風に恋して ~自由人への応援歌~

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旅 「イスラエル」編 5章


(浜口喬香子 1996年・イスラエル旅行記より)


平成8年2月23日

 成田を出てからほとんどまともに寝られない夜が続いているが、常に意味がありそうな夢を見ている。見た瞬間には記憶しているが朝になると全く思い出せないという繰り返しだった。ところが、今日は憶えている。どうして今日の夢だけ思えているのだろう。昨夜、日記をつけていて、唐突にひらめいた浩さんとアリの共通性に驚き、浩さんがアリにウォークインしたの?との私の疑問に晶美嬢が夢の中で語った。「そうだよ。ママの考えているとおりだよ。それが事実だよ。」と。そして、もう一つ、別の言葉もあった。「ママは昔、昔、ず~っと昔の古い星から来たんだよ。ずい分長くこの地球に生きているけど、他の皆は、それ程長くないんだよ。」は、何を意味するのか?

 『帰国後、私は多くの霊能者に会うことになった。我が家にやってきて、そのまま住みつく人達が何人もいたのだが、一時、我が家の住人となった持丸青年やUFO氏を尋ねて、いわゆる普通じゃない各種各様の説明しきれない人たちとの出逢いの中で、私は魂の遍歴を伝えられることになった。過去生の数々を教えられていった訳だが、それらの中に、この夢で晶美嬢が語った「長く生きている」という言葉と符合するものがあった。一つは、秋田に住む霊能者グループの人から、「何万回にも及ぶ転生、本当に長い間御苦労様でした。でも、あなたは遊びたかったのですね。どうやら今回で転生は終りのようですね。」と労をねぎらわれ(?)やさしい愛に包まれた。何もわからない私の「どういう意味ですか。私は何者なのですか。」の質問に「あなたは地球創造以前よりエネルギー体として存在しており、北極神の一人で名前はクーフ(クーフだったか、ザリエスだったか、記憶が確かではない)と言います。」ということがあった。又、新宿のあるホテルで、別の霊能者に会わされ、手をつなぎ、エネルギー交換をした時、彼女が急に私の手を放し、とても苦しいので、これ以上は手をつなげないということがあった。その人は、この宇宙に三次元惑星としての地球を創造しようとした地球誕生推進派で、私はその時「そんな不自由な惑星なんて創る必要がない」という立場をとったのだそうだ。いわゆる論敵(三次元的概念だが)というわけだ。地球誕生以前から存在するエネルギー体ですか???その後、何名かの霊能者と会ったときもそれぞれに同じようなことを言われる。「浜口さんて長いヒゲがあって、何だか長老のような感じ。」というのもあった。日本の神様で言えば、北辰妙見観音菩薩にあたるといわれたりもしたが、本人まるで心当たりなどあろうはずもないので、否定も肯定も、喜ぶことも怒ることもできず、ただただ記憶の一部に収めこむしかない。本当だとすると、私の年齢って○○億才ってことになる。アハハ、私ってもうヨレヨレかしらって笑うのみ。』

今日も素敵な太陽!イスラエル観光局(三番町)の女性は、「エルサレムは寒く、ガリラヤ湖周辺はもっと寒いですよ。」と言ったので、持ってきたのはセーターばかり。暑くてとてもセーターなんて着ていられない。Tシャツだけで充分の天候が続き、既に私は日焼けしている。さあ、一人になった。今日は博物館へ行ってみよう。どうやって行こう。バス路線図を見るが、良く分からない。バスはやめて、やっぱりタクシーに乗ろう。ホテル前にタクシーが並んでいる。イスラエルミュージアムに行って欲しいというと、「今は午前10時、ミュージアムは11時オープンだから、その辺を案内する。」との返事。旧市街地の周りはすごい雑踏。アラブ人、ユダヤ人、イスラム人…。ありとあらゆる人種がとりどりの服装でひしめいている。不安が首をもたげる。小さな路地、物売り…。オリーブ山の所でタクシーは止まった。車外へ出る。すぐに近づく数名の男たち。てんでに「案内するよ。」「この写真いらないかい。」迫ってくる。「NO!」と答えても離れない。アラブ系の運転手に救いを求める。「案内はいいからミュージアムに行って。」参ったな、世界の聖地エルサレムは欲望のるつぼ。神聖な気持ちなんて吹き飛んでしまった。アラブ系の運転手が、しきりに説明してくれるが、なまりがあって聞き取りにくい。それにとても早口だ。これならアリの方がどれほど良いか。全身を鎧で包まねばならない。一瞬一瞬神経を逆立てていたのではたまらない。明日は旧市街地内を一人で歩くつもりだったが、にわかに不安になる。ガイド嬢の言葉が甦る。「路地がたくさんありますから、一人だと迷いやすいですよ。メインストリートだけを歩いて下さい。路地は危険です。特にアラブ地区には入らないように。」車内からちょっと見ただけだけど、とても女一人で無事歩ける雰囲気ではない。群がる男たちをそれこそ太陽の剣でバッタバッタと切り捨て続けなければ先へ進めそうにない。運転手の人からも「注意して下さい。荷物を盗まれないようにして下さい。」としきりに言われる。これは参った。以前、サンフランシスコやローマの路地を一人で歩き回ったことがあるが、その比ではない。癪だけど、アリに電話しようか。やたらキスしたがるけど、ノーと強く言えば止めてくれるし、ともかくアリがいれば、誰も近寄ってこないことは確かだし、会話のコツはお互いにつかんでいる。必要な所へ案内してくれる。安全であることだけは確かだ。まあ、夜になって考えよう。ともかく今は博物館だ。

死海写本館、アートガーデン、考古学館、民族博物館、ユダヤ博物館、イスラエル絵画、近代アート、デザイン、抽象派…。とても一日では回り切れない。足の向くまま気の向くまま歩き出す。最初に死海写本館に入る。すごい。死海文書からの波動が強い。指先がジンジン鳴り始める。死海文書が展示されているガラスケースの周囲には、見学者との間に、円形に大きく堀のような形で穴があけてあって、まるで神社のお賽銭箱のよう。いくらかのお金がその穴に投げ込まれていた。私もUFO氏の御札をこの中に投げ入れる。写本館をぬけるとアートガーデンに出た。ここは、Art Garden By Isamu Noguchi、と書かれている。一面ジャリが敷き詰められており、素適な太陽。眩しいけれど快適。ふらふらと散策して、崖っぷちに腰をおろす。ジャリをどけ、小石で固い土を掘り、御札を埋める。立ち上がろうとしたとき、目に入った小さな小さな黄色の花。ここにもそこにも…。直径5mmぐらいの花がジャリの間から覗いている。すごいな。生命力って偉大だな。「ありがとう、かわいいお花」と声をかけていると、懐かしい風、やさしい風がやってきた。ありがとう。すっかり心が和んで、博物館内に戻ることができた。

博物館がこんなにすごい波動を出しているなんて知らなかった。当然といえば当然のことだが、物言わぬ一つ一つの展示品が、その存在を訴えてくる。ギリシャの国立博物館は、金製品や装飾品がメインだったが、ここは生活そのもの。人間てすごいなと昨日とは異なる視点で感動してしまう。足の向くまま入ってしまったイスラエルアート館。暗い!終わりのない戦いを生きねばならなかった人間のやるせなさ、辛さ、魂の叫びが充満しており、私の心も引き裂かれてしまいそう。光を求めているのはわかるが、その願いはどこまでも屈折した形で表現されている。八方ふさがりの濁った重いエネルギーが館全体を包んでいる。血塗られ、襲撃された家の立体アートもあり、不快感にせき込む。「どうしてこんなもの、あえて創るのよ。」平和ボケの私は独り言を声に出す。広島の原爆ドームが脳裏をよぎる。二度と同じような間違いを犯さないためにとの願いで、修復を続けられるそれら記念建造物は、本当に必要なのだろうかとの疑問がわいてきた。人間の心に憎しみや我欲、争い、競い心などの想念が全く存在しなければ、心に悦びだけが満たされていれば、これら悲惨なメモリアルは、むしろ無いほうが良いのではとの思い。数え切れないほど繰り返される各地での戦いが、人間や地球に何をもたらしたのか、勝者も敗者も共に失う物が大きく、共に犠牲者であり、憎しみ、悲しみを生むだけのこと。地球から全ての戦いがなくなる日がやってくることを私は強く望む。歴史を残す必要性とは言え、アートでこうも人間の悪意をむき出しに見せ付けられるのには耐えられない。アート館全体が澱んでいる。頭痛がしてきた。カフェテリアに入る。新鮮な空気が嬉しい。今日もすばらしい雲が空一面に広がっている。「これこそアートだよ。」とその雲を見つめてまた独り言。

再度チャレンジしようと再突入を図るが既にドアは閉まっている。今日からシャバット。ユダヤの安息日に入るため、クローズになってしまったらしい。午後2時、仕方が無いからヤッフォー門の方へでも行ってみようと出口に向かうが出口にも既に鍵がかかっており誰もいない。どこから外に出られるのか、静かな館内をあちこち歩き回る。車の通用門が開いていて、人がいた。「ここから出てもいい?」「OK」さて、第一関門はクリアした。タクシーは一台もいない。バス停はどちらかなと思った瞬間、男の声。「What do you do?」「I want to go to Yahho Gate.」「OK.I will take you.」助手席に座れと言う。それが、こちらのマナーなの?アリもそうだった。乗るとメーターが無い。アレッ?ヤバイカナ?「タクシーじゃないけど大丈夫だよ。僕はここで働いているアルバイトさ。」とのこと。「いくら支払えばいいの?」しばらく私の顔をみつめて静かに答える。「A half million.」馬鹿にするんじゃないの。もちろんジョーク。ともかくバスもタクシーもいない。乗ることにした。「何がしたいの?」「便箋を買いたいの。」「便箋なら事務所にいくらでもあるよ。封筒もあるし、待っていて。すぐ持ってきてあげる。」大量の紙と封筒をもらった。アリの時もバスを降りてケーブル口に向かって、帰りはどうしようかなと思いながら歩いていると、向こうから声をかけてきた。そして、今日、さて、どうするかと思った途端にまた声をかけられた。二度共、私の「想い」と「声」の間に、いわゆる「時間」は存在していない。これも神のおしくみなの?私は守られているの?と問いかける。でも、雲行きがちょっと変。彼もどうやらせまってくる模様。「エルサレムにボーイフレンドいるの?」「僕はあなたのボーイフレンドになりたい。」「あなたはなんて可愛いんだ。」「ファンタスティックだよ、あなたは!」「何がしたいの?ヘルプするよ。」「ベツレヘムには行った?」「何を買いたいの?安い所へ連れて行ってあげるよ。」一体どうなっているの?話の最中、彼の視線が粘っこい。一寸した動作のとき、私の胸に触れたり、腕に触れたりで、危ないなこの青年!彼はユダヤ人で、20代後半。児童心理学を専攻している。もっと学びたいのでアルバイトをしているのだという。「僕は、まだ若いけど、あなたと仲良くなりたい。」「そう、でも私はとっても年をとっているのよ。」「いくつなの?」「いくつに思う?」「32才。」嬉しいようなおかしいような、一人で笑ってしまう。でも何とかしなくちゃ!イタリア人もすごいけど、ユダヤ人まで手当たり次第、女を口説くとは思わなかった。それも48才の太目のオバサンを。まさか、また浩さんがこの学生にウォークインしたなんてことはないよね。買い物の交渉から荷物持ち、私のズタ袋も彼の肩にぶら下げて、とにかく親切には親切なんだけど、このまま夜に持ち込みたくない。ありがとう、神様。私がどうしようと思うと、必ずサポートしてくれる人をあなたは送って下さる。それには大変感謝いたします。でも、愛の押し売りは勘弁して下さい。私は男が欲しいわけじゃない。愛が欲しいわけじゃない。無事、この旅を続けたいだけです。この人にも感謝しますが、ぼつぼつ別れたい、と心に思っていたら、あともう少しでホテルに着くという所で、彼の車がエンストしてしまった。車が動かない。この状況では、これ以上、私を口説けない。ありがとう。すごいね。神様はちゃんと私の心、読みとって願いをかなえて下さった。彼には深く感謝してバイバイ。明日、アリを呼ぼうかと一瞬ひるんだけど、私には浩さんがついているし、どうやらモーセも本当についている様子。やめた。アリを呼ぶと、きっと図に乗ってくる。明日は明日の流れにまかせてみよう。きっと私は守られるだろう。そういう事にしてしまおう。

東京に電話を入れてみる。やっと繋がったと思ったら、NO ANSWER!!日本時間は夜11時半の筈。どこへ遊びに行ったやら。理恵もいないということはカラオケか。それとも晶実嬢と共に森本氏の別荘へでも一泊旅行?どうも理恵と話をさせてもらえない。どこにいるのかな、我が娘。元気で楽しく暮らしているだろうか。さらに美しくなっているだろうか。別れてから、まだたった5日しかたっていないけれど、私の1日はとても長いから、すでに1ヶ月位娘に会っていない気がしてしまう。

『この時、理恵は晶美嬢に連れられてクラブに踊りに行っていたらしい。夜遅く家に連れて帰ると、浩さんが仁王立ちになって怒っていたと言う。「気を使ってくれるのは嬉しいが、理恵の年齢を考えろ。今何時だと思う?!」と語気も荒く浩さんに怒鳴りつけられ、「ごめんなさい。ごめんなさい。私が間違っていました。二度とこのようなことはいたしません。」と床に正座し、頭を床にこすりつけて謝ったのだと晶美嬢から帰国後報告を受けた。霊体がはっきりと見える彼女ならではの出来事。』

 私は、少し体重が落ちたようで顔も細くなってきた。睡眠不足もあるかもしれないけど、何といっても食事の変化だろう。こちらに来てからの食事は、野菜、野菜、野菜の毎日。ほとんどの食事が野菜、果物、オリーブ、少々のチーズ、パン、コーヒーなので便秘をすることもなく体調が良い。エンボケックのニルバナホテルで体重を測ったとき、出発してたった3日しかたっていないのに2kg減っていた。まるで、ダイエットツアーだ。不思議なことに、肉が無くても、魚が無くても苦にならない。朝、自分でもビックリするぐらいたっぷり食べてしまうので、それ以降は、それほど食べたいという欲求が起きてこない。日本から持ってきた梅干しやお茶、おせんべいなど全く手をつけていない。シンプルな素材中心の食事だからだろう。充分満足しているので日本食の必要性を感じない。本当に私は世界中どこでも生きていける人のようだ。日本では嫌われる細長いお米も、こちらではバターライスになっているので、とても美味しく食べられる。あえて難を言えば、煮野菜(根菜類)に不足していることだろうか。昨夜は、トマトスープとほうれん草パイ(ホームメードでほうれん草がたっぷり入っていた。珍しく味付けが濃く、ちょっと塩が強かった)のみで夕食を済ます。
 これまでの旅というと、いつもビジネスがらみなので、行く先々で接待を受け、格式高いレストランでたっぷりのごちそう(肉や魚、チーズなど)とたっぷりのワインで、必ず便秘となり、3kgは体重を増やしての帰国だったが、今回はノービジネスで、気軽な一人旅ゆえ、夕食は快適でヘルシー。帰国するまでには5kgは減量できそうな流れだ。一人っきりで過ごす夜も随分久しぶりで、時間がたっぷりあるので、顔のマッサージでもして眠ろうか。日本にいるときは毎日がにぎやかで、静寂の時間など無かったな。ある日やってきた人がそのまま住みついてしまったり、次々と訪問客があらわれたり、20人ぐらいが集まってワイワイパーティーになってしまったりで、毎日、その人達の食事を作ったり片付けたりに追われる日々だった。
本当にどうなっているの?お風呂に入って遅い夕食をホテル内のカフェテリアでとるために、ノーメークのまま降りて行った。イタリアンサラダと一杯のワイン。それで、本でも読んで眠るつもりだった。隣のテーブルに一人でやってきた男が座った。「どこから来たの?」話かけてくる。「From Tokyo.」私のテーブルに座って良いかと言うので「もちろん、どうぞ。」の会話が始まった。彼の名前は聞いたが忘れてしまった。ユダヤ人で、このホテルの近くに両親と一緒に住んでいると言う。背が高くて、引き締まった身体、年は40才ぐらいだろうか。軍の仕事をしているが明日はシャバットで休日だから旧市街地内を案内してあげよう。夜はYMCAでダンスと音楽の夕べがあるので一緒に参加しようと言う。わかりやすい英語でとてもやさしい響きの声の持ち主。ホテル内の人達(特に警備)と親しそうだ。明日、旧市街地内を歩くことにしているが、本音は一人で歩くのが不安だった。どうしてそれがわかるのよ。彼も神からのプレゼントなのだろうか。私はどのように見えているのだろう。男漁りしている年増女?なぜ、こうも次々と男がやってくるのか。変だな。この男に対して、なぜか緊張感が無い。ふわっとしたやさしさで包みこまれている。よほど女性扱いが上手いのか、警戒心が沸いてこない。「夜景がきれいだから、散歩に行きましょう。」と手を取られ、抵抗なくついて出てしまった。歩いている間、手の甲にキスしたり、肩を抱いたり、アリと同じだけれど何かが違う。嫌じゃない。まるで、緊張感がおきないのだ。やさしく肩を抱き寄せられたとき涙が出た。(?)心地良い。(?)おかしいよ、私。一体私はどうなっているの?物静かな語り方、背中にまわしてきている男の手の温もりに安心感さえある。くつろいで、全く無防備な自分の心に戸惑っている。変だよ。何かが変だよ。まずいよ、これは!「ママは大丈夫。導き手がその都度現われるわ。」そう、当たり。大正解。困ったなと思うと必ず向こうから私の望みをかなえてくれる人間が現われる。でも、男ばかりだよ。それも、揃いも揃って、皆、口説いてくる。私が誘っているの?私がそれを望んでいるというの?晶美嬢のいう「白髪の老女」はまだ現われない。「通訳はいらない。」確かに通訳はいらない。会話は成り立っている。

コーヒーショップへ入る。なぜか、彼はビューティービジネスについて知識がある。「AHAVAは良い化粧品だが、もっと優れた死海商品がある。AHAVAは歴史があるから広く知られているだけだ。これからは<ドクターノア><エンゲディ>の方が伸びるだろう。必要なら、資料でもサンプルでも送ってあげる。友達になろう。僕が日本へ行ったり、きみがエルサレムに来たり、手紙を書いたりしよう。ビジネスのヘルプもするよ。何でも欲しい情報があるなら、伝えてくれ。すぐ手配する。」手が込んできた。ただの口説きから私の痛い所をついてくる。嫌でも心が動いてしまう。でも、助平心は持たないようにしよう。夜の散歩で、ホテルから旧市街地が実に近いということがわかった。それが収穫かな?明朝9時半に迎えに来ると言う。シティソルジャーが護衛につくのだもの、安全は確保されたが別の心配がある。お願いだから、それ以上やさしくせまらないで!警戒心が起きてこないその波動が恐い。彼は、アリや今朝の学生のように、言葉ではせまってこないけれど、身体の動きがなめらかで、自由自在に私をコントロールしてしまう。いつのまにか抱き寄せられ、いつのまにかキスされている。わざとらしさが無く、自然そのまま。私は風に抱かれているかのよう。

 一人旅は、今回が初めてじゃない。これまでも、何度か世界各地を一人で旅し、いろんな男が現われはしたが、私のお供は常に警戒心。だから、いつでも、どんな状況も切り抜けてきた。こんな男性は初めてだ。まるで催眠術でもかけられ、意志を喪失した人形のように、私は操られてしまう。心身がリラックスしてゆるんでいる。このままだとマズイことが起きてしまいそう。彼は何者なの?これが、神の、豊玉姫からのプレゼントだというの?それとも悪魔の誘惑?神からのプレゼントだというなら、注文をつけさせて欲しい。口説きなしで、Make Loveの危険性のない、ただ、ただ親切で安全な騎士を送って下さい。お願いします。私は、Make Loveへのゲームはしたくない。友情だけの方が、何倍も好きなのです。


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