神頼みな毎日

神頼みな毎日

はっぱ


となりの奴がついに落ちた。今まで俺の馬鹿に付き合ってくれてありがとよ


これで俺がこの木で最後の葉っぱとなったわけだ・・・・妙に感慨深くてちょっと笑った。


もうすぐ俺の人生も終わる・・・・。


真っ赤に紅葉した俺も、地に落ちて道を彩る役目につくことになる。


よくよくは茶色に変色を果たし、踏みつけられれば乾いた音を出して冬を演出していくだろう。


しかし葉は木についてナンボ。俺はそう考えている。


だからこそ兄弟達が先散る中、最後まで残った。意地を張った。


でももうすぐ、葉っぱとしての俺の人生も・・・・。終わる。


そろそろ潮時か。


下では何人の兄弟たちに会えるかな。風に乗って旅に出た奴もいるだろう。


もしかしたらおれ自身旅に出るかもな。


まぁいい、そん時になったら考えよう。


さて・・・・俺も落ちるか。


木につく葉っぱとしての幕を下ろしかけた時、ふと向かい側の建物の窓に目をやる。


ベットに寝た女性と、傍に立つ男性が会話をしていた。


ふと風に運ばれ声が俺の元に届く。そうだな、最後だし聞いてから落ちるか。




「あたし・・・・、もう長くないのよ」


そうかぁーとなりの建物って病院だったんだ・・・・あの子は病気か何かか。


「何言ってんだよ」


「ううん、分かるの。自分の事だもの」


「いや意味わかんないって」


そうだよな、弱気になっちゃ駄目だ。生きる意志を持たなきゃ。


「・・・・きっとあの葉が落ちたら・・・・私の命も消えるのね」


うわぁー女の子が俺を指差してる・・・・ってお――いっ!!


え? 何? ちょっと待とうか? 落ち着こうよさ、お互いにね? 心の準備、心の準備。
えっとなんだっけ? 俺が散ったら死ぬ? え? 突然にしてはでかすぎる責任じゃありません?
しかもなんで俺? そりゃこの木に残る、最後の一枚だけどさ!
聞かなきゃ良かったよぉーっ! 後味悪すぎじゃんかーっ!おーいー!
せっかく人が感傷に浸りながら、人生の垂れ幕引こうって時にさ? なんでそういう事言うかな――っ?
そんな見知らぬ葉っぱにかける責任の重さじゃないでしょー?
「あ、赤い葉っぱ~もう秋だね」レベルが普通だよー? それがなに? 大胆にも人一人の重み?


よっしこうなったら意地でも木の枝に張り付いてぜってぇー死なせねぇーっ!! そしてあの馬鹿女に感謝の言葉を並べさせてやるからなっ!



そして月日は流れ・・・・。



「退院おめでとうございまーす」看護師さんが女性ににこやかにお辞儀。


「ありがとうございました」男と女が同時に頭を下げた。とても笑顔だ。


そうか、助かったか・・・・まぁ俺のおかげだよな。ちょー頑張ったからな、俺。


「ホントーかわいい男の子で」


「ホントに感謝してます、では」


男達は歩きだし、去った。時折振り返り、そのたびお辞儀を繰り返す・・・・そして見えなくなった。


若い看護師と老いた看護師の話し声。


「ホント。これでもかってくらい安産でしたね」


「ええ、入院中だって冗談を交えながら明るく笑ってらしたものね」





現在。タイミングを逃した俺は、かさかさに茶色く変色しながらも木の枝に居座り続け若葉達の誕生を見守っている。


若い奴らに老人の詰まらねぇ話を聞かせて生きるのも悪くも無いかもな。そんなこと考えながら新芽を見守っている。


若い奴らに言ってやるつもりさ。


「俺はな、昔人間の命を一つ救ったんだよ。だから今こうしてここにいるわけだが・・・・・・」









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