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ゆーぽっぽ・どっと・こむ
ホタル(Kelip-Kelip)
無数のホタルの光に彩られた、天然のクリスマスツリーを見たことがありますか?
KL(クアラルンプール)から車で約1時間半ほどの、クアラ・セランゴールは「カンポン・クアンタン」というところに、今では日本でも滅多に見られなくなったホタル(マレー語ではkelip-kelip)を自然の中で存分に鑑賞できる場所があります。ここは最近では日本から鑑賞ツアーが組まれたり、以前一度朝日新聞の一面に写真が掲載されたりもしたので聞いたことのある方も多いと思いますが、あのすごさは実際に見てみないと絶対に伝わりません。ゆーぽっぽは2年前くらいに一度訪れただけですが、あの時の幻想的な光景はいまだに目の奥に焼きついています。
日本から組まれている鑑賞ツアーにはシーフードレストランでの食事代金等も含まれているようなので、かなり割高になってしまっています。でも自力で現地に行きさえすれば、実際は1隻のボートを4人で借り切って1人10リンギ(300円)という安さ。しかもこの中には船頭さんの舟漕ぎ賃をはじめ、ミネラルウォーターやスナックまで含まれているのでかなりお得です。(それでも現地の人にとっては決して安くはないと思いますが。)
私はお父さんの運転手さん(サイディさん)に連れて行ってもらったので不安はありませんでしたが、単純に車で1時間半とは言っても、ココナッツ椰子畑の中の、舗装もされていない真っ暗な道を延々と行くので、初めて行った人は多少不安に感じるかもしれません。でも逆を言えば、人がたくさん住んでいたり自然が守られていない場所で、ホタルが安心して生息できるわけがないのです。
屋外でおにぎりを食べたいというお父さんの提案に、私たちは手作りのおにぎりやサンドイッチ、そしてビールなどを大量に用意して、わくわくしながらボートに乗り込みました。そのボートというのがまた、今にも沈みそうなくらい底が浅くてオンボロの、木製の手漕ぎボート。まぁそれだからこそ風情があるというものですが(笑)、その川というのがアマゾンの濁流を彷彿とさせるかのように真っ茶色でいかにもワニがいそうな川だったので、正直言ってかなり怖かったです。しかもサイディさんが「あっ!あそこにワニが!!!」とか言って私を怖がらせるし。(笑) 日本では一般的に「ホタルは澄んだ水の近くに生息する」と言われていますが、ここのホタルは決してきれいな水を好むわけではないようです。ちなみに全世界には約2000種ものホタルが生息しているそう。
川を少し下っていって目が暗闇に慣れてきたところで、船頭さんが「ほら、あそこを見てごらん」と指差す先に、クリスマスツリーのように無数の光を放つ木が見えました。しかも川沿いの木すべてがそうというわけではなく、ぽつん、ぽつんと、ところどころの木だけがそうやってクリスマスツリーのように光っているのです。「え?あの光がホタル?ウソでしょ!??」と半信半疑で近づいてもらうと、それは日本のそれより遥かに小さいものの、確かに無数のホタルたちが放つ光でした。しかもぼ~っと光っては消える日本のホタルとは違い、ここのホタルの光は小さくチカチカと点滅するので、ほんとにクリスマスツリーのよう。本当は近寄ることは許されていませんが、サイディさんが木のすぐ下まで行ってくれるようマレー語でお願いしてくれ、船頭さんがホタルを一匹捕まえて私に手渡してくれました。手の中をそっと見ると、たしかにそれはホタル。ぼ~っと光っていた光がすっと消え、私はあわててホタルを放してやりました。そして、船頭さんに「疑ってごめんね」と謝りました。
なぜそのようにところどころにホタルが集中するのかというと、彼らはこの川沿いにある、マレー語でBermbang(ブルンバン)と呼ばれる木(マングローブの一種)の花蜜に集まるからだそうです。だから川沿いのすべての木が光っているわけではなく、このブルンバンの木だけがそうやって美しい光を放っているのです。それはまさにはっと心を奪われるような、幻想的な世界。
私たちはそうやって往復1時間ほどのホタル鑑賞ツアーを、ビールやおにぎりを片手に楽しみました。しーんとした真っ暗な夜空の下、聞こえてくるのはボートを漕ぐ音だけ。虫除けスプレーを万全にして、体中覆い隠すような格好でボートに乗り込んだはずの私たちは、気付くといつの間にか体中のあちこちを蚊に刺されていました。それなのに、虫除けスプレーなんてしてなくて、半袖で涼しい顔をしていたサイディさんは結局一度も刺されず、「Saya kuat!(強いでしょ。)」なんて言ってにっと笑っていました。さ、さすが!(笑)
ただ、この幻想的な光景がもうすぐ見られなくなるかもしれないそうです。それはなぜかと言うと、今このセランゴール川の上流にダムが建設されようとしているからです。このダムが完成すると川の流量が大幅に減少するため、川の水の塩分濃度が高くなり、ブルンバンの木が枯れたり、幼虫のエサになる貝もいなくなるなどして、ホタルも消滅してしまうのではないかと心配されています。
美しい自然が保護されている場所には、既に自然が破壊された場所から、人々が自然を求めてやってくる。そしてまた環境が壊されてしまう・・・ 私は先日訪れたボルネオ島・キナバル山やその周辺の自然の美しさをぜひ日本の人々に知ってもらいたいと思う半面で、それを求めてたくさんの観光客が群がった時の弊害を、ついつい考えざるをえませんでした。それでもやっぱりマレーシア好きのゆーぽっぽとしては、一度ぜひあのホタルの光がつくりだす幻想的な光景を、少しでも多くの人に見てほしいと思います。言葉ではうまく伝えられませんが、きっと心が洗われるはずです。
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