戸口に露の降りるまで

戸口に露の降りるまで

雑誌さらさー「メダカの学校はどこに」から






京都市左京区のフリースクール「わく星学校」からは、いつも明るく元気な笑い声が聞こえてきます。子どもたちが自然や芸術に親しみながら、“自分らしい”生き方を掴んでいくフリースクールの現場から、“メダカ”をはじめ自然の生き物たちとの交流で、 子どもたちがどのように成長したかを 報告していただきます。

◆案内人プロフィール
フリースクール「わく星学校」
代表 山下敬子さん(やました・けいこ)

13年間の教師生活を経て、「学校に子どもたちを合わせるのではなく、子どもたちに合わせた学校をつくりたい」と、娘2人を連れて渡米。1年間、アメリカのフリースクールを訪ね歩いて帰国した後、1990年4月、フリースクール「わく星学校」を設立。現在、7才から18才までの17名の子どもたちと7名のスタッフが、京都市左京区北白川の本校と岩倉にある山の家で、自主運営の学校生活を展開中。

メダカ探検隊、体当たり調査を展開
▼市内各所の川や側溝を調査する子どもたち


フリースクール『わく星学校』では、“何を学ぶか・誰に学ぶか・どのように学ぶか”は、子ども自身の「責任」と「選択」を尊重して決めています。それが、山登りだったり、野外料理だったり、コンピュータ学習であったり…。メダカも、そのうちのひとつ。メダカが大好きな子がいて、「メダカのこと調べてみたい!」という声があがり、インターネットを使っての情報収集から始めました。すると「京都市内のメダカ生息数0(未調査)」という報告を発見。子どもたちが「そんなはずはない」「ボク、いてるとこ知ってる!」と疑問を持ち、京都市内のメダカを探す調査が始まったのです。4日間かけて、市内17か所余りを巡り、まず目視でメダカの生存を確認した後、自作の調査用「せいろびん」を沈めて調査サンプルを収集しました。また、近所で農作業するおじさんや地元の子どもたちにも取材したり、ついには真っ裸で川に飛び込むなど、体当たりの調査が繰り広げられました。大人の大多数が「メダカは清流にいる」と考えがちですが、「メダカはきれいなとこにはおらん」と、子どもたちはメダカの居場所を体験的にわかっていて、メダカの種類もよく知っています。逆に子どもたちから教わることが多かったですね。

「めだかシンポジウム」にレポートを提出

▲岩倉の山の家につくられたビオトープ
この調査をまとめて、「第2回全国めだかシンポジウム」にレポートとして提出しました。「わく星学校」では、テストなどを使った大人の一方的な評価は行っていませんので、レポートについても評価されることを前提とせず、子どもたちの感じたまま、学んだままを、自分たちの方法でまとめました。イキイキした実感あふれるレポートでしたが、科学的・客観的な分析に欠けていたというのが、調査をまとめた子どもたちの反省点だったようです。メダカの生息調査で「三面張りの川がたいへん多かった」「外来種の魚が多く見つかった」といった調査結果を得ることにより、メダカの生息には農業や河川の開発が深く関わっている、と視野が広がったようです。頭に結論づけてから勉強するのではなく、手探りでも自分たちで体験しながら、メダカの生息状況を、ひいては自分たちの身近な環境問題を、実感として学べたと思います。

自然との調和の大切さを学んでほしい
▼最近はあまり見られなくなった
”タイコウチ”を発見

「わく星学校」では、メダカだけでなく、ツバメ調査、ひっつきむし調査、琵琶湖のタナゴ調査、野鳥の巣箱かけなど、さまざまな環境調査を行っています。昨年12月から今年3月にかけては、土を掘削して石を護岸に積み、底に泥を塗って木ぐいを設置した手作りのビオトープを整備。この調査研究を、ホームページや絵本づくり、劇などに発展させていく予定です。他にも、草木染や野草クッキング、野外コンサートなどを行う「親子で楽しむ環境教育フォーラム」を毎月1回第4日曜日の午前11時から行っています (参加自由)。
自然とのふれあいの中で、人間が便利な生活を追求することで、他の生き物たちに多大な迷惑をかけているか、そして自然との調和がいかに大切なことかを知ってほしい。そこから子どもたちが自分たちの未来を見つめ、将来の生き方を模索してくれたら、と考えています。















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