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ちょうど一年前、自分は帰国の途についた。
オランダにいたのはたった2年数ヶ月の滞在だったけど、
毎日毎日いろんなことがあるせいか、時間がたつのがすごく遅かったのを良く覚えている。
だから留学報告の講演を頼まれた時、もう一年たったかとあらためて驚いたものだ。
実は今回の発表はかなり重かった。
あたえられたお題が「オランダの科学の最新情報について」というものだったからだ。
自分の研究を発表することには慣れているのだけれど、
そんな大局的な視点は持ち合わせていない。
自分の研究室のテーマでも話せれば良いのだけれど、
この一年の間に、自分が留学していたラボの助教授、教授とあいついで来日し、
それこそ自分が帰国した後の最新情報まであらいざらいしゃべってしまっていたんだ。
それを今さら自分が繰返しても、彼らより明らかに劣る内容になり、つまらないこと必定だ。
せっかくの帰国記念日にそんなことを喋るのは自分にとって我慢がならなかった。
必死に考えたすえ、研究システムの違いについて話すことにした。
ヨーロッパ人は働かないし、研究設備も日本より劣るのに、日本より優れた研究成果が出ているのは何故か?
それは研究資金のせいではなく、システムのせいではないか。
日本は自分の成果を守るために、何でもかんでも自分の中で解決しようとするけれど、
ヨーロッパは共同で行う事が多い。
それはもともとお金がなくて、そうするしかないからなんだけど、情報化時代に入って研究が1つの大学や企業でカバーしきれなくなってきている現代においては、逆にそういうシステムが強みになっているのではないか。
日本もそういうことを、もっと行うべきなのではないか。
というようなことを、自分の経験やら、まわりから得た情報やらを用いて説明した。
それは決して楽ではなく、ネットを使ってかなり調べたし、話の構成も結構考えた。
スライドができあがったのは前日。
だから発表練習はボロボロ。
普段の発表と中身が全然違うので、話のリズムがとれない。
その夜は遅くまで眠れなかった。
でもなぜか本番はうまく行った。
時間もそれほどオーバーすることなく、
一気にしゃべることができた。
わかりやすかった、と言ってくれる人が多かったし、
内容を誉めてくれる人もいた。
みんな同じようなストレスを感じていて、それが腑に落ちたのだと思う。
おかげで懇親会でもいつになく忙しく、
ものを食べる暇もあまりなかった。
何より嬉しかったのは、
自分の仕事がこの場にふさわしいものに変っていたことだった。
つい先日まで、自分は外と内の顔が違っていた。
外で求められる事はいろいろあって、
それはとても嬉しかったのだけれど、
中では全然冴えない事を繰返していた。
外で得た情報や、ネットワークも
中で生かすことが全く許されなかった。
でも今は違う。
自分の中でバラバラだったピースがつながり始め
動き出そうとしているエネルギーを感じる事ができる。
それは車のアイドリングのようにぐるぐる廻っているだけで、
まだ実際に走り出してはいないけれど、
確かにエンジン音は聞こえてきていた。
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帰ってきてDVD見た。
mixi見た。
風呂に入って、そして寝た。
<中略>
忘れていた感覚がもうひとつ蘇ってきたのだった。