あなたがくれた刹那の時間

あなたがくれた刹那の時間

火葬場


喪主の「お願いします」って言わないと火葬できない。
喪主(私)が許可してスイッチを押すという具合になっている。

「いいですか?」
って聞かれて私は取り乱した。
暴れた大声で泣き叫んだ。
泣き崩れた。
答えは「いや!!!」だった。

パパはバイク事故だけど焼死だった。
タンクに引火してバイクとミキサー車と爆発した。

熱かっただろう。いや。即死だから熱さは感じなかった?

でもパパは熱い思いして死んだのに丸焦げになって死んだのに
なぜまた焼かなければいけないのか私にはわからなかった。
これ以上熱い思いをさせるのが可哀想でならなかった。

でも80歳になる私のおばあちゃんに言われた。
「早く楽にしてあげなさい。早く天国に行かせてあげなさい」と

頭ではわかっていた。わかっているけど心がわかりたくなかったのだ。

その間火葬場の方は何度も何度も「いいですか?」と私に聞いた。
いい加減にしてくれといわんばかりだった。

私は勇気をだして「お願いします」といった。




パパが骨になって出てきた。
遺体を確認してなかったけど骨の損傷で事故の大きさを思い知った。
大腿部や胸部の胸は砕けていた。

「パパちっちゃくなっちゃったね」
と娘が言った。
子供たちにとって大きな大きなパパがこんなに小さくなってしまった。

遺骨を骨壷にいれた。

「残りはこちらで処分させていただきます。」

と言われたので思わず

「処分ってなんですか?」

と聞き返しました。

返事に困ってらっしゃいました。
気まずそうに

「こちらでちゃんとさせていただきます」って

「捨てるんだったら私が全部持って帰りたい」

と言ったけど・・・

「ちゃんと致しますので」と念を押され
とても迷惑そうな顔されてしまいました。

ここでも又ひとつ後悔。
処分されるくらいならやっぱり全部持って帰ればよかった。
お墓に入れなくてもあとはお庭にでもまいてあげればよかった。
ダメなのかな?こんなことやっちゃ。
宗教上はなにかあるかもしれない。わからないけど。
でもパパはそうしてもらったほうがよかったのかもしれない。

いろんなことに後悔の念がつきまとう。



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