84年に"DISCIPLINE"CRIMSONに終止符を打ち、「CRIMSONで考えうるものはこれ以上は無い。」とまで言い切ったROBERT FRIPPであった。この先KING CRIMSONの復活は無いのではと思われていた矢先、90年代に入ってまもなくFRIPPの周りがあわただしくなり、復活が囁かれるようになった。91年に入って、FRIPPは正式に復活宣言をするのだが、人選に難航して最初の作品がリリースされるまで約3年の月日を費やすことになる。
ここで招集されたメンバーは、"DISCIPLINE"CRIMSONの3人、 ADRIAN BELEW,BILL BRUFORD,TONY LEVIN
と、 TREY GUNN
(WARR GUITAR, 元CRAFTY GUITARISTS のメンバーでFRIPPの愛弟子), PAT MASTELOTTO
(Ds,元Mr.MISTERでSYLVIAN & FRIPPにも参加)の6人となった。編成としてお解りかと思うが、各パートが2人ずつ存在する、 ダブル・トリオ
である。
尚、ここではライブ盤は取り上げないこととする。
復活第1弾は6曲入りのミニアルバムである。プロトタイプ的なまだつくりとしては不完全な感じのするものである。(あくまでこの後のフルアルバムを聴いてしまった後だからであるが。)「DISCIPLINE」CRIMSONの匂いを残しつつ「LARK’S TONGUE・・・」から「RED」に至るMETAL CRIMSONを踏襲しているような全く新しいアプローチでの曲作りがなされていて、リズムもより複雑になり、ダブルトリオの効果を遺憾なく発揮している。因みにこのアルバムは僅か4日間で録音されているのだ。
このアルバムを聴く限り、やはり前作はデモ的な側面を持って制作されたようである。全体的な印象として懐古的な感じが強い。随所に過去の作品のオマージュのようなフレーズが散りばめられているのが解る。アルバム全体の流れは極めて「太陽と戦慄」的である。
この活動を再開するまでに、過去の作品の権利を争う裁判が行われていたことを考えると、過去のCRIMSONを顧みる時間があったわけで、ベスト盤や、過去のライブのリマスターして発表されたものなどがあったことを踏まえてみても、今回のCRIMSONの方向性に影響したと考えても良いのではないだろうか。80年代のいわく付きの時を経て、CRIMSONのCRIMSONたる音楽性の再構築がここに、ある程度の結実を見たのではないだろうか。そのプロローグとして大変な秀作であろうと思う。
このアルバムには、 BILL BRUFORD
(方向性の違いから不参加との噂)と、 TONY LEVIN
(ご存知のように多忙なセッションマンである。)が参加していない。
前作「THRAK」から今作の発表まで約5年のスパンがあいている。それは紛れも無く多忙で、自己の活動をも平行して行っている各メンバーのスケジュールによるものであろう。そのために、Kcとしての活動が不完全であることから、その時々で集まることの出来るメンバーで構成した「ProjeKct」と冠された活動を展開する。4つの「ProjeKct」で活動を行っているがこれらは基本的に即興性を重視したものであるらしい。(「ProjeKct」についてはまた別の項でやることにします。)
このアルバムのメンバーは、ProjeKct 2のメンバーで構成されている。つまり、 ROBERT FRIPP
, ADRIAN BELEW
, TREY GUNN
, PAT MASTELOTTO
の4人で構成されている。現時点でFRIPPが最も重要視しているユニットであるという証であろう。V-ドラムをフィーチャーして試行錯誤を重ねつつ、ポリリズムとのグルーブの追求を重ねているようであり、さらにWARRギターとV-ドラムの相性というか融合性をも実験しているのかもしれない。
因みにV-ドラムというのは、シンバル類をもドラムパッドを用いて音を出そうとするシステムで、サスティンの極端に少ないほとんどデッドな音を作り出しているものだそうで、ハイハットですらこのパッドにあわせてハーフオープンでセッティングされているようである。
さらに進化を続けているということなのであろうが、新しい機材の導入には貪欲な様である。正体がわかるまでは一体何が鳴っているのか解らないのでこちらも追求する楽しみがありますが・・・・。
曲数が多く、フルアルバム並みであるが35分程度のれっきとしたミニアルバムである。2・5・8・9曲目がメインの4曲入りなのであるが、インタールードなどそれぞれにタイトルがついているためにこの曲数なのである。 タイトルの 「しょうがない SHOGANAI」 は、サブタイトルの 「HAPPY WITH WHAT YOU HAVE TO BE HAPPY WITH(今の幸せを幸せと思わなければならない)」 を日本語に訳すと何がいいかということで、 「しょうがない」 が適当だろうということらしいが、なんとも皮肉っぽい訳し方ではないだろうか。シンプルにするという意味で一言で訳すということと、言葉の響きが気に入ったらしい。 このアルバムに収められている曲は、レコーディングに先立って行われたいくつかのギグで披露された新曲の中から選ばれたもので、この後に出るフルアルバムのイントロダクションとしての役割であることは明白である。「VROOOM」=「THRAK」のときもそうであったが、試作段階に完成されたものをミニアルバムとして発表するというのは、CRIMSONならではの戦略というか最近の手法なのではないだろうか。
「信じる力」全く人を食ったアルバムタイトルである。ミニアルバムとして出された前作が「しょうがない」である。それとは全く逆な意味合いのタイトルをつけることによってこの2枚のアルバムが対を成して、Kcの新しいサウンドコンセプトである「nuovo metal」を具現化させたといえよう。
前作に引き続き、エンジニアにオルタナ系やインダストリアル系が得意なMACHINEの起用が興味をそそる。そしてその影響がそこかしこに見られて、特に「THE POWER TO BELIEVE」の4曲の雰囲気はそうだといえるかもしれない。(Ⅳだけは絡んでいないようである)