“お笑い”哲学論のページにようこそ!

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◆その愛は本物か?◆


先頃、このページにおいて、私は「あなたの記憶は本物ですか」と書きました。

今回は、「あなたの(恋愛)感情は本物ですか」と問いましょう。


そもそも、感情はどのようにして起こるのでしょうか。
本能に根ざしたもの、というのは誰も否定しないところでしょうが、感情が起こる仕組みについては、古来いろいろな仮説が立てられてきました。

その中でも、興味深いのは、ジェームズ(アメリカの哲学者で、心理学者)と、ランゲ(デンマークの生理学者)という二人の人物が、ほぼ同時に発表した「ジェームズ・ランゲ説」と呼ばれる仮説です。

一般常識としては、悲しい出来事があった時には、先に「悲しい」と思い、その結果として涙が出る、と考えられます。
哲学者ジェームズはこれに対して、生理的な反応は感情の結果ではなく、原因だと主張しました。
つまり、ジェームズによれば、「泣くから、悲しい」という訳です。

この理論は一見、あべこべなようですが、確かに、美しい女性などが、私にぶつかりそうになった時など、ドキッとして、後から“私に対する恋愛の感情が起こる事実”などを考えると、「なるほど!」と納得させられる部分もあります。

その後、批判や修正をされることになった「ジェームズ・ランゲ説」ですが、現在でも、その考え方が完全に否定されている訳ではありません。
例えば、心理療法の分野では活用されているとも言えます。
とくにリラクゼーション法の多くは、まず体にリラックスしている状態を作り出すことを目的とします。
それによって、リラックスしている「感じ」が実際に生まれる訳です。

もちろん、この説だけですべての感情が説明できる訳ではありませんが、感情の起源についての理論は、ジェームズの大胆な発想から始まったと言われています。


「ジェームズ・ランゲ説」は、感情についての新しい見方を提案しましたが、この考え方を、もう一歩進めたのがシャクターです。
彼は生理的な変化が起こるだけでなく、それが認識されることで初めて感情が生じると考えました。
認知過程を重視するこの考えは「感情の認知説」と呼ばれています。
(解説は退屈かつ面倒で面白くない上に、何より私には難しいので割愛します)


彼らの実験ではありませんが、この説で説明できる興味深い実験があります。

「恋愛の“感情を作る”実験」です。

(ここまでの、退屈な文章に我慢できた人だけに、この秘法を伝授しましょう)

ダットンとアロンズの行なった実験は、深い谷に架かる不安定な吊橋と、浅い川に架かる広い石橋を舞台に行なわれました。
被験者はそれぞれの橋を、偶然通った男たちです。

男たちが橋を渡っていると、実験者によって用意された女性が、突然、心理テストへの回答を依頼します。
また、テストが終わると、女性は連絡先として、電話番号を被験者(男たち)に教えます。

その結果、石橋の被験者に比べて、吊橋の被験者の方が、心理テストでは、恋愛的な興奮を示す回答をしました。
さらに、吊橋の被験者は、後日「実験について、詳しく知りたい」などの理由(口実?)で、その女性に電話を掛けるという行動が、多くみられました。

これは、吊橋の上にいる恐怖によって引き起こされた「生理的な興奮」が、「女性に対する興奮」と混同されたためと解釈されました。
「ドキドキ」を「トキメキ」と混同したのです。


感情の認知説は、恋愛のシチュエーション作りにも役立ちそうです。
劇的な出会いを経験した男女が恋に落ちるのはこのためでしょう。


初めて異性と二人で会う場合には、刺激的な場所が有効です。
そうは言っても、暴力団の事務所などでデートするのは行き過ぎです。
現実には、夜の高層ホテルでの食事などがドキドキする場所ですが、食事代を支払う側が(経済的に)より強い恐怖を感じる点で、男性の方が不利なのは、前述(「りすとらんてにて」を参照)した通りです。


ところで、この文章を読んだ私の周りの女性の中には、思い当たるフシがある方がいるかも知れませんが、その出会いのハプニングや状況は、あくまで偶然であることを、お断りしておきます。

あなたが抱いた私への恋愛感情は、本物だと信じて下さい。

(少なくとも、私の抱いた下心は本物です)





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