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魂の還る場所
ねこさんへ。
ひみつひみつ
ココには 不思議がいっぱい
たくさんのヒミツが詰まった 不思議な場所
この水の底をのぞいてごらんよ
何が見える?何が見える?
町外れには、変わり者の博士が住んでる…
っていうのは物語によくあること。
僕の町にも、そんな博士が住んでる。
太っちょで、丸いメガネをかけてて、真っ白い髪の毛とヒゲがどこで分かれてるのか判らなくて、そして…てっぺんは、ちょーっとお日様みたいにピカピカしてる頭の博士。
で、いっぱいのねこに囲まれた博士だ。
みんなは「ねこやしき博士」って呼んでるけど、誰も本当の名前を知らないし、何歳かも判らない。
父さんや母さんが子供の頃にはもう「ねこやしき博士だった」って言ってた。
そこに僕が向かったのは、夏休みのある日。
退屈で退屈で、石蹴りなんか始めちゃって、そのままずーーーっと蹴ってたら、
「・・・あ」
石は、植え込みの奥へ消えちゃったんだ。
ねこやしき博士のところへ。
・・・そのまま帰ろうと思ったんだ。
でも、何か気になった。
植え込みの下には、僕が通れそうな隙間が出来てて、何か中に入れそうだったんだ。
僕はねこみたいに、その道を通ってみた。
植え込みの隙間を抜けて、中に入って立ち上がった僕は、パンパンって手とか膝についた砂を落とした。
それから顔を上げて、ぐるりと見渡したら、大きく3歩進んだところに木の看板が立ててある。
何か書いてあるのが気になって近付いて見たら
【リンクフリー】
「何これ・・・?」
思わず呟いたら、
「リンクフリーじゃよ」
「うわぁぁぁ!!」
びっくりして後ろを見たら、真っ白なおじいさんが立っていた。
…てっぺんは白くなかったけど…。
「これはこれは、久しぶりのお客様じゃの」
おじいさんは僕のびっくりなんか気にしないで言った。
そうだ、この人が「ねこやしき博士」だ!
…でもいつの間に来たんだろう?
僕が来た時には誰も居なかったのに。
どこかで見てて、ダッシュで怒りに来たのかもしれない…。
僕はごめんなさいを言おうとして、ねこやしき博士を見た。
大きな大きなおなか位しか見えなかったけど。
でも、ねこやきし博士は歩き出してしまった。
「…あ、あの…」
「こっちじゃよ」
ずんずん前へ向かっていくから、急いで追いかけた。ちょっと走らないと追いつけないくらいで、僕はぜぇぜぇなったりして…。
ついていくのに必死で、いつのまにか下を向いてた僕は、何かにぼふん!と当たって止まった。
ねこやしき博士にぶつかったんだ。
「ご、ごめんなさい!」
謝った僕をねこやしき博士は見て、笑ってたけど。
「さぁ、どうぞ」
大きなドアが開いて、ねこやしき博士は入っていった。
さぁどうぞって言われても…。
僕はちょっと困ってしまった。
だって僕は一人だし…。
知らない人についてっちゃダメだって、父さんや母さんに言われてるし…。
すっごく悩んでたら。
「入らないの?」
どこからか声がした。
僕はびっくりして、周りを見てみた。
でも、誰もいない。
どこにも、誰もいない。
その時、僕の足に何かふかふかでやわらかいものが…
「うあぁ!!」
飛び跳ねちゃって見た足もとには、猫。
ミケ猫が僕を見上げていた。
僕を見て、「にゃあぁ」と鳴いた。
「なーんだ、ねこかぁ。おどかすなよ」
しゃがんで手を出したら、猫は近寄ってきた。
人差し指を鼻に近づけたから、においを嗅ぎに来て、そのまま手にすりすりしてきた。
そのまま背中も触ろうとしたんだけど、近くの柱にすり寄ったりして、僕は猫を追いかけてるうちに…
家の中に入っちゃってたんだ。
「うわわわわ!」
僕は外に出ようとしたんだけど、さっきの猫が僕の足もとにいた。
僕を見上げて「にゃあ」って。
「ようこそ、私の研究室へ」
一瞬、猫が言ったのかと思った。
でもそれは、ねこやしき博士の声だったんだ。
僕はパニック起こして、何が何だか解らなくって、でも何か…そうだ、勝手に入ってごめんなさいって言わなくちゃ!
「あ、あ、ああああの!!」
…でも、ねこやしき博士はまた歩いていってしまう。
僕は慌てて追いかけて、一緒に部屋に入っていった。
…そこは、何だか理科室みたいだった。
三角フラスコとか試験管とか…。
でも人体模型はなかった。
机の上には紙がいっぱいで、何が何だか解らない。
何かお兄ちゃんの机と一緒だ。
何処に何があるのか全然わからない。でもお兄ちゃんには解るんだって。ねこやしき博士もそうなのかな?
「まぁゆっくりすると良いよ」
博士が椅子を持ってきてくれた時、僕は大急ぎで言った。
「あ、あ、あ、あの!勝手に入っちゃってごめんなさい!!」
「あぁ、別に構わんよ」
僕が頭を下げようとした時には、ねこやしき博士の声がしてた。
「別に何か悪さしようとして入ってきたんじゃないんだからの」
そう言ってねこやしき博士は笑ってた。
「石蹴りしてたらたまたまうちに来て、面白そうだから入ってきたんじゃろ」
「えっっっっっ!?」
何で解ったんだろう???
やっぱり何処かで見てたのかな???
不思議で仕方なくて、部屋の中をキョロキョロしてしまう。何処かにカメラとかあって、いろんな所を見られるのかもしれないって思って。
そんな僕の前で、ねこやしき博士はいつの間にかビーカーを2つ持っていた。
「緑茶は好きかね?」
「あ、うん、好き…」
ねこやしき博士はビーカーを机の上に置いて、今度は急須を持ってきた。
とぽぽぽぽーって緑色…お茶の匂いがした。
「どうぞ」
…言いながら、ねこやしき博士がお茶を飲んだ。
僕も…何となく…飲んでしまった。
普通のお茶だった。
「…それに」
パニクってる僕に、ねこやしき博士は言った。
「ここは【リンクフリー】じゃからの」
あの看板にも書いてあった言葉だ。
「あの、『リンクフリー』って…?」
僕はもう1回訊いてみたけど、ねこやしき博士は何も答えてくれなかった。
けど、何かを差し出した。
カステラだ。
「まぁお茶請けに一つ」
ねこやしき博士は言いながら食べていた。
僕も、ありがとうといただきますを言って食べた。
一口食べたら…。
「…これ…ピーマンの味がする…」
うえーって顔になったけど、いっつも父さんや母さんに「残したらダメ!」って言われてるから、僕は頑張って飲み込んだ。
急いでお茶を飲んで、何とか落ち着いた。
「そうか、君はピーマンが嫌いか」
ねこやしき博士もお茶を飲んでる。
「え!?なんで!?」
僕はびっくりした。
何で解ったんだろう???
「それはじゃな」
ねこやしき博士は空っぽになった僕のビーカーにお茶を入れてくれた。
「これは『好き嫌い矯正カステラ』と言ってじゃな、嫌いなものの味になるんじゃ」
「・・・げッ!」
僕は思わず叫んじゃったよ。
嫌いなものの味のするカステラなんて!
「じゃ、にんじんがキライだったらにんじんの味がして、なすびがキライだったらなすびの味がするの!?」
「レバーが嫌いだったらレバーの味がするし、魚が嫌いだったら魚の味がするぞ」
「そんなカステラ、イヤだよ!!」
僕が叫ぶとねこやしき博士は「ふむ、画期的な発明だと思ったんじゃが…」って言いながら、ちょっと離れた棚の所に行って何かを持って戻ってきた。
頭の上に大きな「?」がいっぱい浮かんでいる僕に、ねこやしき博士は何かを渡した。
ひやっとしたそれは…学校で使ったことがある。乳鉢っていうのだ。
中に何か入ってる…。
「かえるチョコレートじゃよ」
「かえるチョコ?」
覗いてみたら、確かにかえるの形をした茶色いのがいっぱい入ってた。
かえるチョコレートって、ハリー・ポッターにも出てきたよね。
ねこやしき博士がひとつ取って食べた。
さっきのカステラがカステラだったから、僕は一応ケイカイして、においを嗅いでみる。
チョコレートの匂いがする。
ねこやしき博士へのフシンカンは消えなかったけど、今度はどんなのかなって気になって、わくわくした。
僕も、いただきますを言って、食べた。
口の中に入れて噛んだら。
…ケロ。
え!?
い、いま、「ケロ」って!?
「噛むとケロっと音がする、かえるチョコレートじゃよ」
ねこやしき博士がもう一つ食べた。
ケロッケロッケロッケロッ…
ポリポリとかじゃなくて、ケロケロって音がするかえるチョコレートだったんだ!
…なんか面白くなってきて、僕ももう一つ噛んでみた。
ケロケロケロケロ…。
「面白ーい!」
僕がかえるになったみたい!
面白くって、僕はケロケロかえるチョコレートを食べた。
ねこやしき博士は、…ねこやしき博士はカステラを食べてる…。
「ねこやしき博士にはキライなものってないの?」
ねこやしき博士のカステラはおいしそうに見えたから訊いてみた。
僕はさっきのピーマン味でもう食べたくなくなったのに…。
「ワシか?ワシにはないなぁ…」
ねこやしき博士は、ずずずー…ってお茶を飲んで、またカステラを食べた。
「ワシが君くらいの時はあったのかも知れんがね」
「ふーん…」
僕はケロケロとかえるチョコレートを食べてて、急に思い出した。
「そうだ!『リンクフリー』!」
さっきの言葉ってどんな意味なのか、僕はまだ教えて貰ってない。
何だか気になる言葉。
リンクフリーって何だろう?
「それはじゃな…」
ねこやしき博士はカステラを全部食べて、また机の方に歩いて行った。
机の上は何が何だか分からないくらい色んなものが乗ってて、ねこやしき博士が何かを動かすと、どさっって音がしたりした。
これじゃない、あれも違うって言ってたけど、かえるチョコレートがなくなる頃に「あー、これじゃこれじゃ」って、ねこやしき博士が戻ってきた。
「これが何か解るかね?」
ねこやしき博士が見せてくれたのは、
「棒。」
細長い棒だった。
うんていとか鉄棒から持ってきたみたいな棒だった。
「コレにはコレで、ちゃんとした意味がある棒なんじゃ」
ねこやしき博士は、あっはっはって笑って、棒を僕に渡した。
受け取ったけど何の棒か全然解らなくて、僕は指揮者みたいに振ってみた。
「それはな、『メートル原器』と言って、それの長さと同じだと1メートルということなんじゃ」
「1メートル?それ学校で習った!100センチってことなんだよね!」
腕を伸ばして、棒を横にしてみた。
「前にならえ」より、ちょっと大きい。
「そうそう。
それはパリの度量衡万国中央局に保存されているんじゃがな」
「ぱり?の、どりょう???」
ねこやしき博士が早口言葉を言ったみたいで、全然解らなかった。
僕の頭の上にはいっぱい「?」が浮かんでる。
ねこやしき博士は僕の手から棒を取ると、また机の方に歩いて行って、ぽいっと上に乗せた。
それから棚の方にも行って、また乳鉢を持ってきた。
「これはうちの冷凍庫に入っていたもの」
今度は、アイスクリーム。
一番好きなキャラメルクリームだ!
にこにこ笑って「さぁどうぞ」って。
ねこやしき博士はスプーンを2本持ってたけど、何処から出したのか分からない。
一緒に食べてるこのアイスも、ねこやしき博士の家の冷凍庫に入ってたって言った。
さっきのかえるチョコレートも棚から持ってきてたけど…。
「まぁ、『いつでも・どこからでも』ってことじゃな」
…僕にはやっぱり解らない。
また僕の頭にはいっぱいの「?」。
「いつでも、どこからでも、必要があれば来ても良いってことじゃ」
「いつでも?どこからでも?」
「そう」
ねこやしき博士はアイスクリームを一口食べて、ドアに近づいた。
僕はスプーンをくわえてねこやしき博士を見ていた。
「ここは、どこにでも繋がっていて、どこからでも来ることが出来る。
知りたいことがあれば知ることが出来る。
見たいものがあれば見ることが出来る。
一本の線で繋がった世界じゃからな」
ねこやしき博士がドアを開けると、そこには…凄い風と、真っ暗な中に、光がポツンポツン。
・・・星空みたい・・・。
僕の心臓はばくばくして、息をするのが苦しくなって…。
「…ねこやしき博士…これって…」
…これって…
・・・宇宙みた…い・・・?
ぱたん、ってドアが閉じた。
びっくりした僕から乳鉢が落ちそうになったけど、ねこやしき博士の手に乗っかった。
どきどきしてる僕に、時計を見たねこやしき博士が笑って言った。
「もうこんな時間じゃ」
頭をぽんぽんって大きな手がちょっとだけ叩いた。
「そろそろ帰らんと、父さん達が心配するぞ」
何だかふわふわしている僕は、どうやって外に出たんだろう?
あのドアを開けたら、廊下じゃない別のどこかに繋がってたはずなのに。
…ううん。来た時は廊下だったから…あれれ???
「いつでもおいで」
「にゃあぁ」
いつの間にか、あのミケ猫も居た。
「ここは、【リンクフリー】じゃよ」
ねこやしき博士は、白い包みをくれた。
僕は受け取って、家に向かって歩き出した。
もうちょっとで家に着く時、ねこやしき博士がくれた包みを覗いてみた。
中に入ってたのは、かえるチョコレート。
一つ食べてみた。
…ケロ。
かえるチョコレートは、やっぱりかえるチョコレートだったから。
明日になっても多分、これは夢じゃないんだ。
「ただいまー!!」
いつでも・どこからでも、遊びに行ける。
だって、【不思議】は【リンクフリー】だからね。
20021113 23:50up
…やぁーっと…やぁぁぁーーーーっと出来ました…
ねこさんだってば!さんへのキリ番プレゼントですー。(><
お待たせしました!!
キリ番プレゼントとしてキーワード(お題)を貰ったのは一体いつのことでしょう…お題を貰ってすぐに浮かんで、途中まではすいすい出来たのに、何かどんどん収拾がつかない事態に(><
ちなみに今回頂いていたキーワード(お題)をご紹介。
1・蛙とカステラ
2・霧とお茶漬け
3・里芋とアラバスター
4・イクラとチョコバナナ
5・メートル原器とキャラメルクリーム
・・・。
「そうだなあ、うんと困らせてやりたいなあ…(!)」
「この中から一つお願いします(笑)…ってことでいいのかな?
うわ~~~たのしみだあ~~(ニヤリ!)。」
・・・・・・。
ってことだったのですが…浮かんだ時は「残念でしたね、ねこさん、すぐ浮かんだもーん♪」って思ったんです(何せお題を見た瞬間に浮かんだくらい!)が…書き始めたら意外と手強かったです…。
こんな作品でもお気に召して頂けたら嬉しいっス…(T▽T
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