あなたがくれた刹那の時間

あなたがくれた刹那の時間

お通夜


私は大事なことを思い出していた。
今日の仕事のことだ。
パパのお店に朝9時にお客さんが2人来るのだ。
どうしよう…家に帰ってパパと打ち合わせする予定だったから
私はお客さんの連絡先・電話番号を控えていない。
でも連絡しないとシャッターの開いていないお店の前で
お客さんを待たせることになる。
私はその仕事を紹介してくれた方に電話して事情を伝えた。

連絡しなければいけない人は誰なのかわからなかった。
今日の仕事の件で迷惑がかかると思われる方には電話した。
後は?
パパは誰に来てもらいたいの?
パパの友達に電話した。
もう知っていた。
今朝のニュースに出たらしい。

葬儀場の係りの方がやってきた。
詳しい打ち合わせをということだ。
打ち合わせが始まったが、結局はお金の話をしているだけの
気がしていた。私は逃げ出したかった。
義父母は、まるで他人事のようにうちの両親に
お任せします。お任せします。と言っていた。

私は耐え切れず打ち合わせの部屋を飛び出してしまった。
廊下で泣いていた。
まだ早朝だというのに幼馴染のMと学童の先生が
心配して駆けつけてくれた。嬉しかった。
近所のおばちゃん(うちの母の友人)2人も来てくれた。
お腹空いただろうからってサンドイッチなどの差し入れをしてくれた。

私は夜まで何をして過ごしたのだろうか?今は思い出さない。
私の友達が遠方に出張に行っていたのに心配してくれて駆けつけてくれた
沢山の友達が私の元に来てくれた。私はもう涙が止まらなくなった。

お通夜・・・本当に沢山の方がパパにお別れを言いに来てくれた。
式場に入れず外まであふれかえっていた。
みんな泣いていた。私の知らないパパの友人も沢山いた。
私は感謝の気持ちでいっぱいでパパの変わりに心から頭を下げた。

お通夜もすみ殆どの方が帰られた。
パパの悪友達を除いては・・・10人以上いたと思う。
パパと話がしたいからってパパにビール買ってきてくれて
夜の間ずーーーっといてくれた。

真夜中過ぎても人は次々に来てくれた。12時・1時・・・
私は寝るように言われたけど寝れなかった。
明日もお葬式があるし喪主のあんたが倒れるわけにはいかないからと。
でも寝れるはずも無い。全く眠くない。
しばらくして赤い光が目の前に広がった。
私はその後麻酔でも打たれたように一瞬で眠りに落ちた。

あの赤い光は何だったのかな?パパの魂?
心配してくれて眠りにつかせてくれたのかな?


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