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カモメ7440 @ うまい! おそらく散文詩だと思います。 ショート…

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Feb 17, 2008
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カテゴリ: 柔らかい思念
 体の底から本当に湧き出てくるような力がほしいと思った。力強く日々を推し進めていくような意欲がほしいと思った。
 確かにわたしは長い時間を生き過ぎた。それが、400年なのか、500年なのか、もしかすると1千年を超えているかもしれない。既に、時間の長さの絶対値が意味をなさないぐらいわたしは生きている。

 わたしは退屈していたわけでは決してない。いつの時代も静かで、平穏で、安定しているときはなかった。自然災害や戦争が絶えずあったという意味だけではなくて、そのような暴力的な活動や行為がない時でも、人々は苦しみ、嘆き、身悶えていた。いろいろな色の絵の具を混ぜると、その中には巨大な太陽が夕暮れ時に作り出す情熱的な赤色や雲ひとつないカルフォルニアのまぶしい青色が含まれているのにかかわらず、結局は灰色の溶液になってしまうように、人間の感情をすべてまぜると、それこそ微笑や信念や希望を支える豊かで前向きな感情があるにもかかわらず、どろどろと薄汚く暗いものになってしまうのである。わたしは夜の街をあるくと、必ず不幸な人々にめぐり合った。そのような人々をさらに不幸にすることはとても簡単なことであった。暗い感情をもう少し暗くしてやるだけで十分だった。人々の感情が闇に近づくと、人々は悟った、闇が無限であるように不幸も無限であると。人々がその絶望感から人生をあきらめてごろごろと転落していく様を観察していくことは、わたしにはとても愉快であった。

 そのような暗い感情はわたしには伝染するはずはないと思った。なぜなら、少しでもわたしの心に曇りができるとわたしは若い女の血を吸ってきたからだ。どの若い女の血にも未来への予感があった。社会の荒波に揉まれる前の初々しい素直な感情と隣り合せで、将来に対するきっぱりとした覚悟があった。それがわたしの体に注入されていくのだ。わたしは絶えず生まれ変わり、再び生まれ変わるために生き続けた。
 それが最近どうしたことだ、若い女の血が効かない。女の背後に忍び寄り、その滑らかな曲線を描いている首筋にわたしの牙をつきたてた瞬間にほとばしる血液がわたしを瞬く間に回復させていくことには違いがない。しかし、それが長続きしない。

 今でもそのときの光景を思い出すことができるが、その女はギロチンで処刑されることが確定していた。次の朝になれば、沢山の民衆の前に晒されてその生命を終えるはずだった。それなのに、彼女の心の中にあったものは夢だった。彼女の思念が大きく飛翔し、死を目前にしても夢が恐怖心を押しつぶしていた。わたしの牙が彼女の首筋に深く食い込んだとき、わたしは確信したのである。その確信は正しく、次の百年間、一人の女の血を得ることもなくわたしは若々しい青年として生き延びたのである。
 そう、あの時のような強い感情を持った女がいない。このままではわたしは滅びてしまう。一年に一人の女の血で済んでいたものが、月に一人は必要になっている。さらに、月に一人でも物足りないような気分の襲われている。

 あてがまったくないわけではない。病のためにもう何ヶ月も伏せているけれども、恐ろしいほどの精神の健康性を維持している女がいる。その女には3人の幼い子供がいる。妻を助けるために自分の全財産をつぎ込み、それでも足りないお金を得るために毎晩深夜まで働いてるやさしい夫がいる。しかし、わたしには彼女の近い未来が見えている。自然の摂理が彼女の意志を超えた。現代の医学はあまりに非力すぎた。彼女の精神が強ければ強いほどに、それを上回る劇痛が彼女の肉体を襲い始めている。それでも彼女の思念は子供に、夫に、そして未来に向かっている。

 わたしが求めているのはこのような血なのである。しかし、この血には病から作り出されている毒素があまりに多すぎる。この毒素にわたしすらも耐えられないかもしれない。彼女の血はこの毒素のためにどす黒い。
 わたしは彼女の強い意志に、この黒い血の中にみなぎる意志に引かれている。わたしがまた何百年も行き続けるためには、この意志が必要なのである。彼女の心臓が止まってしまうとわたしはこの血を吸うことができなくなる。

 深夜、わたしは彼女の病室に忍び込み彼女を見つめている。彼女の皮膚は既に生気を失なっているが、まだ、そのすぐ下を黒い血が流れている。
 まもなく、終焉が訪れる。わたしは決意しなければならない。
 わたしはかっと眼を見開いた。





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Last updated  Feb 24, 2008 11:02:10 PM
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