2.『もしも…』のコーナーかよ



その時、卵巣嚢腫はニワトリの卵くらいだったと思う。
地元のT病院では
「これが握りこぶしくらい大きくなったら手術だよ。
 その前に茎捻転という状態になったら緊急手術だからね」
と温存派だったので、すぐに手術という状態ではなくなり少し安心した。
それから5cmほどの大きさがしばらく続いたかなぁ。

例の小さな設計事務所は、所長のくも膜下出血のため倒産のような形になった。
私はその月の給料も貰えなくなり職場を失った。
私がかけた迷惑なんて小さなものだった。
最悪の事態は免れたそうだが、色々イヤミを言われていた私は同情する気もなかったので
‘日頃からヒトにはよくしておくものだな’と改めて思ってしまった。
・・・23歳の秋の話。

お友達に「もうすぐ職を失う」と話すと、彼女の自宅が設計事務所で忙しい事もあり、すぐにバイトで雇っていただけることになった。
私が「病気で手術するかどうかのところなんだ」と話すと、
社長であるお母さんもそしてお兄ちゃんも知り合いに色々話してくださって、私にとって何がベストなのかを探してくださった。
一見、バラバラに見える家族だけど何て結束力が強いんだ!と感心し、心から感謝した。
思いやりのある友達一家としばらく過ごしたが、余りお世話になりすぎるのも申し訳なかったので、
24歳のゴールデンウィーク明けから新しい会社に移ることにした。

相変わらず卵巣嚢腫は5~5.5cmほどの大きさだ。

新しい会社は隔週休2日だった。
・・・なんだけど出勤の土曜日が通院日にあたってしまい、なかなか上手くいかない。
でもとりたてて忙しい訳ではないので‘大丈夫だろう’と思っていた。
・・・が、甘かった。
2回くらい土曜日を休むと、もう所長は私のいないところで文句を言っていた。
所長なんだから気に入らないのなら直接言ってくれ!と思った。

地元のT病院にまた検査で行くと、
いつも温和な先生なのにその日は物凄く機嫌が悪くてビックリした。
卵巣嚢腫の大きさは殆ど変化ナシで、
以前から言われていた『握りこぶしの大きさ』には程遠い。
なのに
「もう手術しなくちゃいけないんだよ!」
と強い口調で怒られた。
元々手術するつもりでT病院へ来たので手術しても構わないと思っていたが、言っている事が急に変わったり
‘手術当日に先生の機嫌が悪かったら・・・’
なんてドリフの『もしも・・・』のコーナーが目に浮かぶ。
いかりや長介でなくても「ダメだ、こりゃ」ってな具合で結局ここでも手術は受けなかった。

***** 3.両方かよ へ続く *****



© Rakuten Group, Inc.

Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: