自然の狩人

自然の狩人

『真理子』(16)



空白の時間を埋めていた、彼への思いが

今は日常のすべてを占める位に

メールを送って、返事を心待ちに 直にレスが無いと

落ち着かなかった

両親が帰宅前に、家電(自宅の電話)で 声を聞いた

声を聞くと、落ち着けた なんでも無い事でも

楽しいから、笑えた 声変わりしたのに張のある声は

耳からは入って、心に滲みて 

話の内容なんか、どうでも良くて 彼の声を

聞くのが、聞きたい為の電話ー

ー校門から暫らく行くと曲がり角の 自販機の前で彼は待っていた

クラブの練習が無い時は、自転車を彼が引いてくれて

自転車を挟むように並んで歩いた

手を繋ぎたいのに、自転車が邪魔 『疲れない??』

『自転車』 『私が持つよ』真理子が聞くと

「平気だよ」「腕はテニスで鍛えてる」 「あははー」

と笑う、笑った顔も好きだ 

真理子の家まで、歩くと大変な距離なのに 歩いても疲れない

二人の家の丁度、中間位に ブランコと鉄棒と滑り台、そしてベンチ。

在り来たりの 公園だ 

いつも古ぼけた、ベンチに座ってる人はいない

そこまで来ると 別れの時が来る 

ベンチに並んで腰を下ろして 

どちらかとも無く、手を繋ぐ待つていたかのように

幼い子を遊ばせている、若いママがいる

話す言葉も無く、二人は視線を注いで

幼子を連れて夕食の買い物帰りに寄ったのだろう

自転車のカゴに、スパーの袋が詰まれて

母親がブランコに座って、足を地面につけたまま

ブランコをゆらして 幼子を膝に載せて

母親の膝の上を嫌がり 、母親が地面に降ろすと

ヨタヨタと歩き初めて 少し歩くと障害物も無いのに

顔から地面に倒れた 母親は駆け寄り抱き起こす

口に砂が沢山ついている 自転車まで抱いたまま連れて行き

バツクからポケット・ティツシュを取り出し

懸命に拭いて、幼子は声を張り上げて泣く

ベンチの二人の方を観て 母親は少し照れくさそうな薄笑い

を送った。 泣き止むと公園を出て行った

真理子は彼と目を合わせて、微笑み、少し笑った

目を細めて少し声を出して笑う、横顔に

胸が詰まるような 愛おしさを感じた

二人だけになつた公園、繋いだままの手は

少し汗ばんでいる

真理子は 彼に甘えるように肩に頭を寄せた

其の時真理子は 一瞬思い出していた 「そう、あの光景」

又も「夢に出てきた光景だ」

真理子はまだ、異性とキスの経験はしていない

真理子は、待っている

彼がしてくれるのを。。


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