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さすらいの天才不良文学中年
運について考える
運は科学的か(前編)
運について、よく考えることがある。
おいらの好きな阿佐田哲也のエピソードに、阿佐田がわざと競馬に負けるシーンがある。
わざと負けて、心底嬉しそうにニンマリとするのだ。
しかし、明らかに負けるような負け方ではない。微妙に負けるのだが、負けるべくして負ける。負けるにも技術がいる。神様が「残念だったね」と云ってくれる負け方でなければならない。
阿佐田は、何時も勝ち続けることが出来ないということを本能的に知っていたのだ。
だから、負けるなら小さい負けにしたい。負けは、運を使わないからだ。それに反して、勝ちは運を使う。一回使うと、次の運は何時来るか分からない。
阿佐田の人生訓は「八勝七敗」である。
人生で十五戦全勝はありえない。十五戦全勝すると、どこかでひずみが出る。仕事で全勝すると家庭が火の地獄かも知れない。仕事で出世頭だとしても、それは失脚の始まりかも知れない。
山高ければ、谷深し。栄耀栄華を極めれば、その後に待っているのは没落しかない。
だから、阿佐田は好きな麻雀だけに運を使いたかったのである。彼は真の博打打ちである。作家なんぞに堕落したくない。麻雀で、博打打ちを目指したのである。
人生は八勝七敗。彼が麻雀で八勝したからには、負けの七敗はどこでしたのだろうか(続く)。
運は科学的か(後編)
阿佐田哲也のような運のプロの考えには遠く及ばないが、彼の考えは理に適っている。
神の与えてくれる運の数は分からぬが、皆平等に運を持っているとしよう。運は使ってしまえばなくなる。
たまたま乗った電車の場合を考えてみよう。混んでいたにもかかわらず、運良く、目の前の乗客が降車して座れるような場合がある。
運が良い。
しかし、運を使ったのである。運は一つ減ったのである。
しからば、どうするか。運を減らさないように努力するか。
おいらは思うのである。運を使わずに済む方法がある。それは過去の経験測から、どの時間帯であればどの車両が降車する人が多いというのが分かればよい。
そういう場合、あらかじめその時間帯のその車両に乗ればよい。座れる確率が高くなるからである。
もし座れても運が良かったからではない。座れるべくして座れたのである。運を使ったのではない。
ところが、そのように努力したとしても、意図せぬ他の場所で運を使うことになるかも知れない。人生は皮肉である。結局、運は神様しか差配出来ないのである。
だから、阿佐田哲也は考えたのだ。
運を使うのなら、自分が本当に使いたいところ、すなわち麻雀で使いたい。阿佐田哲也は、わざと他の場所で負けることにしたのだ。
運とは、かように難しい。
運は偏るか
最近気に掛かっていることに、金運がある。
前にも述べているが、おいらは運の総量は同じだという考えである(このブログの「フリーページ欄『運は科学的か』」参照)。
阿佐田哲也や嵐山光三郎が云うように、「人生は8勝7敗」なのである。大切なことは、どこで8勝して、どこで7敗するかが人生の要諦なのである。
全ての面で独り勝ちするというのは、あり得ないからである。
ところが、最近、「金運は偏る」ということをタクシーの運転手からではなかったかと思うのだが(すまぬ、誰からかを良く覚えていない)聞き、それがあながち嘘ではないと思うようになった。
金は、金のあるところに集まるのである。金のないところに集まる金は雲散霧消するのである。
一理ある。「金持ち喧嘩せず」とも云う。
現に、宝くじは金持ちに当たり易いようだ。そうすると幸運の神は不公平な神なのか?
しかし、おいらは考えるのである。
それは金運だけではないのか。やはり、ここで忘れてならないことは、運の総量という概念である。
金運以外にも家族運や仕事運、人生運などがある。金運が良いからと云って、その他の運まで良くなるかどうかは分からない。
そうでなければ、お天道さまはいないことになると思うのだが、読者諸兄よ、如何か…
運をどこで使うか
今更ではあるが、パソコンゲームの「ソリティア」にはまっている。
博打はシンプルな方ほど面白い、というのは当たっている。気分転換にはもってこいである。
最近の戦績は勝率29%を低迷していて、30%の壁がなかなか破れない。打率と同じである。3割の壁は大きい。
さて、何が云いたいのかということだが、このソリティアは運の要素がかなり強い。
たった1枚のカードが出て来たお陰で勝てるケースがあったり、2枚のカードの順番が逆になっているだけのために負けることがある。
勝ち負けが運に左右される部分が大きいのである。
そこで、こういう単純なカードゲームで「大事な運を簡単に使って良いか」ということが本日のテーマである。
おいらの敬愛する色川武大、嵐山光三郎諸氏は、運には総量があるという説を唱えられておられる。
そりゃそうだろ、運が無制限にあると思うほどおいらは馬鹿ではない。そうだとすると、こういうところで運を使うのは得策ではない。
しかし、こう云うゲームに限って、勝ちたいのだよねぇ~。ここが難しいところでもある。
熱くなってしまうのだ。「後、1枚」の心境で見境が無くなるのである。
いや、しかし、やはり冷静にならなければいけない。
冷静にならなければ、少々危ない手札でもエイヤァになってしまうのである。エイヤアの結果は勿論勝てるわけがない。だから、それを取り戻そうとして、また勝負に出てしまうのである。気付けば、16連敗などとなっている。昔の格言はよく云ったものだ。
「金持ち喧嘩せず」
貧乏人は失うものがないから、博打を打つのである。
さて、こういうときに一番いけないことは、負けが続いているときのゲームで「運を見逃す」ことである。運を見逃すと、運は戻って来てはくれない。
どんなささいなことでも運はついて回る。その運を大切にしなければいけない。逆に云うと、小さな運を大切にさえしていれば、大きな勝負のときに花が咲くと思うのである。
いや、小さな運も大切に出来ない輩に、勝利の女神が微笑むはずがないと云うべきか。
逃げ遅れ
災害が発生した場合に怖いのは、「出口に人が殺到して、押し倒される」。そういうイメージがあるが、実はそうではないらしい。
一番怖いのは、「逃げ遅れ」だという。
え、何じゃ、そりゃ。
人間には、「大したことはない」と決め付けてしまう心理がある。これは、「安心したい」という心理の裏返しでもあるという。
先進国で育った人間は「安全が普通」であり、危険察知能力に欠けるというのだ。したがって、気が付いたら、逃げ遅れたということになりかねないようだ。
実際、韓国の地下鉄車両で多数の死者を出した放火事件のときでも、火災が発生しているにもかかわらず、平然と新聞を読んでいる人の姿がビデオに残されている。
人間は予測を超えた事件が発生した場合、まず、頭の中が真っ白になる「フリーズ現象」が発生する。次に、そこから回復するために「大したことはない」と決め込んでしまうことが多いのだ。
ゴルゴ13を思い出す。ゴルゴは、直ちに逃げるだろう。おいらたちも常日頃「逃げ出すイメージ」を大切にしておかなければならない。
風呂で亡くなる
日垣隆氏の「偽善系」(文春文庫)を読んでいたら、人の運命ほど分からないものはないとして、次の事例が挙げられていた。
昭和60年8月12日、日航機が御巣鷹山に墜落し、520名もの尊い命が失われた。
実は、その便を予約しながら、たまたま知人と食事が長引いたため、件の飛行機に乗り損ねてしまい、新幹線で大阪に帰宅した男性がいた。
自宅に戻った彼は、ニュースで自分が乗るはずの飛行機が墜落したことを知って大いに驚き、助かったことに安堵した。妻も無事を喜び、祝杯をあげた。夜遅く風呂に入ったところ、転倒した。頭を強く打った。打ち所が悪く、救急車で運ばれた病院でその男性は死んだ。
実話だそうだ。
折角飛行機事故に遭わなかったのに、風呂で死ぬとは余程運が悪かったと思うだろう。しかし、風呂で死ぬ人は多い。
厚生労働省の「人口動態統計」によれば、毎年、風呂で転んで死ぬ人は3千人、風呂で溺れて死ぬ人も同じく3千人である。
これに対して、飛行機で死ぬ人は統計的には滅多にいないのである。
何が云いたいのか。
実は、風呂は危険なのである。
特に、ここのところ、寒い。寒くなると、脱衣所で血管が収縮し、一気に血圧が上がる。そこで、熱い風呂に入る。今度は逆に血管が膨張し、一気に血圧が下がる。そこで、溺れ死ぬ。これをヒートショックと呼ぶそうだ。気を付けなければならないのは、溺れ死ぬ9割以上が65歳以上の高齢者だそうである。
何も風呂で死ななくとも、と思っても、人に死に方は選べない。
ソリティア、3割打者となる
ソリティアでやっと勝率3割の水準に達した。
こんな単純なことでも、嬉しいのである。
前にもこのブログで書き込んだが、ソリティアは運の要素がかなり強い。
たった1枚のカードによって、勝ち負けが左右される。そこが、面白い。
実は、博打の真髄は「単純なものほど面白い」である。
タネを明かそう。
「勝つか負けるか、一瞬に決まる」
それが一番面白い博打である。だから、一瞬に勝ち負けが決まる「丁半博打」が、実は究極の刺激なのである。
戦国時代、明日、合戦というとき、人は何をしたのか。明日は死ぬかも知れないのである。そういうときに人は何をするのか。
答えは、人生で一番やりたいことをしたのである。
古来、男がしてきたことは、「ノム、ウツ、カウ」である。しかし、皆、打ったのだよねぇ。
そして、博打で勝った奴も負けた奴も、皆、戦場で一緒に死んで行ったのである(洋画でもあの「史上最大の作戦(The longest day)」に同じ様なシーンがある)。
閑話休題。
さて、単純な博打ほど運を使う。正確に云うと、勝ち負けはほとんど運である。
さすれば、こんな単純なカードゲーム「ソリティア」如きで「大事な運を簡単に使って良いか」と問われれば、さて、どうするか。
解答は、これも単純である。
「運を見過ごさなければ、大きな運を温存出来る」と信じたい。
ホントかなぁ。でも、運は大切にしなければ…。
(それでもソリティアで常時3割勝つことができる理由は、普遍的に勝つコツをおいらが見付けたからである。そのコツは、おっと、それを披露するのはマナー違反だから内緒、ナイショ…)
変えられる脳
煙草の依存性の強さは、酒の比ではない。
それはおいらが経験者であるからよく分かる。おいらは、34歳のときに煙草を止めた。それまでは名だたるヘビースモーカーであったのじゃよ。
ニコチンはある種の薬物である。
しかし、それだけ依存性の強い薬物であっても、脳の力だけで煙草を止められるという番組を国営放送で見た。
ここで解説が必要である。
「ためしてガッテン」という番組を先日何気なく見ていたら、禁煙補助薬を使って煙草を止める人のことを取り上げていたのだ。
しかし、それだけであれば何の変哲もない禁煙方法の紹介である。
この番組の真骨頂はそういうノウハウだけではなく、おいらたちが日頃疑問に思っているツボに言及してくれたのである。
何が云いたいのか。
禁煙補助薬の話しは別にして、「脳は変えることができる」というのである。
そうか、脳は変えることができるのだ。
煙草を止めることは難しいが、煙草を止めた後に「煙草を吸う以上に楽しいことがある」と考えれば、「脳がそれに呼応してくれる=変わる」というのだ。
なるほど、これはおいらの禁酒のノウハウにも当てはまることである。禁酒して楽しいことをおいらは山ほど発見している。無論、酒の楽しみも依然としてあるので、心配はご無用じゃがのぅ。
脳は変えることができる。大切なことは、これは「禁煙だけの話しではない」ということである。脳は柔軟なのだ。
そうだと分かると、これからの人生、また愉しみが増す。
ロバート・リンド
イギリスの随筆家、ロバート・リンドの箴言。
「この世で何が楽しいと言って、やらなければいけない仕事が山ほどあるのに、それをぐずぐず伸ばして、もう少し暖炉にあたっていよう、音楽を聞いていよう、と思うあの瞬間ほど楽しいものはない」
(「怠け者の怠けた考え」より)
この気持ちは、分かる。
こういう屈折した考えを理解できない人とは、あまりお友達になりたくない。
しかし、他方で、やらなければならない仕事をギリギリまで伸ばしながら、集中力を発揮してあっという間に成し遂げたときの達成感(充実感)も、これまた捨てたものではない。
話しは若干変わるが、見城徹氏が云う「憂鬱でなければ、仕事じゃない」という考えにも相通じるものがあるのではないのだろうか。
そう思うのは、ひょっとしておいらだけだったりして。
本日は、問題提言のみで終り。
不快感と攻撃性
中学生時代に教わったことで、未だに実行していることがある。「手紙を書いたら、一晩寝かせて置け」である。
文章を書くという作業は主観的である。畢竟、相手に非礼な文章となっている可能性がなくはない。そこで、翌朝、読み直すと冷静になり、つまり、客観的に物事を見ることができるので安心という理屈である。
しかし、最近はメールである。手紙などまず書かない。葉書は書くことが多いが、これもメールの様なものである。
何が云いたいのか。
3月24日付朝日新聞を読んでいたら面白い記事に出くわした。男女48人の大学生を対象にした、不快感と攻撃性に関する実験結果が掲載されていたのである(米科学誌「プロスワン誌」で発表。JST(科学技術振興機構)と名大による共同研究)。
かいつまんで述べると、相手の主張をけなした文章の最後に「すみません」と一言入れておくと、相手に不快感は残るが、攻撃性は増大しなかったというのである。これに対し、すみませんがないと、相手の不快感と攻撃性の両方が高まったとある。
要するに、一言謝っておけば、角が立たないという話しである。相手をけなすのは非礼だが、その場合でも、一言謝るというマナーを守れば、攻撃されることは少ないというのである。
なるほど、これは分かるような気がする。手紙を一晩寝かすというのは、この謝りを入れるようなものなのだろう。昔からの教えは間違っていないようだ。
そうするとメールの場合でも同様で、謝りのニュアンスをちりばめておけば、物事がスムーズに行くのかも知れんのぅ。
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