しあわせカフェ&ショップ

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   5(完結)     

流氷をさがして 5

うほ~、今日はメチャクチャ寒い。
昨夜からの風は止んで、無風状態の中、キーンと冷えている。

「流氷、今度こそ着岸したようだよ。ご飯済んだら見ておいで」
と宿のおばちゃんから、声が掛かる。

うーん、いよいよだ。
ここまで来るの長かったような、短かったような。
突然の思いつきで、旅に出て3日目。
無計画のワリには、早い目的達成かもしれない。

一緒に泊まっていた男子大学生2人と、海岸へ向かう。
ちなみに1人は早稲田、1人は学習院、私は・・・。

ここで恋が生まれれば、将来は約束されたようなもの、でもないか。
でも当時は、景気がよかったので、人手不足で、
有名大学なら、本当に将来が約束されていたかのように見えたものだ。

ところが現在のこの不景気、である。
課長クラスでリストラされて、マンションのローン払えず自己破産!
ダンナは行方不明で、家族離散。
この年じゃ、キャバクラ勤めもままならず、
場末のスナックで、やつれたオヤジと恋の逃避行、
無念の心中、
になっていたかも・・・。

ああ、恋が生まれず、本当によかった~。
と、くだらない妄想はともかくとして、本題は旅の回想でありました。

JR北浜駅、確かまだ駅員さんがいたような...。
その後無人駅となり、駅舎がカフェとして生まれ変わり、
TVで放映された。
ホームからドドーンと、オホーツク海が望める、絵になる駅である。

その駅から今日は、
ああっ、とうとう見えた! 一面の流氷!

海岸に走り出る私たち3人。
やったー、ついに御対面!

近付いてみると、氷の原のように見えたのが、
大きな氷の塊がぶつかり合って盛り上がってくっついて
沖の方まで続いているのがわかる。

「おい、ちょっと乗っかってみようか」
恐る恐るその流氷の塊のひとつに乗ってみる。

ギシギシ~と、大きな音を響かせて、体重のかかった部分が沈む。
やっぱりくっついてない。
バラバラだ。

ということは...。
「ね、この流氷持って帰って、ロックで乾杯しようよ」
全く、すぐ飲むことを思いつく若かりし頃の私である。

♪2月は、流氷で、酒がのめるぞ~。
 酒が飲める飲めるぞ~、酒がのめるぞォ~♪

全日本酒飲み音頭が聴こえてくるようだ。

とにかくその提案は大賛成をもって迎えられ、
我々3人はヨイショっと、1番小さそうな塊を浜辺へ引き上げる。

むむっ!
重い。想像していたよりはるかに重い。
さすが遥かロシアから流れ着いただけのことはある。

エイコーラ、エイコーラ、と引っ張るのだが、一向に上がらない。
その時、滅多に通らない汽車が警笛を鳴らしながら通り過ぎた。

ポオ~。
頑張れよ~、とでも言いたいのか。
この場で警笛を鳴らす必要は、列車側にはまるでないと思われるので、
ヒマな運転士が、声をかけてくれたのだろう。

これは田舎ならでは、ほのぼのサービスだ。
(ホントはむやみに警笛を鳴らしてはいけないのだそうだ)
心も体も(流氷を引っ張ったので)温かくなった私たち、
これを機に、流氷ロックで乾杯を、あっさりと諦め
宿に戻ることにした。

宿に戻りおじいちゃんに事情を話すと、
去年拾ってきたヤツを冷凍庫に入れてあるから、
それで1杯やればよい、と言う。

何のためにとってあるのか、と尋ねると、
「ワシも流氷で飲もうと思ってな、毎年拾ってくるんじゃ」と笑った。

おじいちゃんに出してもらった流氷の塊を砕き、グラスに入れる。
ウイスキーを注ぎ、3人で乾杯。

やっと流氷に遭えた嬉しさと、
もうそろそろ、旅の終わりを予感して飲んだその味は
少ししょっぱかった。

中はアムール川の真水だが、周りはオホーツクの海水だ。
しょっぱくて、当然か。

とにかく、旅の目的は果たした。
そして、気ままな旅、と言う非日常の禁断の世界に
足を踏み入れてしまった私は、
その後、何年にも渡って、北海道に通いつめることになるのだ。

続きは、またいつかお話しましょう。
では、流氷にカンパ~イ!


冬のトーフツ湖


THE END


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