あたし。の中身。

あたし。の中身。

***

―大好きなおじいの話―


TVを見ていた。「大切な人が末期ガンになったら・・・」ってやつ。
うちのおじいちゃんもガンで亡くなった。もう4年も前だ。
自宅で家族、子供達、兄弟、孫に見守られて静かに息を引き取った。
小さい頃は手をつないで散歩したりしていただろうけど
もう久しく触ったことのないおじいちゃんの手は
昔、土木をやっていた人の手だとは思えないほど痩せていて骨と皮だけだった。
あたし。はその手を握り締め、ずっとずっと脈を診ていた。
ゆっくりと、でもまだ力強くドクッドクッと打っている命の声に
あたし。は寝ることを忘れ一晩中傍に居た。
しかし、別れの時はあっさりとやってきた。
朝方、急に脈が途切れ途切れになり、呼びかけにも何の返答もなくなった。
おじさんが言った「もう、あかんな」「まだ脈が!まだ打ってるよ!」
「そのまま気付かないくらいに薄くなる・・・」と。
あたし。はずっと確かめるように手を握っていた。
おじさんが言うように脈がほとんどわからないようになった手を
あたし。はいつまでも握っていたが「体を清めるから」と言って
あたし。たち孫は部屋を出された。
ガリガリに痩せた体やしんどい時は顔も見せてくれなかった。
あたし。はお世話したかったけどさせてくれなかった。
孫にはこんなとこ見せたくないと言っていたとおばあちゃんに聞いた。
カッコつけてる場合か!と思っていたけど、これもおじいちゃんの
あたし。ら孫に対する優しさだったんだと思う。

自分でも驚いたんだけど、病気を知らされた時と息を引き取った時と
火葬する前の顔を最後に見せてくれた時以外泣かなかったんだよね。あたし。
痛みから逃れられてよかったんだもん。もう痛くなくなったんだもんね。
でも会えなくて悲しいよ。話が出来ないのも悲しいよ。
怒ってくれないのも、喜んでくれないのも、、、ホントにホントに悲しいよ。。。

毎月お墓参りに行って話してるけど、聞いてくれているんだろうけど
もう一度「かぼりちゃ~ん」って言ってくれる声が聞きたいよ。


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