ポケットの中にいつも少女

ポケットの中にいつも少女

2005.12.20
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カテゴリ: 小説
もう返しちゃったんだけど萌友さま第6弾。ようやくホモです。

声を聴かせて
****あらすじ****
大学バレーのホープ・邦彦は、怪我の後重大なスランプに陥っていた。以前と変わった所はないのに、以前のプレーが出来ない…周囲にも気遣われ、焦りを深める邦彦に思いがけないアドバイスで巧妙を与えてくれたのは、聴覚障害の高校生・幸也だった。
邦彦のファンだという幸也。何事にも前向きに取り組み、豊かな感受性で様々な事を示唆する幸也との出会いは、邦彦の中の何かを変え、次第に愛しさを募らせていった。だが、そんなある日、幸也の目の前で邦彦が事故に合い…!?
****************

有田万里さんは、 ご本人のサイト の略歴等見る限り、異色のBL作家さんです。
あまり数多くない小説作品にも、BLの横道(邪道とまでは言わないけれど)的なテーマを取り上げられているようです。(現在既読は「 Sの悲劇 」のみですが)
本作も、その一であります。主人公の邦彦は大学バスケのホープ。しかし、邦彦のファンで想いを交わす少年・幸也は、いわゆる聾(ろう)者です。
障害を持った主人公のBLはままありますが、この作品がそれらと一線を画しているのは、「ありのままの聾者の姿」を描いた点です。
勿論、BL小説ですからフィクションではあるんですが、作者があとがきで自ら「必要以上に美化もしなければ、涙を押し売りするのも止めよう」と執筆前の決意を明かしているように、耳が聞こえないという「特徴」を持った主人公の、普通のBL小説になっています。

全日本に手が届くスタープレイヤーである邦彦は、相応の自信は持っていてもけして奢ってはいません。バレー馬鹿というか、思い込んだら一直線なところはありますが、しかしそれなりに分別もあり、幸也の事をハンデがあるからとやみくもに守ろうとしたりせず、聴覚障害という未知の事に真摯に向き合い、やや守りに入っていた幸也にハッパをかける様は、とても好感が持てます。
幸也はかつて「イルカみたいな声だ」とからかわれ、声を出すことに臆病になっていたのですが、そういう人に向かって「自分の名を呼んで欲しいから、しゃべって」とはなかなか言えるものではありませんよね。
一方の幸也も、一途で一生懸命で愛おしい少年です。邦彦のバレーに励まされた事がきっかけでファンになり、自らもバレーをしているのですが、それだけに留まらず、何事にも明るく積極的に取り組み、豊かな感性で自分の世界を広げていきます。
作中、耳が聞こえないことにより、困難に陥る場面があります。また、いくら前向きに生きていても、聾者であることは幸也にとっては大きなコンプレックスである事は変わりません。
しかしそれは、たとえば何々が人並みより劣っている、とか、コレコレが出来ない、その他人それぞれ皆が持っている様々なコンプレックスなどとなんら変わる事のないものなのだと、けれどもそれが「障害」という形で認定されている故に差別を受けたり、理解されなかったりすることもあるし、その逆もあるのだということを淡々と書き出し、その上でその事実を理解しようと努めた邦彦との、実に地味で穏やかながら、しっかりと共感できる丁寧な恋愛の物語に仕上げています。

ただ、出来れば読んで欲しいので具体的な感想を割愛させていただきますが、ここからがきっと評価の分かれるところだと思います、書き下ろし続編の「囁きの向こう側」
これは、邦彦がバレー以外にも夢を持って国内企業に就職し、幸也が留学した後のアメリカでの物語になるのですが、ここで重大な事件が起こります。
全く作風が違うわけではないのですが、アレの後にコレですか!?という違和感は否めませんでした。
けれど、表題作以上の波乱のドラマを、やはりじっくりと書いている佳作です。

ただね、個人的にね、他の全て良いと思った事を打ち消してくれる台詞を邦彦が吐いたのよ…
表題作で、それが邦彦の真剣さで、強さだと思った部分が、ただの無神経さに感じられるようになっちゃって(T.T)
いや、まあ当事者である幸也が全く気にしてないからいいんだけどさ。
それに、ある意味、それだけキャラクターが生きているという証明だったのかもしれませんが。
物語の面白さと、私が反発を感じた部分も含めて、ぜひ読んでいただきたい本だと思います。
アフィリの画像も出ないどころか、絶版表示すら出ない絶版本ですが(^^;


蛇足で私の体験記を。
どういうめぐり合わせか、聾の人と接する事がわりあい多いのですが、中でも印象に残った方が二人ほど。
一人は、10代の終わりに、街中で出会った同年代の男の子。駅前の商店街を待ち合わせ場所に向かう私を、ナンパしてくれました。
生まれてはじめてのナンパです(笑)嬉しかったんだけども、何しろ待ち合わせ相手は当時付き合い始めて間もない旦那。片言の手話と筆談で少し雑談をしてお断りさせてもらいました。
もうお一人は、2、3年前に旅先の昼飯処で出合った家族連れの、お嫁さん。姫よりちょっと小さい娘さんを連れてらして、その子が私達のテーブルに来たのがきっかけでした。
聾者はお嫁さんだけだったのですが通訳を交えず、こちらは片言の手話と怪しげなジェスチャーでしたが、旅先での些細な会話も交わすことが少ないと、とても喜んでいただき、私も楽しい時間を過ごさせていただきました。

コミュニケーションの手段は多いにこした事がないですね。超初級の手話でも、やってなければ得られなかった経験です。
もうちょっと暇になったら、姫と一緒にもう一度手話を習いに行こうかな。





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最終更新日  2005.12.20 11:54:04
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画像もないのね~  
こんばんはです♪

大好きなこの作品、絶版本なのですか~。ほえ。
これだけ古くても大好きな作品なので、やっぱり沢山の方に読んで欲しいなー。

後半から「ほえ?」という内容になってますが、前半の
お話は大好きで何回も読み返しました。(^o^)丿
音って、肌でも感じるものなのですね。

先生の作品「花を買う男」も後味が悪くてオススメです~。
(後味が悪くてオススメも失礼ですね・汗)

(2005.12.21 20:24:54)

Re:画像もないのね~(12/20)  
es1082-あや  さん
ころころリンゴさん

こんばんはです♪
そうらしいんですよ、画像も出ないの。尼尊では出るんですが、ここでは使えないしね。
名作なのに、もったいないですよね!

リンゴさんも後半は「ほえ?」でしたか。
アレはアレで問題意識の高い作品だし、独立させればもっと違和感なく読めたのにな~と思いますが。
音って、ほんとに肌で感じるみたいですよ。
カウンターからお客さまを呼ぶ時に机をドンドンすると、大抵気づいてもらえます。

「花を買う男」、正に今探し中の作品です。これも後味悪いのか~…クセになりそうです(笑) (2005.12.22 00:17:38)

花丘魚と子!?「花を買う男」  
ジャム さん
あまりにご無体な変換で唖然。この気持ちをあやさんにも~。

「花を買う男」ハードカバーの旧版持ってます。
確かに後味悪いかも。でも好きです。
コレを読んでから有田さんにはまり当時コンプリートばく進しました。
昔舞台にもなったそうなのですが、見てみたかったです。残念。

有田作品はいかにもBLな「ワン・フォー・オール」「ミッドナイト・2・コールズ」も好きです♪ (2005.12.22 10:33:29)

続き  
ジャム さん
都合のいいわたしの頭は、前半のお話クローズアップで記憶。

あ、でも

>ただね、個人的にね、他の全て良いと思った事を打ち消してくれる台詞を邦彦が吐いたのよ…
表題作で、それが邦彦の真剣さで、強さだと思った部分が、ただの無神経さに感じられるようになっちゃって(T.T)

気になります。読み返してみよっと。
(2005.12.22 10:38:45)

Re:花丘魚と子!?「花を買う男」(12/20)  
es1082-あや  さん
ジャムさん

コメント新着欄を見て一瞬「栞と紙魚子」と見間違えて、そんな記事書いたっけ?と悩んでしまいました。
すごい変換だ…!!(爆笑)

「花を買う男」旧版はベルベットロマンシリーズですね。
当時あの耽美耽美した表紙を買う勇気はいまいちなかったのですが今頃ちょっと後悔しています。
>コレを読んでから有田さんにはまり当時コンプリートばく進しました。
ということならば、是非読んでみなくては!
映画評論などなさっている有田さんの作品ならば、舞台化にも耐えうるような気もしますね~
気になった台詞他については、後ほどこっそりとお返事します。 (2005.12.22 23:29:32)

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