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Tessera @ どうもありがとうございます。 カモメ7440さん 激励を頂き本当にありが…
カモメ7440 @ うまい! おそらく散文詩だと思います。 ショート…

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Jul 5, 2009
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カテゴリ: 柔らかい思念
「空にもお魚がいるよ。」
話しても、歩いても、転んでも、どんな仕草をしても可愛い年頃があって、そんな年の男の子が空を指差して言う。
「そうかい。」
 ちらっとその声に引かれて父親である男はその方向を見るが、初めからそんな話を信用していない。それよりは、自分の浮きに動きがないかの方がはるかに気にかかる。浮きが急に水中に引き込まれる。男が反射的に竿を上に上げる。釣竿がJの字のように一瞬大きく曲がり、遅れて浮きと針が空中に飛び出すが、針には何もかかっていない。餌もない。
「ちぇっ。」
 もうこれで3度目である。川の流れが部分的に速くなる場所があり、そこに浮きが行くと水中に引き込まれる場合がある。単なる水流のいたずらなのか、魚がいて餌を取ろうとしているのか、男には判断がつかない。ともあれ、男はそちらに気を取られている。そんなこともあって、子供が何を言っていようが、まともに聞く気がない。
 退屈しないようにと、子供にも浮きと釣り針のついた小さな竿を持たせているが、やはり小さな子供の関心は長続きしない。
 やがて、子供はその竿を振り回し始める。
「おい。竿を振り回すのはやめろ。」
 男は再び釣りの仕掛けを川の流れに放り込むと、浮きを眼で追いかけながら、視野の隅に子供を捉えて注意する。
 釣り場のすぐそばに自動車が2車線分とその両側に歩道がある、その地域ではかなり大きな橋がある。休日ということもあって、車の通りは少ない。まったく車が通らないこともある。ちょうどそんな時なのであろう。子供の声が聞こえなくなり、やがて男は川のせせらぎの音で包まれた。浮きは今度はぴくりとも動かない。緊張感が薄れてくると、思念が日常に伸びていく。明日の会社のことに気持ちが奪われていく。すっかり昇進から取り残されて年下の上司にぺこぺこしている自分が哀れだ。しかも人生の大部分を会社に尽くして、この有様だ。定年までずっとこの惨めな姿をさらしていくのかと思うと気も重くなる。子供の存在が自分を支えていくと信じたい。
「そう言えば、息子はどこにいったのだろう。」
内面でくすんでいた意識が外に向かう。
「子供はどこにいった?」
投げた視線の先に流されていく釣竿がある。男は川辺に沿って、下流に走る。釣竿のある方向に走る。息子の姿は見えない。
「おとうさん。空にもお魚がいるよ。」
息子の声を聞いたような気がした。走り続けながらも、ちらっと空を見た。夏の白い雲と雲の間に青い空が見えた。そこに確かに男は巨大な透明な魚を見た。胃袋のあたりが透けて見えた。小さな子供のようなものがうごめいているのが見えた。

「それでどうしたんだい。」
わたしが父に尋ねると、彼は静かに答えた。
「もちろん、戦った。世の中にはどうしても失ってはいけないものがある。」
「戦った?」
「ぼくは走りに走った。その透明な魚を追って。やはり、子供を飲み込んだばかりで自由に体が動かなかったのだろう。そのうち、地上すれすれによたよたと泳ぎだしたから、ぼくは飛びかかったんだ。そのおかげで、お前は今も生きている。」
「そんな馬鹿な。」
わたしは笑った。父のいつもの冗談だと思った。
父は話を続けて
「しかし、助け出すのに時間がかかって、やはり透明な魚に飲み込まれて胃液の影響が出たのだろう。お前の手や顔に少しまだらな模様があるのはそのためだ。」
わたしがなんとも言えず困惑していると、今度は「ふふっ」と父が笑い出した。
しかし、わたしは父が何かをごまかしていると思った。






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Last updated  Jul 12, 2009 10:42:46 PM
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