Akky my love

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仕事とあきあき



前年秋の椎間板ヘルニアの痛みもなくなり、春を迎えた。

春は大忙しの季節。

その頃私はある楽器店の教室推進課という部署で働いていた。
音楽教室と英語教室の運営スタッフ。

春は5月に開講するクラスの募集活動(体験レッスンでは司会進行)
新年度講師面談(講師面談の前には膨大な生徒カルテを熟読チェック)
初夏の楽器販売会に向けての営業活動。

治った腰も酷使して働いていた。

もともと仕事は大好きだ。
人と話すのが好き。生徒と話すのも、保護者の相談にのるのも、
講師の相談にのったり、教室スタッフを育成するのも、
自分には向いている仕事だと思っていた。

もちろんトラブルもたくさんあったし、
人間関係のトラブル修復役とされ、
気が付いたら恨まれ役にまわることもあった。
でも、楽しかった。

子どもがいる職場だから好きだった。
お年をめした方が「憧れの楽器を習いたい」と言って
照れくさそうに入会し、レッスンを始めていく姿が好きだった。

職場には子どもの歌声、ピアノの音、いろんな楽器の音があふれていた。

完成されていない音楽。
でも、そこには たくさんの想いがあふれていて、
ぎこちない演奏が私に元気をくれた。

子どもの発表会で、お腹から声を出して歌う姿が大好きだった。
発表会は忙しい一日で、私はスーツで走り回っていた。
出演者、お客様、音響・照明業者とのやりとり…。
でも、子どものステージには 何度でも感動できた。

一番思い出に残っているのは 「風になりたい」を熱唱する子どもの姿。
あの時は、舞台袖で みんなが 思わずステップ踏んで口ずさんだ。

なぜ この仕事を始めたか。
私は大学卒業後、学習塾に就職した。
正確には、学習塾も経営している会社に就職した。
志望部署は会社の中での教育研究所。
当時卒論を書いていた時参考にしてい教育雑誌を編集していた研究所だった。
面接では何度か研究所の編集長と会った。話をした。
卒論テーマや研究したいテーマの話。
とても話が合った。素敵な編集長だった。
でも、最後の面接でちょっと悲しそうな顔をしていたのが印象的だった。
内定通知をもらった時は嬉しかった。
あの編集長と一緒に仕事が出来ると思った。
しかし、4月、配属部署は学習塾になった。
経営のスリム化で、その年の3月に研究所は閉鎖された。
「やられた!」と思った。

でも、学習塾での仕事がスタートした。
楽しかった。
今でもあの時の生徒を愛しく思いだす。
それなのになぜ?といわれるかもしれないが、
1年間完全燃焼し、退職した。
あまりにも大好きな仕事すぎた。
教室経営の矛盾やゴタゴタ
(それに自分も社内恋愛やらでゴタゴタしちゃった!)
ここにいてはいけない、と思った。
退職。

しばらく 次の仕事をゆっくり探そうと思った。

ある日、たまたま立ち寄った楽器屋さんのピアノ売り場で
少女がピアノを弾いていた。
懐かしかった。

私の家はいつもピアノが聴こえる家だった。
姉が音大に通っていた。
私は小4で音楽専門の道はあきらめろと言われ
それまで毎日必死に練習したピアノを一切弾かなくなった。
意地っぱりな私が居た。
負けず嫌いな私が居た。
ピアノがダメなら勉強で見返してやる、と思っていた。
見返したと思っていた。
でも、ピアノが全然弾けなくなっていた。
大学時代、ちょっとだけバンドを組んだ。期間限定。
その時、ちょっとだけキーボードを弾いたけれどへたくそだった。
頼まれて、初めてのドラムも文字どうり
「初めてのドラム」という教則本を見ながら始めたけど
へたくそだった。
おまけに「腰痛を悪化させたのはドラム練習」と後に主治医に言われた。
でも、勝ち負けでなくみんなで作る音楽が楽しかった。
だから、腰壊しても、へたっぴな演奏披露しても
どこまでもおそまつでも 
どこまでも楽しかった。
でも、そのバンドはリーダー(?)が海外に行ってしまって
そのまんま。二度度演奏することはなくなった。

少女の演奏は、意地をはる前の私を思い出させた。

次働くなら、音楽だなと思った。
それはそれはなんとなく、の感情だった。

そして数日後、ある楽器店の仕事の募集を見つけた。偶然。

面接して合格してパートからスタートした。
あっという間に認められ、社員になり、
人を束ねる側になった。

楽しい仕事だったけれど、体がおかしくなっていた。

そして、2003年春。
腰痛の他に奇妙なめまいがした。

5月脳神経外科でCTの検査をした。
脳に異常はなかった。

以前から気になっていた。
腰痛は椎間板ヘルニアからきているだけなのか?
学生時代、卵巣のうしゅ の疑いがあると言われたことがある。

神経系が異常ないなら婦人科か…と思った。









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