そよ風のように☆

そよ風のように☆

トミーズ・オリジナルストーリー



久々に、彼が仕事が早く終わったので家でマッタリしてたらケーブルテレビからオレンジ・レンジのプロモやってた。
「お、新曲?」
「この前言ってたやつだよ」

それをなんとなく見てたら、新曲の紹介なんだけどプロモのストーリーに釘付けになってしまった。

ユースケ・サンタマリアが幽霊の役で参加してたのだ。

始まりは、彼の死を彼が知ったところから始まる。

どんどん愛しい彼女が、悲しんでる姿をみてると妻も泣き出してしまった。


自分と重ねたようだ。
よしよしとまるで子供をなだめる様に頭をなでる。

「もし、俺が先に死んだらそこらへんに俺の写真を飾ってな」
そう言って台所のカウンターを指指した。

「う~。。。嫌だ」
そう言ってまたおお泣きする妻。
ヒクヒク肩を上下に動かしながら、更に泣きながら答えた。


「。。嫌だよ、私より先に死なないで」

ぽんぽん。また頭を軽く撫でる。
夫はゆっくりと優しい目をして、話し出した。

「俺は、お前が居ないときっと。。。
 へなちょこになるよ。。。」

この言葉を言った夫は、哀愁が漂ってた。

躊躇いながら。。

でも、まっすぐな瞳で妻をみる。

「喉の手術したとき、あの腫瘍は陽性だったの?」

「。。。。」
息が止まりそうだった。

ホントは知らない方がいいとお医者さんは思ったのか本人には告げてなかったのに、妻は知ってると思い込んでつい先日口を滑らせてしまったのだ。


曖昧な答え方をして、話をそらした。

一瞬悲しそうな瞳をした夫が間をおいて話し出した。
それは、何かを覚悟したような強い口調で。

「一秒でもおまえより長く生きるな。
 それでも、おまえより先に死んだら両親頼むわ
 これが、俺の遺言ね。」

「。。。うん。」


ぐしゃぐしゃな泣き顔に夫は、笑い出した。

「とりあえず、俺生きてんだからさ」

そうなんだけど、それでも想像すると悲しくて涙が止まらなかったんだ。

分かってる。大事にするよ。






二年後

彼は、云ってしまった。


原因は、喉の腫瘍がまた再発したのだ。

気づいたときには、広まってて手の施しようが無かった。

私は今でも、あのあなたの最後の遺言を守れてるでしょうか?

大好きなあなたが居なくなって、
気づいたことがあるの。

あなたは、あのときのオレンジ・レンジのプロモのユウスケさんみたいに
今も私を見守ってくれてるんでしょう?

私が悲しくなったときは、また頭を撫でてるんでしょう?
ちゃんと頑張って生きろって。

最後にあなたにいえなかった言葉

傍に居れて、私は幸せでした。


そして今もカウンターの写真からあなたは見ててくれる。

「いってきまーす」

今日の空はあなたが好きな青空で、あの時と同じ金木犀の匂いがします。

まるであなたが
「いってらっしゃい」

って言ってくれてる様に。









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