温泉三昧

大阪寿司のこと


       大阪寿司


寿司の起源


 すしの起源は、紀元前4世紀頃の東南アジアにさかのぼる。貴重なタンパク質をおぎなうため、米の中に塩味をつけた魚を漬けて発酵させた魚肉保存法だとされている。内臓を処理した魚を米飯に漬け、米飯の自然発酵によって魚の保存性を高めた食べ物でした。
 このすしを「なれずし」と呼び、数十日から数カ月たったところで魚をとりだし、食べるのは魚だけ、米は捨てられていたそうだ。現在、滋賀県の『ふなずし』がその当時のなれずしの作り方であると言われている。
 その作り方は三ヶ月間塩漬けされたにニゴロブナの塩分を抜きながら腹の中に飯を詰め醗酵させる。春、四月頃から作り始めて 正月の食膳にのぼる。その先2年、3年とねかせて食べるという。臭いが強烈だそうだ。
 韓国では魚の保存食として咸境道地方のカジャミシッケ(カレイのことです)という代表メニューがある。シッケの作り方は、内臓をのぞいた魚を10%の食塩に一晩つけ、粟、粉唐辛子、ニンニクを混ぜて、室温で2、3週間醗酵させる。但し、保存期間が1ヶ月から2ヶ月と短いので生なれずしに属しますが、なれずしもシッケも同じ穀物の乳酸発酵を利用した魚の保存食なのでルーツは同じでしょう。シッケは現在では使う薬味も多くなり、ねぎ、生姜なども加えられている。17世紀の韓国の飲食文献で紹介されている。

参考:十世紀初めの延喜式によれば、諸国の貢進のうち、伊勢(三重県)の「タイずし」、近江(滋賀県)・筑紫(九州)の「フナずし」、近江の「アメノウオ(阿米魚)ずし」、三河(愛知県)・伊勢の「イガイ(貽貝)ずし」、若狭(福井県)のアワビの「甘ずし」およびイガイとホヤの「まぜずし」、伊予(愛媛県)の「イガイずし」、讃岐(香川県)の「サバずし」、志摩(三重県)・伊勢・尾張・備前(岡山)・阿波(徳島県)・淡路(兵庫県)・若狭の「雑魚ずし」があげられている。(和歌山にもさんま、鯖、あゆのなれずしがあるんですが。出てませんね。)


生なれずしへ


 日本人は米飯好きの民族だったので、魚だけでなくご飯も一緒に食べる「生なれずし」と呼ばれるすしが盛んになっていった。日本の室町時代後期のことだ。魚は半生の状態で米飯もまだ飯として完全に発酵する前に一緒に食べてしまうものである。すしは保存食から料理へと変わる。


早ずしへ


 ご飯が最初は発酵を助けるためだけであり、貯蔵を目的としていたのだが、江戸時代になると、日本独特のご飯そのものをおいしく食べる「早ずし」へと変わっていった。自然発酵を待たずに、飯に酢を混ぜ、魚だけでなく野菜・乾物などを用いて作る。この形態は、日本各地にその土地の産物と強く結びついたものとして今でも見受けられる。郷土料理の押し寿司がそうでしょう。


にぎり寿司の誕生


 1820年代(文政初期)、東京が江戸と呼ばれていた時代、江戸の町には、屋台を中心とする外食産業が軒を列ねていた。せっかちな江戸っ子は押している時間ももったいなかったらしく、酢で調味した飯に、魚をのせた「にぎり寿司」が世に登場した。東京湾でとれる魚介・のりを使うことから「江戸前寿司」とも呼ばれている。すし商、華屋与兵衛の改良により、そのおいしさ、その簡便さが江戸中の評判になっていった。そして1923年の関東大震災により、被災した東京のすし職人達が故郷に帰り、日本全国に拡がっていった。


大阪寿司の誕生


 大阪では文政末年(1829年頃)に大阪市中央区の道頓堀戎橋南で握りずしを売る店ができ、真似をする店が生まれたが、関西では木型を使ってつくる押し寿司が普及していた。その寿司に使われていたのは、サバやアジ、サンマなどの大衆魚。明治中期に、瀬戸内の魚と厚焼き玉子、エビ、穴子、キクラゲなどを、寿司飯とともに木枠の押し型に美しく敷き詰めて成形した箱寿司=大阪寿司を吉野すし3代目の吉野屋寅蔵が作り出した。
 そのあと、この箱寿司が大阪中に広まり、大阪でいろいろな寿司が作り出され、大阪寿司は 「箱寿司」「巻き寿司」「穴子の細巻き寿司」「ちらし寿司」「蒸し寿司」「ばってら寿司」「棒寿司(鯛、鯖、穴子)」「松前すし」を総称していう。時間が経ってもおいしく食べられる寿司として、テイクアウト、デリバリー寿司としても人気が高い。


大阪寿司の代表、箱寿司の元祖がこのお店です。



吉野すし
住所大阪市中央区淡路町3-4-14
電話06-6231-7181
営業時間11:30~21:00
定休日土・日・祝
交通地下鉄御堂筋線「淀屋橋駅」11番出口を出て御堂筋より1本中にはいった路を、本町方向にあるいて徒歩7分、または地下鉄「本町駅」3番出口より徒歩7分

 大阪で旅籠屋を営んでいた初代吉野屋嘉助さんが一念発起して開いたのが、吉野寿司。創業は江戸時代で、水野忠邦が天保の改革を行った1841(天保12)年です。その吉野寿司の三代目店主、吉野屋寅蔵さんが考案した箱寿司はタイやエビ、アナゴなどの素材を用いた高級志向の寿司で、見た目にも美しい"寿司の芸術品"と評され、目と舌の肥えた大阪の旦那衆のあいだで一躍人気に。木枠の押し型で押すので「押し寿司」とも呼ばれ、大阪庶民の好物となっていきました。
 この木枠は8.5cm×8.5cm 高さ4cmです。2寸6分の大きさ、深さ1寸2分。今、この木枠を作れる職人もすくなくなってきたそうです。(これは吉野すしさんのホームページから勝手に拝借しています。ばれて怒られたら消します。)この木枠で3種類(こけら、白身、焼き身)を組み合わせて作ったのが、現在伝わる箱寿司の元祖。この箱寿司は、江戸前寿司と違って、時間がたっても味が変わらないのが特徴。じっくり味わう寿司なんです。
 確かな技術と手間暇がかかるため、大阪でも箱寿司を出す店は、そう多くなく、寿司屋が大阪には500軒以上ありますが、大阪伝統の箱すしを作っているのは10軒ぐらいしかありません。
 現在は圧倒的に握り寿司の店が多いのが実情ですが、それだけに箱寿司の名店は、大阪庶民に絶大な支持を得ているお店が多いです。新鮮素材を使っているので、身体にも優しく、カロリーも比較的控えめで、女性にも自信をもっておすすめできる大阪すし。とくに年輩層にファンが多いのは、ほどよく酸味が利いた上に、魚介類やダシ巻き玉子のまろやかな風味が重なって、上方らしい繊細な味覚なので、口当たりの良さが理由ともいえるかもしれません。
 お店に入って驚いたのが、年配の板前さんが多かったこと。年配というか、はっきりいって、おじいさんたちで、日本の板前さんらしく、きっちりと帽子と白衣をきれいに着ていました。リニューアルしたという建物はとてもきれいで近代的、古い建物をイメージしていたから、期待外れでした。1階にカウンターがあり、目の前で握って下さいます。職人さんの業が見たいなら、やはり1階で頂くのがいいでしょう。
 上階にはエレベーターで上がります。座敷もあり、商談をするのに、利用されているようです。老舗の日本食店は若い女性店員がいません。ここもそうで、40代の方がサービスをして下さいます。敷居の高そうなお店をイメージしていましたが、やはり、時代に合わせたのでしょう、高級感を感じさせながらも入りやすさがありました。ただ、場所的に心斎橋や、道頓堀に在る店よりは入りにくいですが。 やはりここで頂くのは大阪寿司、アラカルトを頼みました。¥1600。そして人気の船場汁¥400も注文しました。メニューに写真があるので写真を見ながら頼むといいですが、値段はすし屋にしては少々高いほうですのであらかじめ予算を決めて、予算に合うメニューを頼んで下さい。
 参考に日本のサラリーマンが昼食で使う金額がコーヒー代を含めて¥1000までということをですので、客層が年配が多い理由の一つに、若い方が簡単に食べようと思う金額より高いからだといえるかもしれません。こちらの若女将の橋本和子さんが、老舗の質に合う材料と技術の維持をお客様に分かって頂くしかないとおっしゃっていました。
 素材は地元・黒門市場、中央卸売市場で、支配人自らが厳選したもののみを仕入れているそうです。小鯛は一匹420~430gのものがちょうど良いとされ、まず鱗を削いでいくのですが、季節や捕れる場所によって、脂ののり具合、身のしまり具合が変わってくるとおっしゃいます。あえて産地にこだわらず、常に一定した品質を心がけているそうです。職人にしかできない業です。
 さばかれた鯛の切り身は塩がふられ、1時間から1時間半ほど置いたのち、酢でさっと洗い、すぐに引き上げる。エビはクマエビ(大阪ではアカアシエビと呼ばれる)を使用。ゆがくと車エビよりずっといい色になり、甘味も濃厚とのこと。穴子は淡路島の岩屋でとれたものを用い、素早く腹開きに。その後、少し濃い口のタレをからめながら、丹念に焼き上げる、タレをかけたあとは、身と皮を焦がさないよう乾かす程度に軽く炙るのがおいしく仕上げるポイントだそうです。
 厚焼きに使われる玉子にも、白身魚の塩ズリを練り込むなど、おいしく仕上げるための細やかな工夫がなされている。寿司米を重視していて、寿司米の品種は日本晴、大阪寿司はさまして食べるものですから、さめたときにおいしいお米、というのが日本晴らしいです。

大阪寿司、アラカルト¥1600(外税)
 左からしめ鯖を間に挟んだ巻き、上にいって、箱寿司であるアナゴ、卵と海老(こけら寿司)、鯛と昆布、間には椎茸が挟まっている。右がしそと梅の巻き、真ん中が松前すし、下が巻き寿司。巻き寿司の海苔が固くてかみ切れなかったんです。上等な海苔で、巻いてから時間が経っていたのでしょう。固すぎてかみ砕くのが大変でした。日本の海苔の悪い点ですね。
 寿司の断面をよく見ると、なにやら茶色いものが薄く敷き詰められています。これはシイタケを細かく刻んだもので、寿司のうまみを引き出す大事な役割を果たしている。ご近所の方が、吉野すしから漂う、椎茸を煮る醤油の香りで目が覚めると言っているほど、ここの椎茸は有名です。仕込みはまず、前日から水に漬け込んだものを、そのまま水炊きで3時間、木杓子で切れるくらい柔らかくなると、砂糖と醤油を加えと1時間じっくりと炊くのです。これくらい上等なシイタケになると、冬場は煮汁がにこごりになるという。安いシイタケだとそうはいきません。
 すしめしにもしっかりと味がついていて、どう表現していいかわからないんですが、味わいふかいといったらよいのでしょうか?ごはんの仕込みも、わさびや醤油をつけない大阪寿司は、昆布ダシでしっかりと味付けされた上で、酢、砂糖、塩、みりんを加えます。この配合により、それぞれの店の味が生み出されるので吉野寿司でも、もちろんこの配合の割合は企業秘密となっています。韓国で決して味わうことのできない寿司だと思います。
 韓国に在る日式料理店では数多くのつきだしが出てきますが、日本のすし屋は、お茶しか出てきません。頼んだものしか食べられません。韓国人にとっては、満足の行かない量で、ものたりないと思いますし、野菜不足です。味も単調なので飽きてくるかもしれません。キムチがほしくなることでしょうがここには当然ながらキムチはおいてありません。

船場汁 ¥400(外税)
 そして、一緒に頼んだ船場汁は、明治のころより商家の厨房で、大根と塩鯖を焚いたもので別名丁稚汁とよんでいたもの。大根と鯖と出汁と別々に煮てから、後で混ぜるのでそれぞれの癖がなく、本当に鯖なのかと思うぐらいでした。大根は大きく切ってから煮てから、食べやすい大きさに切っているので歯ごたえがありながらも、大根の甘みがあり、汁にも大根の味が染み出ててすっとする甘みがあって上品な仕上がりになっていました。
 今吉野すしのすしの漢字は寿司という漢字ではありません。看板の文字を見てください。羊の下に魚とかきます。古代「サ」と読んで魚へんに差とかきます。説文によれば昔中国で羊肉、魚肉を飯の上に置き、ご飯の発酵による江州の「ふなずし」の原形になるものです。北方では「サ」といい、南方では魚へんに山、今と書いて「キン」と称しました。鮨も同類で鮓は「サ」の俗語です。

その他、大阪寿司で有名な老舗

本福寿司
住所大阪市中央区心斎橋筋1-4-19
電話06-6271-3344
営業時間10:30~20:30
定休日水曜日
交通地下鉄御堂筋線心斎橋駅1分

 大阪の繁華街で最も代表的な心斎橋筋商店街の大丸百貨店の向かいに「本福寿司」のこじんまりした店がある。この店は文政12年(1829年)創業の老舗。大阪の味はやはり木型で押す箱ずしと言う人が多い。この店では、にぎりは江戸前の新鮮なネタを用意。鯛、あなご、えびなど彩り鮮やかな箱ずし、シンプルな棒ずしのほか、約60種そろう。伝統の箱ずしが手軽な値段で味わえる。昔から人気が高く、私も15年ほど前に何回かいった記憶があり、握りを頂いたのだが、高くなかったことだけは覚えている。
 松前すしの元祖松前すしはこれです。実を言うと、バッテラと松前の区別がわからなかった私です。

丸万寿司
住所大阪市中央区道頓堀1-9-3
電話06-6211-6197
営業時間10:00~20:00
定休日毎週火曜日
交通地下鉄御堂筋線「難波」からでも「心斎橋」からでも同じぐらい時間がかかる。戎橋筋の通り、えびす橋近くに位置する。

 この戎橋筋商店街での商いの始まりは創業明治27年(1893年)、名代「元祖松前すし」が、広く親しまれている。これは鯖すしに昆布をのせ、上質の竹の皮に巻いて空気が入らないように密閉したもので、日持ちがし、滋味新鮮にあふれる鯖すしとして、先々代の利三郎が考案したものだ。明治45年(1912年)には「松前すし」と名称新案特許をとった。
 すしに昆布を使うことは普通だが当時としては大した発想で、人気が広まった。そして今に至るまで大阪の名物として全国に普及し、「松前すし」の名を挙げた。他にも、浪速名物の箱すし「大阪すし」、大きな油揚げで包み込んだ稲荷寿司の「狸すし」がある。店内でも食べられるが、お土産など、お持ち帰りも豊富に揃えてある。
 手のひらぐらいの大きさの稲荷寿司、中には、ごぼう、おのみ、薄揚げを刻んだ具が入っている。揚げにはしっかり味がついていて、具は多く混ざっていない。揚げの味が甘すぎず良かったのだが、酢飯が私には柔らかすぎだった。たぬき寿司 1個¥400(外税)。関西は本当は三角の揚げを使うものが多いのですが、大きくするには長い方がいいのか、折りに入りやすい形だったのか、なぜか長方形です。
 大阪でしか味わうことのできない大阪寿司!職人の技とセンスがこの寿司に凝縮されている。持ち帰りが出来るので買ってその日に帰って、韓国で食べれるし、帰りの道中が長い時は途中でお弁当として役に立つ。但し、買ったその日のうちに食べること。

たこ竹 天保2年創業『ちらし寿司』が有名
大阪市中央区松屋町住吉3-8
地下鉄松屋町駅から徒歩3分
電話06-6762-1848

 天保2年から170年。大阪寿司ののれんを守る老舗。創業は天保2年。以来、最上級の材料と伝統の技で大阪の味を伝えて170年、堂々たる老舗である。名物は、しいたけの混ぜご飯に穴子、鯛などをのせた「ちらし寿司」。完成までに相当な手間ひまをかけているが、素材や仕込みへのこだわりも尋常ではない。例えば寿司飯は、米には江州米を、隠し味に北海道産の真昆布を使い、天然醸造の酢で仕上げられる。
 さらにネタの鯛やエビなどは、塩と酢でしめたあと一晩寝かすといった具合だ。徹底的な職人気質によって作られた逸品は、ネタと飯が見事に調和した、本物だけが持つ深い味わい。「ここ以外のは食う気がせん」という、古くからの馴染み客が多いのもうなずける。
 昔は、道頓堀や千日前界隈で一杯飲んだあと、家族へのお土産に買うて帰る人が多かったんです。先代から聞いた話によると、今と昔とでは客層がえらい違ってましてね。昔は道頓堀や千日前界隈で一杯飲んだあと、この店に立ち寄り、家へのお土産に買って帰る人が多かったのだそうです。それも、新鮮さがウリのにぎり寿司ではなく、日持ちするもんにしようと考案したのが、今に受け継がれるちらし寿司や押し寿司。
 今ではそんなお客さんはすっかり減ってしもたけど、代わりに店周辺のオフィスへの仕出し用が多くなりましたね。それに全国から食べに来てくれるようにもなり、大変うれしいことやと思うてます。

小鯛雀寿司鮨萬
住所 本店 大阪市中央区高麗橋4丁目5-11
地下鉄四ツ橋線肥後橋下車6番出口から徒歩2分
地下鉄御堂筋線淀屋橋下車12番出口から真っ直ぐ進み3本目の路を左に入るとすぐ。徒歩5分。
電話06-6231-1520。予約をして買いに行った方がいい。注文してから作るので、10分くらい待たされた。
営業時間9:00~18:00
定休日日曜 祝祭日

 私が小さい頃、大阪堺市に住んでいました。いつも堺東に行くと巻き寿司といなり寿司を買うのが習慣でした。その時のお寿司屋さんって、2坪ぐらいのスペースの売り場で板前さんがすばやく巻き寿司をまいて、横で他の板前さんがそれを切ったり、稲荷寿司を作ったりしていました。大きな開き戸の窓を開けて、出っ張った台が備え付けられて、おばさんが注文を受けて(そう、いつもおばさんでした、若いお姉さんはいませんでした)注文をもらってから巻き寿司を切ってくれました。 生姜を添えて、あの独特の木で出来た包みに手早くのせてふたして、紐でまいて、上から紙で包んでくれて「はいおおきに」だったと記憶しています。その当時のお寿司屋さんは食べられるスペースが少しありましたが、出前と持ち帰り(ペダルとポジャンと韓国語ではいいます。)がほとんどだったとおもいます。
 現在、韓国でコーヒーのテイクアウト店がたくさんできていますが、そのスタイルが昔の寿司屋のスタイルと同じだとおもいます。もちろんインテリアは違いますが。韓国のコーヒー店も多すぎて、あとはつぶれるのを待つだけだと思います。私だったら日本的な鮨屋かおでん屋やをしたら儲かるのにと思ってしまうのです。
 韓国ののりまき、キンパプ店は、窓がなく、中に入って、食べられるようになっていて、メニューもラーメンとかうどんとかトッポキとキンパプだけではありません。持ち帰りのときは、注文してからキンパプをまいてくれ、箱に入れてくれます。外で待つ日本の鮨屋とは、少し形態が違います。
 江戸時代ににぎり寿司が登場し、それまでは出前と持ち帰りだけだった寿司が、屋台で座って食べるスタイルに変わってきました。当時からにぎり寿司は新鮮な食べ物だったのでしょう。それから屋台から発展し、店を構えるようになり、寿司屋はカウンターと丸い椅子だけというスタイルが昔はほとんどでした。
 昔といっても30年ほど前の話になるのでしょうが。入口は2mぐらいで中は細長い、10席ぐらいのほんとに狭いスペースのお店があちこちにありました。その当時の寿司の値段は1皿3カンで¥100でした。現在回転寿司が日本でブームです。やすくて、ネタも悪くないし、負担にならない金額なので家族連れでいける店として、土、日は列を成すほどの人気です。その回転寿司が1皿2カン¥100。もちろんネタの良さは違いますが値段は30年前と同じです。安いですよね。もちろん回転寿司でない、一般の寿司屋で食べるともっと高いです。
韓国の回転寿司=フェジョンチョバプでは1皿W2000からですよね。日本に行って回転寿司を食べる方がやすくて、おいしいですよね。さて、にぎり寿司の影響で座って食べるスタイルのお店が全国的に広まりましたが、大阪の寿司は元々お持ち帰りが主流でした。その基本の持ち帰りの鮨屋を大切に守っているお店があります。老舗中の老舗といわれる鮨屋で「すし萬」といいます。
 昔の家はこんな形でした。見事な日本家屋ですね。右手の窓が売り場になっていていたのでしょうね。ここでお客さんに鮨を渡していたのでしょう。
これが小鯛雀鮨。創業当時の雀鮨は、浪花江鮒(ボラの稚魚)のお腹を裂いて内臓をとり、その中にごはんなどを詰めたもの。魚のお腹の部分が膨れて、その形が雀に似ていることから「雀鮨」といわれるようになったとか。そして、江戸中期にはすでに地方名産としてあげられるほど、好評を博したそうです。
鮨業のはしりといわれたすし萬の鮨は桶詰め、押し鮨という元来の大阪寿司の特徴である土産、お持ち帰り品が主流。これは桶に入ったもので 古傳桶詰 大桶 ¥25,000、小桶¥16,000。超高級品です。買うときは前日までに予約をしないといけません。
 棒寿司状の小鯛雀鮨。この1本がなんと、¥3500(外税)。ご贈答用として販売されています。高いったらありゃしない。でもね、食べてびっくり!UNBELIEVABLE!つづりあってるかな?おいしいの!雀鮨ってこんなにおいしいものやったんか!!!食べて納得!!夏は日持ちしないから一昼夜以内に食べた方が良いとのこと。7時間から15時間以内が味わいとして最上だそうです。この雀鮨の価値が分かる人がどれだけいるのでしょうか?
 昆布は鮨が乾かないようにカバーしています。昆布をはがすとこのように切り分けられています。淡路島南端から沼島付近にかけて一本釣りした小鯛の二才もの(明石鯛)を、古法にしたがってくぬぎのまき(愛媛大洲のクヌギの薪)で炊き上げた湖南米(滋賀県産)のすし飯と、よく吟味された醸造酢(京都在来)、さらに尻岸内産(北海道)の昆布をもちいて、昔ながらに調理した浪速き味。昆布は食べない人もいますが、私は刻んでおつまみです。酢昆布ですよ。これもおいしかった。
 「鮨萬」で苦労しているのは、鯛の赤さを残すことだそうです。酢が十分きけば身は白くなる。きかなければ腐る。この赤さは伝統のなせる技ですね。写真は私が撮ったものなので少し色が悪いです。

すし萬の歴史
 祖先は1653年、魚屋を開業。当時、大阪名物の雀ずしは、江鮒=ボラの子で作られてた。1781年、8代目石本萬助が小鯛雀鮨専門店を創業。当時、幸運にも京の仙洞御所へ献ずる機会に恵まれ、材料にも吟味に吟味を重ね、西宮沖、戎神社の前の海で捕れた小鯛2歳ものをもちいて、雀鮨をつくり献上したところ、気に入られ評判を得たので、それ以来、雀鮨専門店として「総本家小鯛雀鮨」を名乗り、現在にいたる。
 この本店だけではなく、テイクアウト店が大阪の百貨店地下食料売り場に10店、神戸、名古屋に4店、東京7店ある。名古屋、神戸の売り場には四席だけのイートインコーナーを作り売り上げを上げている。
 でも、いくらおいしくてもこんな高価なものは簡単には買えませんよね。私が家族のためにこのお寿司を買って持って帰った所、「こんな高いもん買って!」とあきれていました。回転寿司で2人が十分お腹いっぱい食べられる金額ですから、そう言われるのも分かります。多分このお寿司の価値が分かる日本人は少ないことでしょう。韓国人ならもっと難しいでしょう。W35000なら、日式の食堂で突き出しが10個ぐらいでてきて、鮨が出て、メウンタン、ご飯も付いてくるぐらいの価値ですからきっと、驚かれることでしょう。
 ですから伝統のある食べ物でも、いくらおいしいものでも価格が引っかかって、手が出ない食べ物になりつつあります。しかし、おいしいものであれば、必ず残っていくのが食文化です。この店はのれんを守るために、値段を下げるやり方をせず、多様なメニューのレストランを作り、他の業態で利益を上げ、本業の持ち帰りの鮨屋を守っていく経営展開をしているのです。
 そして、味を守るために、月に一度、取り引きのある魚屋と米屋と海苔屋と勉強会を開き、2回に一度は新しい食材を持ち寄り、調理して研究しているそうです。米屋は月に一度すし萬の鮨を買って米の具合を確認し、米のブレンド、精米の参考にしているそうです。この日本人の職人気質には頭が下がります。韓国にも守っていかなければならない食べ物がたくさんあります。生産者があんまり大変なので、どんどん辞めていき、昔の材料が手に入らないとよく聞きます。生産者が少ないため値段が高くなり手が届かない場合も多いらしいです。「この味じゃない(イマシアニダ)」と韓国人がよく言いますが、そうならないためにも生産者を応援し、守っていくことをしていってくれたらと思います。

すし萬
 そうそう、すし萬さんにメールで「御膳所御用御包丁人」はどういうものなのか教えて下さいと書いて送ったんだけど、返事が来なかったわ。やっぱそんな馬鹿な質問にこたえられないって思われたのかしら。和歌山にも雀寿司があるのですが、やっぱ味はすし萬のほうが断然よかったです。
 でも、二度と買うことはないと思います。一度味わったから何十年かしてなんか食べたくなるかも知れないけど、世界中においしいものたくさんあって、それを味わおうと思ったら一生に一度の一期一会の食べ物がどんどん増えていきますね。

持ち帰り専門の店
本二鶴 『五目稲荷寿司』と『ふくさ寿司』が人気
大阪府大阪市中央区宗右衛門町5-25
電話06-6211-4576

【これは、寿司好きの知人が、いろんな資料の引用と取材をもとに書かれたものです。】


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