戸口に露の降りるまで

戸口に露の降りるまで

長男 T


思い出一つ増えた

オクラホマミキサーの懐かしい曲にのって、
体育祭とは思えない小さなフォークダンスの輪が揺れる。
ずっと先にいるあの子までまわるかしら

三年前には絶対学校で会っても眼を合せる事を禁止されていた私
二年前には「ともかく俺の親だと分かる事はするな。」と言われていた私。

「かったりぃ」と手を繋ごうとしない子の手を握って踊るやさしくパワフルなおばちゃんと化す
おばちゃん相手に世間話の出来る子には「こういうのも悪くないわね」
顔なじみの先生とは性格が踊りに出ているなあとにやにや
次ぎはあの子だ
パートナーチェンジ
私の出した右手をやさしくしっかり受け止めて次のポジション
てれもせず、拒否もせず
私をリードする
澄まして踊っている私達を親子と知っている人が
微笑んでいる

壊すべき親であった私をあなたはもう壊したのね
私は私のまま踊っていてもあなたを苦しめたりしないのね
あなたの律義でやさしい踊りはあなたのままですね

十八才のあなたと
学校生活の共通の思い出
あ・り・が・と



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