教えてくださらないと、折角の自分達が何もできません」

王さま「いいんだよ。今日は君達も帰って休みなさい。いつも対応してくれてありがとう。」
お付きの人たちを帰らせると、
王さまはたった一人で、
問い合わせてきた一人一人にゆっくりとお返事を始めました。
大変な量ですから、おつきの人たちを帰したことを少しだけ後悔しましたが...

それでも、

「王さまのお尻には大きなほくろがあるよ!」
「王さまはもう少し痩せた(太った)方がいいね」
「王さまって意外と毛むくじゃら(つるつる)だなあ」

という国民からの「自分への」の意見や質問は、
王さまにとっては楽しくてたまりません。

「さて、久しぶりにがんばるかな」

そう独り言をつぶやくと、
昔たった一人でがんばらなければならなかったときのことを思い出して、
久しぶりに夜遅くまで、王さまはお返事を書きつづけました。


翌朝出てきたお付きの人たちはびっくりしました。

沢山あった問い合わせの殆どを王さまたった一人でお返事を済ませていました。
まだのものも少しはのこっていましたが、
典型的な問い合わせにはひな型がつくってあり、
お返事に時間がかかりそうなものや、王さまが自分でお返事するというものには
目印がついてきれいに分類されていたのです。

暫くこんなことをしたことはなかったはずですが、いざとなると
王さまも昔の苦労を思い出したのでしょう。

「王さまはさすがだなあ」

お付きの人達は、改めて王さまを見直したのでした。


さて、当の王さまは....

疲れて執務室でそのまま眠ってしまったようです。
お付きの人たちはそっと王さまをベッドに運びました。

王さまは満足げな表情で眠っています。

王さま「印のついたものは自分が書かなきゃだな」

お付き「えっ?」

王さま「....Zzzz」

お付き「....寝言みたいですね」

きっと、昨日の続きを夢の中でやっているのでしょう(苦笑)

その日以来王さまは、時々王さまの陳情を扱っているところに顔を出すようになりました。
毎日は王さまも忙しいので無理ですが、
時間のある時はできるだけ足を運ぶようになりました。

仕事をしている人たちの邪魔をしないように気をつけながら、
でも、自分が見なければいけないものを見落とさないように。

王さまは大抵は黙って仕事を眺めていましたが、
大きな問題に気がつくと、時々こっそり耳打ちして、
自分の所に寄越させました。

勿論従来通りの流れで王さまの所に上がってくる問題もありますから、
王さまの側にしてみれば仕事が増えているのですが...

でも、これも王さまだから仕方がないのです。
嫌なら最初からやらなければよかったのですから、
国を作った王さまは、その責任があります。

この国はこれからどうなるでしょう。


はだかになったこの王さまは、「ばか」ではありませんよね。





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最終更新日  2004年01月24日 06時47分40秒


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