記憶力を強くする

「記憶力を強くする」を読みました。 殿堂入り!

<著者>
池谷裕二

<内容>
「海馬」で有名な脳科学者池谷裕二さんが記憶の仕組みと効果的な記憶法を説いた本。

1. 記憶のメカニズムの解説

まずは記憶のメカニズムについて丁寧に解説している。
神経細胞ニューロンから伸びる軸索と樹状突起、隣の神経細胞との接続、情報の伝達方法など。 

非常に簡単に言えば、記憶とはニューロンのネットワークの中に情報の通りのいいパターンを作り上げ、それが残ること。

人間は生まれてからずっと数が減って行く。
まず、脳の潜在能力と実際に使われている容量の比較から、脳細胞の減少は脳の力にはなんの影響もないことを解説している。

だから年を取って記憶力が衰えるのではなく、子供の時のような初めての感動がないから神経に伝わる電流の量が少なく、よって回路が形成されにくいだけ。

また、そのことだけを記憶する「意味記憶」は若いときに能力が高くある年齢を過ぎると落ちてしまう。
その反対に一緒に起きたことや関連性のあることを一緒に覚える「エピソード記憶」は年を取るに従って発達していく。

その上で使えば使うほど増えて行く脳細胞があることを明らかにする。 それは海馬。
糸井重里との対談を収録した「海馬」でも書かれているが、記憶は側頭葉から海馬を経由してもう一度側頭葉に戻ることで形成される。

睡眠は海馬が記憶を整理する重要なプロセス。

記憶の精緻なシステムは再生(思い出すこと)のシステムが効率的であることに結びついている。


2. 効率的な記憶術

大人になると発達する「エピソード記憶」を利用して、「物事の全体を理解してから記憶する」ようにすること。

常に新しい感動がある刺激のある生活をすること。

記憶の障害となるストレスは少ないが、刺激となる適度の緊張がある状態がベスと。

学習してから一週間目に一度、その二週間後に一度、その一ヶ月後に一度の復習をするのが「忘却曲線」上いちばん効率的な方法。

覚えたその日は必ず六時間以上寝ること。 海馬の記憶整理プロセスをきちんと使う。

学習は小分けに。 大きなところをまずできるようにすると次第に繊細な違いが分かるようになる。

学習の効果は幾何級数的曲線を描く。 したがって、あるときに急に力がついたように思う。

凡人同士の能力の差より、天才同士の能力の差の方がずっと大きいのもこれが理由。

<感想>
題名の「記憶力を強くする」はやや「看板に偽りあり」だ。 というのも、この本の内容の大半が脳と記憶のシステムを知ろうとに分かるように解説しているものだからだ。 
だから、題名に期待して読むのは間違い。
脳科学の最先端をかいま見たい向きにはお奨め。

私も、自分の記憶力に自信が無く、なんとかならないかと思って読んだ。
その意味で、少しは役に立つ部分があるが、いわゆるハウツー物ではないので注意。

読んでいるうちに、知的好奇心のある読者は脳科学の面白さ、複雑にして単純な記憶のシステムの不思議、そして著者の情熱に引き込まれるだろう。

脳に対する一般的な興味をベースに読むべき本。

<勝手にレーティング>
納得度:4.5
オリジナリティ:4.5
実用度:3.5
アマゾン:5
合計:17.5

殿堂入り!!


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