死海写本館、アートガーデン、考古学館、民族博物館、ユダヤ博物館、イスラエル絵画、近代アート、デザイン、抽象派…。とても一日では回り切れない。足の向くまま気の向くまま歩き出す。最初に死海写本館に入る。すごい。死海文書からの波動が強い。指先がジンジン鳴り始める。死海文書が展示されているガラスケースの周囲には、見学者との間に、円形に大きく堀のような形で穴があけてあって、まるで神社のお賽銭箱のよう。いくらかのお金がその穴に投げ込まれていた。私もUFO氏の御札をこの中に投げ入れる。写本館をぬけるとアートガーデンに出た。ここは、Art Garden By Isamu Noguchi、と書かれている。一面ジャリが敷き詰められており、素適な太陽。眩しいけれど快適。ふらふらと散策して、崖っぷちに腰をおろす。ジャリをどけ、小石で固い土を掘り、御札を埋める。立ち上がろうとしたとき、目に入った小さな小さな黄色の花。ここにもそこにも…。直径5mmぐらいの花がジャリの間から覗いている。すごいな。生命力って偉大だな。「ありがとう、かわいいお花」と声をかけていると、懐かしい風、やさしい風がやってきた。ありがとう。すっかり心が和んで、博物館内に戻ることができた。
再度チャレンジしようと再突入を図るが既にドアは閉まっている。今日からシャバット。ユダヤの安息日に入るため、クローズになってしまったらしい。午後2時、仕方が無いからヤッフォー門の方へでも行ってみようと出口に向かうが出口にも既に鍵がかかっており誰もいない。どこから外に出られるのか、静かな館内をあちこち歩き回る。車の通用門が開いていて、人がいた。「ここから出てもいい?」「OK」さて、第一関門はクリアした。タクシーは一台もいない。バス停はどちらかなと思った瞬間、男の声。「What do you do?」「I want to go to Yahho Gate.」「OK.I will take you.」助手席に座れと言う。それが、こちらのマナーなの?アリもそうだった。乗るとメーターが無い。アレッ?ヤバイカナ?「タクシーじゃないけど大丈夫だよ。僕はここで働いているアルバイトさ。」とのこと。「いくら支払えばいいの?」しばらく私の顔をみつめて静かに答える。「A half million.」馬鹿にするんじゃないの。もちろんジョーク。ともかくバスもタクシーもいない。乗ることにした。「何がしたいの?」「便箋を買いたいの。」「便箋なら事務所にいくらでもあるよ。封筒もあるし、待っていて。すぐ持ってきてあげる。」大量の紙と封筒をもらった。アリの時もバスを降りてケーブル口に向かって、帰りはどうしようかなと思いながら歩いていると、向こうから声をかけてきた。そして、今日、さて、どうするかと思った途端にまた声をかけられた。二度共、私の「想い」と「声」の間に、いわゆる「時間」は存在していない。これも神のおしくみなの?私は守られているの?と問いかける。でも、雲行きがちょっと変。彼もどうやらせまってくる模様。「エルサレムにボーイフレンドいるの?」「僕はあなたのボーイフレンドになりたい。」「あなたはなんて可愛いんだ。」「ファンタスティックだよ、あなたは!」「何がしたいの?ヘルプするよ。」「ベツレヘムには行った?」「何を買いたいの?安い所へ連れて行ってあげるよ。」一体どうなっているの?話の最中、彼の視線が粘っこい。一寸した動作のとき、私の胸に触れたり、腕に触れたりで、危ないなこの青年!彼はユダヤ人で、20代後半。児童心理学を専攻している。もっと学びたいのでアルバイトをしているのだという。「僕は、まだ若いけど、あなたと仲良くなりたい。」「そう、でも私はとっても年をとっているのよ。」「いくつなの?」「いくつに思う?」「32才。」嬉しいようなおかしいような、一人で笑ってしまう。でも何とかしなくちゃ!イタリア人もすごいけど、ユダヤ人まで手当たり次第、女を口説くとは思わなかった。それも48才の太目のオバサンを。まさか、また浩さんがこの学生にウォークインしたなんてことはないよね。買い物の交渉から荷物持ち、私のズタ袋も彼の肩にぶら下げて、とにかく親切には親切なんだけど、このまま夜に持ち込みたくない。ありがとう、神様。私がどうしようと思うと、必ずサポートしてくれる人をあなたは送って下さる。それには大変感謝いたします。でも、愛の押し売りは勘弁して下さい。私は男が欲しいわけじゃない。愛が欲しいわけじゃない。無事、この旅を続けたいだけです。この人にも感謝しますが、ぼつぼつ別れたい、と心に思っていたら、あともう少しでホテルに着くという所で、彼の車がエンストしてしまった。車が動かない。この状況では、これ以上、私を口説けない。ありがとう。すごいね。神様はちゃんと私の心、読みとって願いをかなえて下さった。彼には深く感謝してバイバイ。明日、アリを呼ぼうかと一瞬ひるんだけど、私には浩さんがついているし、どうやらモーセも本当についている様子。やめた。アリを呼ぶと、きっと図に乗ってくる。明日は明日の流れにまかせてみよう。きっと私は守られるだろう。そういう事にしてしまおう。