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戸口に露の降りるまで
わく星学校通信掲載2000年頃・・・親の
いまわく星通信を創刊号から最新号まで読み返しています。わく星学校が今年10周年をむかえ、その記念事業としてわく星通信を中心に記念出版(?)を企てているからです。通信のほとんどは敬子さんの文で埋まっています。私が拙文を何編か載せてもらったのは、もう3~4年前のことです。久しぶりの機会で書きたいことはたくさんあるけれど、親の会の代表として、「わく星学校親の会」の活動の一端を話題にしたいと思います。
わく星学校が10周年を迎えたということは、親の会にも10年の歴史があるということです。わく星学校創成期の親の会は、ボロボロだった建物を修理したり、備品を持ちよったり、敬子さんと協力し合って築き上げてこられたと聞いています。
私がわく星学校にたどりついたのが‘95年。わく星学校にとってもメンバーのタイプが変わった時期になります。不登校に対する受け止め方がこの10年間でも随分変わり、第3者の立場に立てば不登校と聞いても何も感じないほどありふれたことになってきました。しかし、相変らず制度的には何の保障もなく、なくさなければならない問題という社会の認識は変わらない。わく星学校の95.96年は厳しい年であったが、「教育の自由」や社会(行政)に対して働きかけようとする意識が芽生えたターニングポイントにもなった時期でした。おおぜいの人が傷つき、わく星に残ったものも去った人も、重い記憶を刻むことになりました。それから1年間は親の会も、貝の蓋をとじるように内省的な時期を過ごしたのでした。それが私の通信の記事にも顕れています。「自分探しの旅しませんか」「私が子どもをわく星で育てるということ」 自分を見つめなおすことに求道者のように熱心だったと思います。しかし私の中には、みんなの傷が癒えたら、必ず社会的な活動もやっていこうという思いがありました。昔の私だったら待てないほどの季節の巡りを軽々と超え、’98年新生親の会が誕生したのです。それまでは曖昧で組織としての位置づけはありませんでした。個人のつながりで心地よい関係が保たれることに安住していたのかもしれませんし、また親も自分の心の傷と戦い続けていたせいもあるでしょう。しかし新しい生き方を選んだ子どもの親として大人の責任を果したいという考えに立ちたいと思う親が増え、親の会の形も変わりました。たけのこ会という名の自助グループ活動。自治組織としての確認。そして「子どもの権利学習会」が始まったのです。
それが始まった頃の私の呼びかけ文を読んで下さい
子どもの権利学習会
この会は、「学校」に行かないことを「選んだ」子どもたちの育ちをサポートする大人として、子どもの教育権を保障する為の社会的な知識とセンスを学ぶ事、行動する事を目的としています。
最初の集まりで皆さんが、子どもたちの権利をきちんと主張したいとの意思を示され嬉しく思いました。又、同時に「小さな事からこつこつと実現しよう」という方針も合意しました。
(中略)
ゆとりをなくさないでつづけていきたいと思います。というのも、私は、子どもが育つ環境という事を考えた時、「親」も大きな環境因子だと思うのです…略…何よりも自己肯定の上にたって積極的に人生に立ち向かい、「生きてる事は楽しい。大人になるのは素敵だ。」という事をメッセージしたいと思っています。
だから、「だめならまたやってみよう」とおもえる余裕を残して、こつこつやっていきましょう。
1998年 6月21日
学習会は「子どもの権利条約」についてオルタナティヴレポート集「子ども期の喪失」読書。講演;「子どもの権利条約」を私達はどう生かすか(講師:岩佐嘉彦弁護士)。憲法・教育基本法・学校教育法を読み解く。少年法。「超教育」ダニエル・グリンズバーグ著。日本にすむ外国籍の子ども達の教育。などを約1年くらいした後、参加者2人というさみしい状況になったことと、動物占いにいうところのペガサスの私の罪悪感なしに「どっかいっちゃう」癖で休みになっていました。でもまた2000年1月から再開しました。『不十分でも、自分達で学んでいくという姿勢を持ち続けたい。又この数年間感じてきた事として、「学校へ行かない事を選んだ」という尊厳を持つ子どもを護る法律や制度はないし、そういう事を研究している専門家も少ない。それなら力量不足は承知の上で、やってみたいじゃありませんか。てなことになりまして、今年も続けていく事にしました。』(2,000・1・27、「子どもの権利学習会リポート」より)
専門家という言葉を使う時、私の中には複雑な気分が沸き上がります。医師や弁護士やいろんな学問分野での学者。そういう人々の研鑚と知識には心底敬意を表するものではあるけれど、それを全知全能と勘違いしている面が専門家の方にも、そしてそれ以上に私達の方にあるのではないでしょうか。子どもが「学校に行けなくなって」なんとかしてくれる人はいないのかといらいらと専門家を探した私です。今になったら恥かしいことです。困ったことがあったらハウ ツゥ本を探し、都合の悪い制度に行き当たったら誰が決めたんだともんくをいうだけ。自分の観じ方に自信を持っていいということを教えられていなかったのだと思います。自分に解決能力があるんだということも知らないでいました。それは私の子ども達にも共通する弱点になっています。何かオカシイと思ったらその観じ方を信じて、情報を集め、自分で考え、必要な援助を求め、考えを深め、自ら解決方法を決定していく。そういう学び方を子ども達に希望するようになって、私も自分のしたいことを躊躇せずに行動できるようになりました。はずかしがりだったり、めんどくさがりだったりするのは相変わらずですが。
そういう中で政治にも無関心でいてはいけないと思うようになりました。特に教育問題に関心を持つようになって、明治時代の学校制度の始まりそのものが、富国強兵・殖産興業の国策遂行の手段であったこと、戦後の教育改革の方向にもかかわらず、時代の要請に応じるかたちでの国策遂行装置の役割を担っていたことに大きな不愉快を感じてきました。本来は、人類の基本的権利である教育を国家や公の利益と絡めてしか考えないこの国にうんざりしています。
教育基本法の改正(改悪?)は、自民党の最右翼の議員にとっては戦前の天皇中心の体制の実現の足掛かりとして重要なことなのでしょう。私が危ないと思うずっと以前から内部では話題になっていたと思います。小渕前首相が平凡なよい人の振りで私達を騙しながら、盗聴法。国旗・国歌法
などを次々成立していく中で、いよいよ教育をその関連で変えていく必要があったのです。国策遂行は子どもの教育からです。戦時中の子ども達の逸話、文化大革命時の紅衛兵、少年兵達の冷徹な戦争遂行能力。
……私の考え過ぎならいいのですが。私は次に来るのは憲法改正・徴兵制ではないのかと危惧しています。教育基本法の改正に反対するだけでもいいのかもしれないけれど、それでは、単に55年GIORO~70年代の教育闘争のように文部省・自民党対教職員組合・野党の対決という構図にされて、「国民の大多数は無関心」という(ほんとはみんな考えていると思うんだけど)状況を作られたくない。作るのはマスコミだったりするけど…・。だから自分の立場で真剣に意見を作って、この論議に主体的に関わっていきたいのです。そういう思いから再開した「子どもの権利学習会」では教育基本法改正論議そのものを考えることにしたのです。
以下は、わく星内部向けの「子どもの権利学習会」のリポートから抜粋したものです。
2月24日の報告
テーマ;教育基本法の改正論議を探る。(誰が、どんな風に、なにを目論んで、改正しようというのか、反対意見は、……私達が改正するとしたらどうする?)
インターネットや新聞から手に入れた情報をアットランダムに読んだ。はっきり言ってよく分からない。しかし、2月18日には中曽根文相が中央教育審議会に教育改革のあり方について諮問する事を正式に表明し、自自公合意に基づく「教育改革国民会議」も小渕首相が発足させた。戦後教育の抜本的な点検と位置づけ。教育改革と教育基本法の見直しが正式に始まった。政争の具にされないようにしっかり見ていきたいけれど、・・…(略)
(インターネットから拾った言説の一部)
改定論者の中に「個を育てる」という意識ががあるのかどうかが疑問なのです。対処療法にしかすぎない事項を「教育の基本」においてしまう事は危険を感じてしまう。
自民党の小野晋也衆議院議員「個人の自由、尊厳にばかり焦点を当てた今の教育基本法は日本人の心にあわない」と指摘。「日本の歴史・伝統を土台として日本人が主体性を持って、独自の教育体制を作り上げなければならない」と主張した。
今回の教課審・学習指導要領が、これまで財界の意向をくんでうちだされてきた「新学力観」「生きる力」「個性尊重」の名による能力主義の徹底、“棲みわけ”に加え、「選択」「中高一貫」などの複線教育を具体化し、そのうえに「総合的な学習の時間」の創設で、すべての学校に財界の期待する“生きる力”に添った“特色ある学校づくり”を強要し、学区域の自由化・競争原理の導入にも備えていると指摘し、このような「教育改革」は人格の完成をめざす教育ではなく、人間差別・優勝劣敗の思想を植えつける教育だと厳しく糾弾しました。また、日の丸・君が代、成績率・新勤評などの攻撃はこのような反動的、軍国主義的教育に教職員をかりたてるムチ以外の何ものでもないと述べ、憲法・教育基本法に基づく教育を国民とともに進める決意を表明しました。
ともかく教育基本法の改定を阻止しようとする人たちがあり、いわゆる忠君愛国的な考えから改定したい人たちあり、経済的に常に発展する事が日本の至上命題だと考える財界や官僚達の方法論としての教育改革。ほんとに議論は始まった。始まった以上は、後で「え~しらなんだ」と言わなくてもいいようにしましょう。…略
3月16日の報告
テーマ;教育基本法の成立と意義(以下の本を中心に学習・内容は長いので省略)
「教育基本法・歴史と研究」川合 章・室井 力編 新日本出版社
「教育法と教育行政の展開」室井 修著 法律文化社
リポート2でも書きましたが、忠君愛国の時代をイメージしているのかどうかはよく分からないが、縦に通る道徳感が日本の現状を改善してくれるのかもしれないと考える、または誘導される人たちがいる。経済の発展・科学技術の向上が国家の豊かさだと考えている財界人や経KANN 僚がいる。彼らにとって教育が国民を誘導する手段。つまり国策遂行の為に有効に機能することを知っているのだ。しかし私達は、それぞれの人が自己の価値観において行動し、生きていくことを肯定したいと考えている。バラバラの価値観を持つ人間がお互い通じ合いながら生きていく。その為に最低のエチケットとして法律があり、国際的には条約や規約があるのだと思う。各論的なことを基本法には盛り込まない方がいいという考え方もある。それはそうだろうとも思う。ただ50年前の基本法がその時代に影響されたものであることは確かであると思う。見直しをする限りは「学校へ行かない」子どもの能力の最大限の発達(子どもの権利条約)を可能にする教育機会(チャンス)の選択を認めるような方向にしたい。また優秀な・特異な才能を持つ子どもの能力が最大限に伸ばされるチャンスの設定も厭わない。リーダーを育てる教育もあっていい。というような話もした。
4月27日の報告
テーマ 「教基法の条文を考える。-私達の改正案。その1回(第3条を中心に)」
教基法第3条
(教育の機会均等)
1 すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであって、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位または門地によって、教育上差別されない。
2 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学困難なものに対して奨学の方法を講じなければならなない。
この条文を読んで最初に気になるのは、「その能力に応ずる教育」という文言だ。
これをどう解釈するかということについては、文献を引用すると
教育は一人一人の子どもの能力を最大限に伸ばしうるものでなければならないという発達の視点にたつなら「能力」に応じてはその「ひとしく教育を受ける権利」を充足するための内容をなしているのであって,いいかえれば一人一人の発達要求や必要に応じて教育・学習を社会的に保障していくという意味であって、決して「能力に応じる」制限=差別であってはならない。
とある。
しかし現実には、胎児の段階から差別・疎外する現代の社会・政治体制の中にあって、子どもの発達を固定的に運命的なものとしてとらえ、専ら「能力・適正に応じた教育」という考え方ですすめてきた国の差別・選別の教育がおこなわれている。
私達は当然、権利としての教育の保障の見地から「能力に応じる教育」を教育機会の実現を妨げる原因としてはならないと考える。
解釈がわれる「能力に応じる」という表現を変えてはどうか
統合教育をすすめるための根拠としての条文たりえるか
次に論議したのは、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位または門地によってという文言です
制定当時の時代背景を考えると、すべて国民は、ひとしくを強調する文章として理解できるが、国籍の如何に関わらず教育を受ける権利は基本的人権として保障されなければならないだろう。現状として外国人労働者の子ども達や帰化していない外国人登録されている在日の人たちの教育の権利は制度的に全く保障されていない。
私達が書き換えると
1 すべて国民は、ひとしく、個々人の発達要求や必要に応じた教育を受ける機会を与えられなければならないものであって、人種、国籍、信条、性別、社会的身分、経済的地位または門地によって、教育上差別されない。
2 国及び地方公共団体は、経済的理由によって修学困難なものに対して、奨学の方法を講じなければならない。
(能力があるにもかかわらず、を除いた。当時の時代的要請では経済的理由で進学できない学業優秀な子どもの奨学が目的だったのだろうが,ひとしく教育を受ける権利の保障の制度的方法と考えるなら、この文言は要らない)(後略)
終わりに
今また学習会は中休みにはいっています。選挙が終わって、結局森さんが続投になった。失言するような賢くない人と安心していてはいけないと思います。子どもは押さえつけてでも従わせることが教育と考えている人だから、真剣に考えて提言していかなければなりません。ともかくきちんとした形ができなくても文部省に送るつもりです。今の世の中を動かしているその他おおぜいの責任を果そうとする大人でありたい。子ども達に愛と平和を(笑われてもいいんだ。生きてる意味ってこれ意外にある?って最近、再び思うようになったの)残すために。
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