自然の狩人

自然の狩人

白衣の下顔半分の微笑み「創作物語4-7



今まで何人かの男性経験があつたが

拓也はまったく、今までの男と違っていた。

父親や兄、そう家族のような、それでいて

異性、男を感じさせてくれている

真理子にとつて今、一番大切な存在になつていた。


突然の理不尽な事故に遭う 

寸前まで

真理子の身と心は満たされていたのだから

真理子は過去の男性経験から学び取っていた

容姿や経済力だけで

男を好きになつて、ズルズルと蔦の絡まるような

男と女の関係を続ける事は

真理子自身に取って無益だと

百歩譲つて有益だつたと感じる処があると

すれば

真理子が身を許しセックスを交わした後に

男は、男の本性、いいや性格とでも言おうか

そんなものが現れ始め

肉体の快楽とは別の次元の悩みや不安を

男から与えられた

勿論真理子自身も相手の男に真理子が

与えられたものに、近いものを与えていたかも

しれないのだが
真理子は緩やかな坂を下って海岸道路に出てタクシーを

拾った。行く先は拓也の家、家の前で止まるとタクシー

の運転手に千円を渡すとお釣の小銭を渡された。

もう薄暗くなつた玄関ポーチに灯りは燈されていない

二台車が並んで入るスペースに真理子のソアラがあつた

もう一台の車は今頃事故現場からレッカーに引かれ

何処かに、もう乗主のない廃車なることだろう

拓也から託されている家の鍵を使う事も無く

愛車の運転席に座り込み 溜息とも嘆きともつかない

「ふぅーっ」と息を吐いた。

タクシーに乗って直に、拓也の携帯に電話を入れたが

無愛想なアナウンスが返るだけだつた

今頃は病院なのだから,当然なのだが

近くに身寄りのいない拓也の事が心配で心を覆っていた。


真理子が拓也の家に行くようになつてから

一番身近な唯一の親族の叔母が拓也の身の回りの

世話をする格好で同居していたが

真理子と拓也に気を利かせたのか 東京にある

自宅に戻って行つた。

海岸道路を車で走らせる、丁度前方の江の島に

オレンジの夕日が沈みかけ始めている

湘南の景色の中でも、この景色は特に好きだ。

だからこそ。この地に住もうと決め

マンションも探し そして拓也とも出会えた。

その美しい景色も

今の真利子の心には一枚の紙の風景画

のように、虚しく映っていた。

嗚呼、早く拓也の元気な姿と

声が聞きたい。

その心の叫びに答えるかのように

波音が「ドドーッ」「ドドーッ」と

響いていた。







地下の駐車場に車を入れると、エレベータの最上階のボタンを押した。

部屋に着くと一気に疲れが溢れ出た。ベツドに仰向けになつて寝転んだ

突然の事故の疲れと今までの生活の疲れが重なるように

身体も重く感じていた。

懸命に頑張って身体一つで貯めた二千万円と




頑張った真理子に突然のご褒美のような偶然に買った

宝くじの賞金が一億 突然と偶然のご褒美が

風俗の世界に踏み込む前に、起きていたら、、、、




三千万円を越えるマンションは28歳で独身には贅沢かもし

れない



バブルが弾ける前の価格は五千万を越える価格だと不動産屋

が教えてくれた。

これから具体的に実行する為の資金と寝床は確保出来ている

真理子の家族、そう父や母をそして真理子自身の

悩みや苦悩の原因になつた。男を探す為に

拓也はこのマンシヨンを知っているが、この一年間

一度も招き入れてはいない

寝たままの姿勢でサイドティブルに手を伸ばして

重ねて置かれた、メンソールのタバコと使い捨ての

ライターを取り、口に運びながら火をつけ

一度吸い込むと起き上がりざまに、「フーッ」と

煙を吐いた。

二三度吸つたタバコを灰皿に押し消すと

其のまま、浴室に向かい常時沸いている広めの湯に

手足を伸ばした。

目的を果す為に、贅沢は出来なかったが

身体が商売なので、健康とスタイル維持には特に

気を使ってきた。

シャワーを威勢良く出すと、セミロングの髪に当てる

少し高めの温度の湯が頭の芯から伝わり

身体全体が柔らかになつて行くようだ

シヤンプーの泡が肩から、胸 そして下腹部を

流れ 綺麗に刈り込まれた恥毛の跡を辿って

立ちながら小便をしたように

いいや、葉の上に雨水がたまって流れ落ちるように

パステルカラーのタイルに落ちていった。

真理子はボーデイシヤンプ-をつけて身体を洗いながら

想つた。いつたい何人の男が

男根を突き立て、尻や胸や身体に触れてきたのだろうか

シヤンプーを洗い流して、浴室の曇りガラスのドアーを

開けると、微かにベツドルームに置いた

携帯が鳴っている気配を感じた。


著自然の狩人


素肌にタオル地のバスローブをつけ、髪に薄地のタオルを巻いて
ベツドの横のサイドティブルの携帯を開くと

着信歴に拓也の番号が表示された。リダイヤルをするが

応答がなかつた。「もう少し早く、風呂から上がっていれば

声が聞けたのに」「もう一度かけてくるかも知れない」

と 姿見の鏡の前の椅子に腰を降ろすと、ドライヤーで髪

をブローし始めた。

湿気の抜けた髪に、ブラシを入れていると

携帯がなつた。間違いなく拓也からだ

真理子の持つ携帯の番号を知っているのは拓也だけなのだから

携帯を耳に当てると、聞き慣れている拓也の声が

「真理子は無傷なんだね?」と

「いまお風呂に入つて身体全体を見たけど、

何処にもアザや傷もないの、」

「そうね、少し腰が凝るように重いの」と答えた。

「一瞬ぶつけられた時は、脳震盪を起して、二度目の衝撃

で胸を強く打撲したようだょ」

緊急の検査の結果脳は異常がなかつたようなんだ」

今風邪を引いて高熱が出たような。フラフラする状態

だけど歩けるから 病院の玄関から電話しているんだ」

「今日は病院に仮入院つてこと、明日から細々と精密検査を

するって医師が言ついたから」

「真理子心配ないから、」ね

「寝巻とか 洗面用具もレンタルがあるそうだから」

「お見舞いは来なくていいからね」

「ふふ、ーだつて毎日検査漬けになるらしいから」

「退院したらゆっくり逢おうね、」そう、退院祝いを

真理子の部屋でして欲しいー(笑)」

電話から 拓也の小さな笑い声が聞こえて来たことで

真理子の気持ちは晴れやかに和んだ

そして答えた。

「そう、いいわょ」

「早く退院出来るといいょね」

「じゃー又こっちから電話するから」と拓也の電話が

切れた。

拓也から電話は嬉しかった,きっと直にかけてきてくれる

そして、真理子の事を心配してくれているに違いないと

心で思っていたから

それが、電話で確認出来た事

真理子の希望、そう欲しかった物を

二つとも今、叶えられた事を

実感出来た。

マンションと恋人

後一つ残された、怨念や復讐心に似た

自身の心の中に焼きついて離れない

傷のような物を

解決する為に

どんなに長い時間がかかろうと

追い続けようと

思っていた。














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