雑多な趣味のガラクタ小屋

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KING CRIMSON




BEATLESを全英アルバムチャート1位から引き摺り下ろしたいわくつきのバンドである。そんなセンセーショナルなデビューを飾ったCRIMSONである。33年の月日が流れ、いまだ現役である。その時々にスタイルを変えながら常に我々を刺激し続けてくれる、現在の音楽シーンの中にあって誠に稀有な存在である。プログレの雄とは言われているのだが、ジャンル分けの出来ない存在であることは疑いの余地のない事実であろう。バンドそのものがジャンルとなりえている数少ないバンドの一つであろう。

【IN THE COURT OF THE CRIMSON KING】 1969
ROBERT FRIPP - guitar
IAN McDONALD - reeds,woodwind,vibes,keyboards,mellotron,vocals
GREG LAKE - bass guitar,lead vocals
MICHAEL GILES - drums,percussion,vocals
PETER SINFIELD - words and illumination

produced by KING CRIMSON

1.21st CENTURY SCHIZOID MAN including MIRRORS
2.I TALK TO THE WIND
3.EPITAPH including MARCH FOR NO REASON and TOMMOROW AND TOMMOROW
4.MOONCHILD including THE DREAM and THE ILLUSION
5.THE COURT OF THE CRIMSON KING including THE RETURN OF THE FIRE WITCH and THE DANCE OF THE PUPPETS

これはあの顔のどアップのジャケットが印象的なデビュー・アルバムである。このメンバーでのアルバム制作はこの1枚のみである。というよりも、アルバムごとにメンバーは入れ替わっているのである。最初はFRIPP,IAN,GILESが均等に力関係を維持してきたバンドであるが、脱退に伴ってFRIPPのバンド(というよりはユニットといったほうがいいのかもしれないが)となっていくわけである。
最近もCMなどに使われて耳にしたかたも多いだろうが、今聴いてもあまり昔の曲という感じがしない。楽器そのものの音は今のものと明らかに違って聞こえるのでちょっとした時代感はあるけれど、この時期にこれほど秀逸にJAZZとROCKが融合していた曲はなかったと思う。

【IN THE WAKE OF POSEIDON】 1970
ROBERT FRIPP - Guitar,Mellotron & Devices
GREG LAKE - Vocals
MICHAEL GILES - Drums
PETER GILES - Bass
KEITH TIPPET - Piano
MEL COLLINS - Saxes & Flute
GORDON HASKELL - Vocal(on CADENCE AND CASCADE)
PETER SINFIELD - Words

produced by ROBERT FRIPP & PETER SINFIELD

1.PEACE - A BEGINNING
2.PICTURES OF A CITY including 42nd atTreadmill
3.CADENCE AND CASCADE
4.IN THE WAKE OF POSEIDON including Libra’s Theme
5.PEACE - A THEME
6.CAT FOOD
7.THE DEVIL’S TRIANGLE
ⅰMERDAY MORN
ⅱHAND OF SCEIRON
ⅲGARDEN OF WORM
8.PEACE - AN END

最高のスタートダッシュを決めたCRIMSONは、69年デビューの年に全米ツアーを行った。しかしツアー終了とともに、中心的メンバーであったIAN McDONALDとMICHAEL GILESの二人が脱退する。そんな中でこのセカンドアルバムの準備をしていくことになる。人選とリハーサルを繰り返す中、FRIPPは自らのユニットとしてのCRIMSONのあり方を模索するようになる。「ポセイドンの・・」のレコーディングが済んだ後、GREG LAKEはKEITH EMERSONとの活動を選びバンドを去っていく。そんな混沌とした中で作られてはいるが、KEITH TIPPETは今や押しも押されもしないジャズ・ピアニストの重鎮であるがこの頃は駆け出しの新人である。(リーダーアルバムは2枚ほど出している)相変わらずメンバーは一流である。

【LIZARD】 1970
ROBERT FRIPP - gutar,mellotron,electric keyboard & divices
MEL COLLINS - flute & saxes
GORDON HASKELL - bass & vocals
ANDY McCULLOCH - drums
PETER SINFIELD - words & pictures
with
ROBIN MILLER - oboe & cor anglais
MARK CHARIG - cornet
NICK EVANS - trombone
KEITH TIPPET - piano & electric piano
JON ANDERSON of YES - vocal on ’PRINCE RUPERT AWAKES’

produced by ROBERT FRIPP & PETER SINFIELD

1.CIRKUS including Entry of the Chameleons
2.INDOOR GAMES
3.HAPPY FAMILY
4.LADY OF THE DANCING WATER
5.LIZARD
 (a)Prince Rupert Awakes
 (b)Bolero - the Peacock’s Tale
 (c)The Battle of Glass Tears including:
  (ⅰ)Dawn Song
  (ⅱ)Last Skirmish
  (ⅲ)Prince Rupert’s Lament
 (d)Big Top

オリジナル・メンバーはとうとうFRIPP,SINFIELDの2人だけになった。ここから完璧にFRIPPの個人ユニットとなる。前作から引き続きCOLLINS,HASKELLそしてKEITH TIPPETが参加し、ドラムスには元KINGDOM CUMのANDY McCULLOCHが参加する。そしてそのほかのミュージシャンは皆ジャズの人間である。この頃はジャズに大いに傾倒していたことがうかがえる。
しかしまたもやである。このレコーディングの後GORDON HASKELLとANDY McCULLOCHはグループを離れていく。そしてPETER SINFIELDとの関係も危ういものとなっていった。
このアルバムは、よりジャズ的でインプロビゼーションの度合いが高くなってともすれば無秩序な感じにさえ思えるような緊張感があるようだ。もっともアルバムはあくまで基本ラインであり、ライブで再現されることはないわけだから・・・・

【ISLANDS】 1971
ROBERT FRIPP - guitar,mellotron,Peter’s Pedal Harmonium & sundry implements.
MEL COLLINS - flute,bass flute,saxes & vocals
BOZ BARRELL - bass guitar,lead vocals & choreography
IAN WALLACE - drums,percussion & vocals
PETER SINFIELD - words,sounds & visions
featured players
KEITH TIPPET - piano
PAULINA LUCAS - soprano
ROBIN MILLER - oboe
MARK CHARIG - cornet
HARRY MILLER - string bass

produced by KING CRIMSON

1.FORMENTERA LADY
2.SAILOR’S TALE
3.THE LETTERS
4.LADIES OF THE ROAD
5.PRELUDE : SONG OF THE GULLS
6.ISLANDS

ジャズのアバンギャルド系から、ストリングスの美しいクラシック調の音までこのアルバムでは様々な変化があってとても興味深い。おそらくFRIPPの求める音楽の変化が如実に現れた端境期のようなアルバムなのであろう。この後現在に至るまでの{METAL CRIMSON}の片鱗もちらりと見えている。
メンバーはと言えば、ジャズメンの協力は相変わらずだが、またリズム隊が入れ替わる。ドラムは、セッションドラマーのIAN WALLACE,ベースは当初ヴォーカリストとして参加しFRIPPにベースを教授されてはれてベーシストとなったBOZ BARRELL。実際聴いてみると、かなり特訓したようだ。(際立ったものはないにしろ堅実なのだ)
ここでまた大事件が起こる。PETER SINFIELDが脱退したのである。そしてROBERT FRIPPは最初の解体をする。(残った3人IAN WALLACE,MEL COLLINS,BOZ BARRELLはALEXIS KORNER & SNAPEに参加する。)

【LARK’S TONGUES IN ASPIC】 1973
DAVID CROSS - violin,viola,mellotron
ROBERT FRIPP - guitar,mellotron & divices
JOHN WETTON - bass & vocals
BILL BRUFORD - drums
JAMIE MUIR - percussion & allsorts

produced by KING CRIMSON

1.LARK’S TONGUES IN ASPIC,PART ONE
2.BOOK OF SATURDAY
3.EXILES
4.EASY MONEY
5.THE TALKING DRUM
6.LARK’S TONGUES IN ASPIC,PART TWO

METAL CRIMSONの幕開けである。
解体の後のFRIPPは呪術と魔術に傾倒していくのだが、その影響がこの作品から先かなり反映されている。歌詞の面でこの後3作品で協力するRICHARD PALMER JAMESもかなり呪術的な詩を提供している。
メンバーは前作までのラインナップと決別して、まったく違う性格と音楽性を発揮することになる。YESからBILL BRUFORD、FAMILYからJOHN WETTON、新進気鋭の前衛音楽家のDAVID CROSS、そして変人のJAMIE MUIRである。
音そのものもこれまでに比べるとノイジーになり、即興性を重視するような曲作りによりいっそう拍車がかかっている。(作曲6割、即興4割だそうである)ヴォーカルのJOHNにいたっては自分が何を歌っているか解からなかったというから呪術的でかつ観念的な抽象詩であるようだ。
何かが起こるCRIMSON。ライブ中にMUIRがステージから転落するというアクシデントに見舞われた。その後4人で活動していたが、彼はとうとう戻ってこなかった。わずか半年の在籍であった。(その後彼はなぜか僧侶となる。)

【STARLESS AND BIBLE BLACK】 1974
DAVID CROSS - violin,viola,keyboards
ROBERT FRIPP - guitar,mellotron,devices
JOHN WETTON - bass & voice
WILLIAM BRUFORD - percussives

produced by KING CRIMSON

1.THE GREAT DECEIVER
2.LAMENT
3.WE’LL LET YOU KNOW
4.THE NIGHT WATCH
5.TRIO
6.THE MINCER
7.STARLESS AND BIBLE BLACK
8.FRACTURE

第5期はほとんどメンバーチェンジがない。おそらくはFRIPPがユニットとしての形作りを完成させ始めていたのかもしれない。また、CRIMSONの方向性をもはっきりと認識し純粋に発展させていく作業に従事できる環境が整ったと言えるのかもしれない。
そんな中で制作された第5期の2作目。前作で上々の評判を得てほぼ1年後にリリースされた。動と静が融合し、凝縮された楽曲が目白押しでこれぞCRIMSONの真骨頂ともいえるすばらしい出来栄えで、絶賛された前作よりは個人的にはこちらのほうが好きである。
しかし、ハードで常に緊張を求められる環境に耐えられなくなるのか、DAVID CROSSがこのアルバムを最後にグループを脱退する。

【RED】 1974
ROBERT FRIPP - guitar & mellotron
JOHN WETTON - bass & voice
WILLIAM BRUFORD - percussives
with thanks to:
DAVID CROSS - violin
MEL COLLINS - soprano saxophone
IAN McDONALD - alto saxophone
ROBIN MILLER - oboe
MARC CHARIG - cornet

produced by KING CRIMSON

1.RED
2.FALLEN ANGEL
3.ONE MORE RED NIGHTMARE
4.PROVIDENCE
5.STARLESS

"そして3人が残った”
正式メンバーは3人だけであるが、ゲスト参加のミュージシャンの顔ぶれを見ると、ここまでの6年間のベストメンバーによる作品のようにも思える。
IAN McDONALDは第1期のオリジナルメンバーでFRIPPとともにCRIMSONを形作ったと言っても過言ではない。DAVID CROSSは健康上の理由から脱退したが、回復しての参加となったようである。MEL COLLINS,ROBIN MILLER,MARC CHARIGの3人はIANとともに欠かせないホーンセクションである。
そんな中、集大成とも言える文字通り【ラストアルバム】にふさわしい顔ぶれではなかろうか。録音レベルもレッドゾーンぎりぎりのこれまでのアルバムよりも明らかに高めで録音されている。1曲目からいきなりのフルレンジである。しかしアルバムタイトルの【RED】はそういった意味ではなく、例によって呪術的、魔術的観点から錬金術の「黒を純粋な色、白に変えることの究極過程における”赤”」によるものだと言う。

さてこの項の最後に解散に至る理由をFRIPP自らの言葉を借りることとしよう。

「CRIMSONはその存在価値のすべてを失った。もう、バンドを続けるべきではない。これは突如として私の脳裏を貫いた事実であり、他に説明すべき理由はない。私としてはこの事実を伝えるだけである。」
「挑戦は終わった。解散には3つの理由がある。第一にこの決断は世情の忠実な反映であること。第二に私はかつてこのバンドが先進的な向上心を養う最良のものになり得ると考えていたが、現在ではそのような意味はすでにないと判断していること。そして第三にバンドはもはやエネルギーを失い、今後私にとって音楽はさしたる価値を持たなくなったこと。第一の点に関してもう少し付け加えるなら、今、世界は大きく変わろうとしている。古い世界から新しい世界へ。古い世界とは現代の哲学者が言うところの”恐竜文化”で、大きく、重く、知性に欠けるユニットのこと。世界の大国が誇るような力、あるいは多くのロード・マネージャーを抱え、小回りが利かず、バンドを維持していくためにさらに大きな組織を必要とするようなビッグ・グループなどがこれにあたる。生き残るために他を犠牲にせざるをえないバンパイヤみたいなものだ。では新しい世界の象徴は何か。それは小さく、独立していて、身軽でしかも知性に富んだユニットだ。この新しい世界への推移はすでに始まっている。すべてがいこうするのは1990年から1999年にかけてのことになるだろう。」
ROBERT FRIPP OCTOBER 5,1974


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