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アキレスと亀



北野映画は「HANA-BI」や「Dolls(ドールズ)」がそうだったように、暴力と死の誘惑をテーマにしている。この作品でも真知寿の父は倒産して芸者と心中し、義母は自殺、友達は事故死する。真知寿が描くことに執着するのは、アートの普遍性に死を超越する魅力を感じるからではないだろうか。しかしアートの評価は曖昧で基準がなく、画商に影響されながらも、へこたれずに描き続けるのがいい。中年の真知寿(ビートたけし)が妻(樋口可南子)や娘に犠牲を強いるエゴイズムがブラックでおもしろい。真知寿がバスタブの中に顔を突っ込むシーンでは、ぎりぎりまで追い込まれた人間の哀しさと滑稽さに笑ってしまった。

北野武監督がピカソ、ウォーホール、ポロック、バスキアの手法を真似た絵が登場するなど、こんなにたくさんの挿入画を自分で描いたことに驚く。彼の死生観を色濃く反映したこの作品は、アートに対するちょっと屈折した愛に満ちあふれている。



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