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カモメ7440 @ うまい! おそらく散文詩だと思います。 ショート…

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Jun 27, 2009
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カテゴリ: 柔らかい思念
 何日も泣き続けた後に、相手の男に復讐しようと思った。わたしは先端の鋭利なものを好むようになった。丸められた机の角や椅子の背もたれの円形が不愉快だった。あたりの空間さえも切りさいているように感じられる、刃先が職人の技術で磨き上げられたナイフをわたしは購入した。いつもハンドバッグの中にそのナイフを忍び込ませている。
 男の顔写真を切り刻んだ。写真の男の顔を斜めに切る、最初の一筋にわたしは力を込めた。写真を切るだけでなく、その下の透明なビニールのカッターマットにも白い切り傷の線ができた。そのビニールのマットに深く食い込めば食い込むほど、男にダメージを与えているような気がした。
 それがいかに馬鹿馬鹿しい行為であるかは、もちろん理解していたけれども、そうせざるを得なかった。恨みや屈辱感をどこかにぶつけなければわたしは存在しえなかった。

 こういう感情がわたしに幻覚を見させるのだろう。
 わたしには透明な魚が見える。透明な魚が空中を泳いでいるのが見える。しかも、その透明な魚が悩み苦しんでいることすら、感じられる。その魚は男を食べる。男を食べなければ透明な魚は生きて行けない。それで悩んでいる。空中を自由に飛べることは未来への飛翔に繋がらない。透明な魚にとっては、男を食べるために宙を泳ぎ続けなければならないことがつらくてたまらない。
 今日もわたしはふたりの男が透明な魚に食べられるのを見た。一度、透明な魚が男の頭を咥え込んだら、男のすべてを食べ尽くさなければいけない。頭の欠けた男が通りを歩いていてはいけない。頭と胴体が食われて、手足が2本ずつ路上に転がっていてはいけない。わたしの幻覚の中でもある秩序は保たれている。
 透明な魚に喰われるどの男も寂しそうな眼をしている。透明な魚も本能的に弱そうな男を狙っている。しかし、そんな男で胃袋を満たすと、弱々しくて陰鬱で、胃液でどろどろになったもので気持ちが悪くなる。消化することができなくて、透明な魚は嘔吐する。げぼげぼと胃の中のすべての物を吐き尽くすまで大きな胃を痙攣させている。吐くと気持ちがよくなるが、同時に空腹になる。するとまた男を食べるために透明な魚は宙を泳ぎだす。
 何度も同じことを繰り返す。可愛そうに透明な魚は本能的に弱い男しか襲うことができない。
 わたしが本当にこの透明な魚に喰ってほしい男は、こんな陰のある男ではない。陽の当たる場所にいるずるがしこい、わたしを惨めなものにしたあの男だ。これがわたしの幻覚なら、なぜあの男を透明な魚は食い殺そうとしないのだろう。

 社会は暗い海で、その海の底の方で押しつぶされそうな男を静かに現われた透明な魚が食べていく。そのような弱そうな男にわたしは同情しない。透明な魚は弱い男ばかりを食しているから、強くなれない。自分より強いものに襲われることを恐れ、その不安を忘れるために弱い男を襲っている。弱い男は透明な魚に喰われて当然かもしれない。わたしは透明な魚に襲われた男を見ても決して振り返りはしない。
 強い男にわたしは憧れる。わたしにはあの男を忘れることはできない。幻覚の中ですら、透明な魚は決してあの男を襲わない。あの男には生き続けていてほしいのだ。







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Last updated  Jul 5, 2009 03:54:03 PM
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