神頼みな毎日

神頼みな毎日

自転車






空気の抜けた自転車を走らせる。


タイヤの空気は完璧に抜けきり、空気口の突起部分のせいでタイヤが一回転するたびガタガタ鳴る。


壊れちゃうかもな・・・。そんなことを想った。さすがにパンク状態での走行はまずいかな。


なによりうるさい。


ガタンッ・・・ガタンッ・・・ガタンッ・・・。


月夜に照らされる道路。真っ暗な道を走る。ペダルをこぐ足は重く、パンクしたタイヤのせいだと思った。


同じリズムで刻む振動は、タイヤの回る速度によって早くもなり遅くもなり。


空気を入れない僕のせいだと思った。


ガタンッガタンッガタンッ・・・。


月明かりに照らされて、周りは綺麗な静寂に満ちていて、僕は自転車に揺らされて。


振動がなんとなく人間の鼓動のように思えた。


心臓の鼓動のようだ。


うざったかった振動に何故か温かみを感じる。


トクンットクンットクンッ・・・。


自転車が生きているように。僕が生きているように。


そう想ったら何故だか嬉しくなって、坂道を一気に駆け上がった。全力で。


僕の鼓動も、自転車の鼓動も早くなっていった。二人して坂を駆け上る。


今日僕は自転車の友人を得た。彼と一緒ならどこまでも行ける。本当はずっと前から一緒だったけど、彼の事をちゃんと知ったのは今日だった。


明日。ちゃんと空気を入れてやろう。そう思った。





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