そよ風のように☆

そよ風のように☆

君に恋した夏(10話)


覚えてなかった。

気付いた時には、お馴染みのAobの前だった。


『マスター、今夜は飲ませて!』
困った顔のマスターは、
『悠一君から飲ませるなって言われてるんだけどね』
『いいのっ!!』とわざとらしく怒ってみせた私に、悪戯っ子のようなウインクし、カクテルを作り出すマスター。

『姫の頼みなら断れないね』
『そうこなくっちゃっ。』二人して笑い声をあげた。
『今日は珍しく気合い入ってるね、デートだった?』冷めた目でマスターを見る。

『珍しくは余計よ。マスターまで孫にも衣装なんて言わないでしょうね』

勘のいいマスターは、
『悠一君と、デートだった?』
ニヤニヤしながら聞いてきた。

『違うよ。いつものお礼に奢れって言うから』

ふて腐れ顔の私はカウンターテーブルを見つめる。
『ここだけの話、悠一君は美華ちゃんの事好きだと思うんだよね』

悠ちゃんを好きになれたら…幸せになれたかな、私は。

『マスター、悠ちゃんとは、ただの腐れ縁だよ。』

今日は、どんなに飲んでも酔えなかった。

一時間もしないうちに、
珍しくタクシーを拾って帰った。
時刻は、22時5分を指していた。


悠ちゃんが言った事は、避けようとしていた事。

本当は、気付いてる。

でも、久しぶりにあったけど、あの人が気になってしまう。

いつか私を見てくれないかと、ロングからショートにした事もあった。

あの子の代わりになれるわけないのに…。


あなたは今何してる?

あなたは…

ショートがやけに似合う目の大きなあの子が忘れられないのね。

あなたは…幸せですか?




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