飛鳥京香/SF小説工房(山田企画事務所)

飛鳥京香/SF小説工房(山田企画事務所)

★編集済★ガーディアンルポ02「人間樹の星」編集中


作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yama-kikaku.com/
この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1409gl/
タイトル編集
ガーディアンルポ02「人間樹の星」人類指導者MEと、宇宙の敵ROWの戦い。ROWは、過去に遡りMEの家系への攻撃を。過去へ送り込まれた人類戦士「ガーディアン」の戦い


(内容は編集中です)
249
 ヘルムはようやく頭をあげ、コンソール・パネルを見た。眼がかす人でいた。まるで鉛
が体じゅうを満たしているようた。モニター・スタリーンに惑星ナーダ77の姿が近づいて
いるのがみえる。
 意識をはっきりさせるために、強化剤を医療携帯パッタから取り出し腕にあてる。
 頭をふる。か々り長い間意識を失っていたような気がする。コッタピット内部を初めて
目にするような錯覚さえあるのだ。
 かたわらのクリスを見た。また彼は意識を回復していない。ヘルムのテレパシーによる
呼びかけにも応じない。外傷はたいしたことがないように見えるが、コンソール・パネル
の上にうつぶしている。
 ヘルムは思わず悪態をついた。
「くそっ、奴らめ」
 ガーディフン内部にか々りのROWがまぎれこみ、破壊活動を行産っている。ガーデj
フンの活動に重大な影響を与えているのだ。
 地球出発時に仕掛けた小型爆弾がヘルムとタリスの宇宙船のコンパス・システムを狂わ
せ、困難産旅を彼らK強いた。
 もとはと言えば、地球置時代の上級ガーディアンの失態が原因なのた。
 グレイはガーディアy区分による地球1時代の重要なファタター。MEの父の父系統
50 に属する人間である。その彼がROWの精神的攻撃を受け、地球での生活に嫌悪感を持っ
  た。いや、そう思わされたのだ。彼は秘に地球を脱出した。が時代拙当の上級ガーディア
  ンは全くその行動に気がつか痙かった。
   そのために、ヘルムとクリスの下級ガーディアンがこの銀河辺境のナーダ77まではるば
  るや.でくる事と々った。
 至世歴125年、地球にあの偉大々MEが誕生した。MEは絶滅の縁にあった人類を新たな
道、栄光の道へと導いた。
 この新生人類の前に立ちふさがったのがROWだった。彼らは新生人類に戦いを挑み、
戦闘は果てしなく統くように思われた。
 ROWは一つの作戦を発動した。地球歴史への挑戦、あるいは干渉である。過去の地球
ヘタイム・ジャンプを行ない、MEを生みだした祖先の人々を地球史上から抹殺する作戦
である。さらに関連入物や、その環境唾でにも魔手をのばした。一入の人物の精神的変貌、
そしてMEの先祖K対する環境因子の変革はMEの生誕をあやうくするものだった。
 このROWの作戦を察知した人類は、MEの家系を守るため、すなわち自分達、新生人
類を守護するため、地球の過去へ瀕った。
 人類の発生より、MEが誕生するまでのMEにつらなる人々をROWの攻撃よりガード
251
するため、あらゆる時代へと自ら志願した戦士を派遣した。この人類戦士達をガーディフ
ンと呼ぶ。
 ナーダ77は一風変わった惑星だ。地球の中世が、まだこの星に息づいている。星すべて
を領主一人が支配している。領主の城が凝っているのだ。
 ベルギーの画家マグリットの『ピレネーの城』の絵をご存じだろうか。波の上空に浮ぶ
不思議な岩、その上の城。
 まさにあの通りなのだ。空間に浮かぶ岩、その岩の内部に城が構築されていた。この岩
はーー小唄石といってもいいだろう-ナーダーー‥の上空を自由に往来できた。フライング
・キヤッスル。それはそう呼ばれていた。
 宇宙船はナーダ77の引力圏へ人った。船の外観は唄石そっくりだ。彼らガーディアンが
飛来したことを領主にかぎつけられ々いようK処置してあるのだ。
 激しい衝撃が二人を襲う。船はナーダーー‥の地面K激突し、大地にのめり込んだ。この船
の機能はどうやらROWの爆弾のかかげて、ずたずたにされているらしい。
 ガーデーアン内部KROWのスパイが多数潜入している事実が本部で周知の事となって
すてK久しい。ROWの擬態技術は超一流なのだ。人間そっくりに変化できるのだ。
 ヘルムとタリスの乗った船も工作されていた。もちろん、これからの行動も妨害される
52 可能性がある。
   しかし、彼らは、グレイを助け出し、地球に連れもどさねぱならない。そうし々けれぱ
  未来KMEが存在し々くなる。地球史が変わり、ヘルムもクリスも存在しなくなるだろう。
   金髪長身のクリスはいまだに意識を回復していない。ヘルムは彼の体をコンソールミハ
  ネルから引きずりかこす。念のため体を調べることKした。ロケット後部に装備されてい
  る医療チュープヘと運ぶ。この中で自動的にタリスQ休は隅々まで調べられ、適切な処置を
  受けることかできるはずだ。
   唐突に、船内のシグナルが点滅し、警報が響いてくる。
  ″コノ船ハROWニ汚染サレテイルー危険ダ・乗員ハタダチニ週給セョ´
   ヘルムは医療チューブごとタリスを引きずりだそうとした。しかしチューブは徽動だに
  しない。船内に警告がくりかえされる。ブザーが鳴り始める。
  ″週船セ゜・退船セ゜″
   クリスをチューブから出そうとする。今度はチューブの開閉機構が作動しない。急いで
  船外へ説出し痙ければ々らない。どこにROWがいるのたろうか。明滅するランプは自爆
  時間が迫っていることを示している。
   ヘルムはレイ・ガンを使い、やっとのことでタリスをチューブから引きずりたす。宇宙
  服を着る間ももどかしく、タリスを背負い、ハッチヘと向かう。

253
 やっとのことで船から離れ、かろうじて、安全圏にのかれた。同時に船体は大きな爆発
をおこし、ふきとんだ。爆風がヘルムと、彼の背中のタリスを痙ぎた訟した。ナーダー竹の
大気はほとんど地球と変わらない。
 彼らは完全にROWにしてやられた。船がなく々った。つまり、グレイを助けだしたと
ころで、地球へ帰る足がないのだ。おまけに助けを呼ほうにも、連絡手段もない。
 領主の忠実な防衛隊がすぐさまやってきた。有翼人だ。サイボーク技術で加工されたキ
メラ人間だ。彼らは背に翼を持ち、自在に空を飛びまわることができる。さらに彼らはレ
イ・ガンを手にしている。
 あたりは砂漠地域だ。隠れようがない。
 ロケットの爆発が、有翼人達の注意をひいたのだろう。さらに有翼入の上には、あのフ
ライング・キャッスルがヘルムの視界いっぱいK姿をあらわしていた。有翼人の守護神の
ごとく、絶対的々存在感をナーダ77のうすぐらい空の上に与えている。
 わずかな可能性Kすらヘルムは賭けなければならない。絶望的毘、ヘルムはそれらを青
い瞳を通してなかめていた。
 力強い羽ばたきと共に、ヘルムの目の前に一入の有翼人が舞い降りてきた。
「何者だ。伺用でこのナーダ77Kやってきた」
 いささか不明瞭だったが、その有翼人は斂河ぢ通語を話した。
54 「私はマット。貿易商人です。けっしてあやしい者ではありません。ごらんの通り、船が
  故障して、不時着したんです」
  「ほり、貿易商人だと」
   他の有翼人達は、上空でヘルムとクリJをねらっている。
  「ここはナーダ77だぞ。ここには『地獄船」しか立寄れない。一般の貿易船はこの星に足
  を踏み入れようとし忿いし、むしろ恐れている。知っての通り、あの輸出品の分かげで窟
   ニヤリと笑い、地平線の彼方にある森林らしきものを指さした。顔のうろこが不気味だ
  った。
  「さあ、はっきりしろ、分前達は密猟者か、それともあの汚らわしい地虫族と取り引きに
  来たのだろう。素直に言った方が身のためだそ」
  「違います」
  「まだ、しらばくれるのか。よし、とらえる前に少し痛い目に会わしてやろう。俺遠の力
  をみせてやる」
   その有翼人は、上空で輸毘なっている有翼人達の群にまじる。彼らはヘルムを見下し々
  がら、力強くはばたき始めた。翼はナーダ77の大気をふるわせ、振動波が二人のガーディ
  アンK襲いかかってきた。ヘルムは地面K這いつくぱった。まるで巨人の足に踏みつけら
  れているようだ。体がきしんだ。耳の鼓膜か破れそうだ。ヘルムの目の前がくらんできた。

  その時、ヘルムは自分の体が地中にひきずりこまれていくのを感じた。
   気がつくと、ヘルムはスポンジ状のものの上に寝かされている。あたりはひどく暗い。
   「客人、目ざめたかね」
   声がした。ひどく聞きとりにくい発音たが銀河共通語には遠いない。そいつは三対の節
  足を持ち、薄褐色の粘性の肌をしている。身長は一斑くらいだろうか。かまけに胴まわり
  も】斑くらいある。昆虫を思わせる生物遠がヘルムを囲んでいた。その中の一入がヘルム
  K話しかけている。
  「むっと驚くことはない。ナーダ77K棲んでいるのは奴ら有真人だけじゃないことは、分
  前さんだって知っているだろう」
   彼ら地虫はナーダー]‥の地中に住む種族なのだ。ナーダ77の歴史をふりかえると地虫遠の
  方が古くからこの星に生息していたのだ。有翼人達は遅れてこの星に出現した。他の星か
  ら渡ってきたらしい。
  「それじゃ、ここはナーダ77の地下トンネルってわけか」
   ヘルムはあたりを見渡した。わずかな光を出す発光体が地下トンネルの壁面に点在して
  いる。
  「タリスはどこだ」
25 「か前さんの連れかい。すまない。助けるひまがtかった。地面に脱出口を開け、分前さ
56 んを地下トンネルヘ引きずりこんだが、あいにく連れの方は、奴らに空へ引きずりあげら
  れたんだ」
   タリスが奴らに連れ去られたと聞き、ヘルムはなぜか体の半分を切り離されたような気
  がした。
   ヘハムは弱気になった。
  「々ゼ、俺を助けてくれたんだね」
  「訟やむや、聞いてい々いのかい。そいつはかかしな話だな。あんた方のか偉方から助け
  るようにだのまれたんだ」
   ヘルムはそん々話は本部では聞かされていない。
  「命令はどこから」
  〔地球からガーディアンのクーリエが来たのさ」
  乙この星には地獄船しか着陸できないはずだが」
  「そこはそれ、色んなやり方があるってもんさ」
   とうやら、今はこの地虫を信用するしかないなとヘルムは思った。しかし本部でこの協
  力者のことを聞いた覚えの々いことか気にかかった。記憶欠落をかこしているのだろうか。
  千思議だ。それに地虫達はこの件についてどの程度まで知っているのだろうとヘルムは考
  える。
257
「目標のことたが」
「グレイのことか。それがち,っとむつかしいんたよ。とにかく、俺について来てくれ。
入間梅園の現状をみせよう」
 ヘルムは、地下トンネルを地虫の主価格の男のあとについて歩きだした。
「まだ名前を聞いていなかった々」
 薄暗い地下トンネルを歩きなから、ヘルムは尋ねた。
「俺はスキャツグだ」
「そうか、俺は」
「わかってるよ。ヘルムだろう」
 どうやら、地球本部からの連絡は確かにきているようだ。
 トンネルは大きな樽造物に通じていた。
「我々のステーションだ。ナーダ77の地下のあちこちにこんなのを作ってあるのさ」
 中へ入る。かなり広い。一部屋は地球のガーデづアン支部とみまちかう程、設備がゆき
とどいていた。大きなモニター・スタリーンが装備されている,
「こいつが問題の入間樹だ」
 スキャプグがスイツチをいれた。
 樹海が目の前に拡がる。しかしこの梅々は、恐ろしく正確K等間隔K並んでいた。さら                                                                                                                  |
58 に地球の樹林のよりに緑色をしていない。うす紫色の空をバプタK、そいつは肌色をして
  ナーダ77の大地にはりついているのだ。
   それは人間の体なのだ。入間の体にある種の処理をほどこし、ナーダ77の樹園の地域K
  植えると、それは漸次、人間の姿形を残しつつ変化していく。体の内部は解体され、異な
  っ今生物形態へと改変されていくのだ。
   入間K見えなから、入間ではなくなってしまう。
   このナーダ77K人間樹とたるべき種人間を連れてくるのかむ軋暇々のだ。彼らは例えば
  難破船の入間を拾いあげたり、是々を襲って人間をさらってくるのだ。とびきり上等の肉
  体はサイボーグ手術用として他の是に売られる。がそれ以外の肉体はナーダーー‥の養殖大地
  の入間樹園で種人間にされる。
   入間樹は段々と大きく成長していき、胴体からはえた肢から果実ができる。その実の中
  には人間の姿はしたから人間でない新しい生物ができあがっている。主人の言う事を厳守
  する生物遠の利用価値はそれこそ無限だ。
   あらかじめ聞いていたとはいえ、ヘルムはショッタを受けた。はき気がした。
   怖気立ち、モニター・Jタリーンから目をそらせ、ヘルムはスキャッグに尋ねた。
  「グレイはもう檜えられて久しいのか。どうたんだ」
  「わからない。在庫品のリストはあのフーフイング・キャ″スルに住む砂憧入間の頭の中に
259
あるんだ。何しろこの数だ。調べようがない」
「グレイがどうなったか調べる方法はまったくないわけか」
「いや、一つある」
 スキャッグは無表情な複眼をヘルムヘ向けた。
「新しく、地獄船から入荷した品物、つまり入間は、必ず、このメモリー・yンのチェッ
タを受ける。だからメモリー・マンK近づき、探りだせばいいんだ」
「なんだって! それじゃ俺も入間樹の種入間になれというんだな」
「そう。他に方法はない」
「地獄船か」
「ちょうど、地獄船が来る時期なのだ。ナーダ77に着陸する前に乗りこまなければなら々
い。準備はしてある」
「手まわしのいいことだ」
「いや、本部の指示だぜ。それじゃ、詳しい事は、俺の部下から聞いてくれ」
 弱々しくヘルムが部屋から出ていくのを確かめて、Jキャッグは別のスタリーンを写し
た。そのJタリーンの入物K話しかける。
「あれでよかったかね」
 スタリーンの人物は答えた。
60 「けっこうだ。スキャ″グ。すまないが、もう一つ頼まれてくれないか」
  「何でもするさ。あんたKは世話になっているからね。この地下ステーションの建築にも
  協力してもらっていることだし。このチャンスに俺達も立ちあがるさ。有翼入とでフイン
  グ・キャッスルをこの星から追い出してやる。あの汚々らしい入間樹の栽培を俺達はたま
  ってみているわけKはいかないからな。ここが潮時だ。俺達にも計画があるんだ。助けて
  くれるだろり」
  「わかった。すまんが、その計画を聞く前にやってほしい事がある。ヘルムとタリスのロ
  ケヅトの残骸からこのブラッタ・ボッタスを捜してきてくれ」
   スタリーンに小さな箱が写った。
  「頼む、絶対に見つけてくれ。非常に大切なものだ」
  「わかった。すぐに行ってこよう」
 ヘルムは、ユキャッグの部下に旧式のロケット発射場へと連れてこられた。
 かなり老朽化した個人用タルーザjだ。地球でなら博物館でしかか目にかかれない代物
だ。
 スキャッグの部下はあまりうまく銀河共通語を話せない。
「あなた、これ乗る。空へあがる。上へあがり壊れる。宇宙に浮かぶ。地獄船くる。袷う
261
 「ひどい話だ々。本当に地獄船が来るんだろうな」
 「本当の話」
 スキ々ッグの部下は急にヘルムの右腕に何かを剌した。
 「うわっ、何を:・・:」
 言葉か出てこたい。体力が急に消耗したように感じた。
 ヘルムは地虫の節足にしっかりとつかまえられ、コックピットに無理やり押しこまれた。
 スキャッグの部下は旧式タルーザーの発射ボタンを押し、ロケットは火山口から上空ヘ
飛びあがっていった。
 タリスが目ざめた時、体は小刻みに震えている。今、新しく生まわたよら々・気分かする。
なぜだ。体調が悪いのたろりか。大地が震えている。
 段々と、まわりの光景が眼に々じんでくる。どうやら宇宙船にいるのでは々いらしい。
鉄格子が視界のじゃまKなっている。通路らしきものが前にあり、窓から向こうの空か見
渡せた。うす紫色の空だが、驚いたことにそれは恐ろしい速度で動いている。ここはナー
ダ77々のだろうか。側をgる。ヘルムがいない。死んたか。近くrいるならはヘルムのテ
レパシーを感じるはずだ。くそっ、どうしたんだ。
 思わず足を踏みつけた。今まで気がつかなかったが、そこは金属でなく、岩でできてい
62 る。外の通路も岩盤でできている。ここは一体全体どこなんだ。
   タリスが考えあぐねている時、通路に機械人間が現われた。そいつは機械人間としか呼
  びようがない。ヒューマノイドだが、華奢な体で、巨大な頭部がその上にのっている。補
  助機器が全身に附加されている。自分の力だけでは歩けないようだ。円形の機械が腰をと
  りまいて接続されていて、三脚の補助足がでている。それでようやく体を支え、体の移動
  を可能Kしている。
  「君、どこの星から来たんだね。有翼人達はどうやら手荒K扱ったらしいが、私はもっと
  紳士的だからね。あ、そうそう。これは失礼、自己紹介してかこう。私はシータ。御覧の
  通り、メモリー・yンだ。そしてナーダ77の情報網を】手にしている。いねばこの星のだ
  った一人の情報省さ」
   ナーダ77か。やはりたどり着いていたのか。どうやら俺はこの星の奴らにつかまったら
  しいな。さて、どう話したらいいものか。タリスは黙っている。
  「ほう、返事が々いね。答えるつもりか々いのかね。まあ、いい、どうせ答えざるを得な
  くなるからね。私はこうみえても心理技術者だ。君の心の扉を開いてみせよう。楽しみに
  少し待っていたまえ」
   シータは通路の彼方へ消えた。しばらく様子をみてタリJは鉄格子Kさわってみる。柔
  らかなものだ。タリスか力を加えると、簡単に曲がる。何しろタリスは荒事が得意々のだ。
通路へ出て百房くらい歩くと扉がある。外へ出た。
 地面が々い。空に浮かんでいた。いやナーダ77の大地に向かい落下しているのだ。もう
ためかと思った瞬間、鋭い爪で上からつかみとられた。見上げると、翼を持つヒューマノ
イドがタリスをつかまえ、上昇していく。クリスは始めて、今まで自分か閉じ込められて
いた建物を見た。巨大々岩が空に浮かんでいた。そいつは恐るべき乙ヒードで空間を自在
に移動しているのだ。冷汗がKじんでくる。
 フライノグ・キ々ッスルの入口に連れもどされた。扉の所にシータが待っていた。
「再びフライングーキャプスルヘようこそ。どりだね。空を泳いだ気分は、ショッタのあ
との無力感。すばらしい実験さ。さあ、これで私の心理技術も君には使い易くなっている
さ」
   人間樹の番人ピッタの目の前に広がる風景はいつも同じなのだ。ビッタのナーダ77での
  生活が何の変化もないのと同一だ。ビッタは幼い頃、地獄船でこのナーダ77へ連れてこら
  れた。しかしまだ入間樹の種入間となる程、成人していなかったので、領主は、彼を入間
  樹園の番人の一入としたのだ。ビッタは十才くらい。まだあどけない少年なのだ。
   ビッタ達、番人が住む小屋のまわりといえば、もちろん入間樹が果てしなく広がってい
26 るだけ々のだ。その果てがどこなのかビッタ達も知らない。また番人が何人いて、このよ
一一                                                           
64 うな番人小屋がいくつあるのか知らない。
   入間樹には肥料は不必要だ。有翼入かかなでる楽器のメロディが彼らを徐々毘変貌させ
  ていく。
   ビッタ遠は特に、移植初期の種人間が動かないよりに見はり、実か熟しきらないうちに
  摘与収っていく。また天敵地虫が人間奏を盗み陀くるのを防が痙ければならない。それら
  か粧らの仕事なのだ。
   種人間とは話をしてはいけない。がやはり友遠のいないビッタは話をしたくなる。こち
  らが話しかけても答えがかえってこ忿い種人間もいるが、最近植えられたグレイはちょっ
  と違っていた。
   だから、いつもグレイの前で立ち止まってしまう。グレイは灰色の髪をして、いつも苦
  しそうな顔をしている。眉間のしわが深い。
  「グレイ、ダレイ」
   種入間は眠りにつこうとしていた。グレイはピッタの再度の呼びかけでやっと眼を開け
  た。
  「やあ、ビッタか」
  「訟願い。地球の話をしてかくれよ」
  「困ったね。ビッタ。私はできるだけ地球の事を忘れたいのさ。私にとってはもう意味の
265
ない星だからね。今はこの安らかなナーダ77が私にとって故郷の星たんだ。地球は余りに
騒々しい」
「ねえ、グレイ。頼むから話をしてかくれよ。僕はナーダ77しか知らないんたよ。ど人々
風に騒々しいのさ。】度行ってみたい痙。地球ってど人々所」
「地球かね。私はそこで傷つき、逃れてきたんだよ。何度も話しているようにね。でも君
には面白いかもしれ々いね。子供が生きていればちょうど君くらいだろう」
「グレイ、あなたの家族は」
「いない。皆死んでしまったんだ。あるつまらない争いごとのためにね」
「………」
「ところでビッタ、地球には、動物ってのがいるんたよ。猫や犬やその他一杯ね。とても
可愛いのさ。私の子供も可愛かっていた」
 グレイはわずかつつ、心を開き、ビッタK地球の話をし始めていた。自分の子供に語る
よりたった。そんな時のグレイの顔はとても安らかにたる。彼グレイには、やさしさが、
心を安んじてくれる者が必要だった。
 グレイはROWKよって気がつかないりちに、生活の張りをなくされていた。グレイと
ビッグの話はいつまでも続きそうだった
266
267
 タリスはシータの心理分析を受けてjt!0 4z’Kの顔は苦痛にゆがんでいる。
 シーメは分析機によってタリスとヘルムがナーダ77K来た理由をすでに読みとっていた。
「グレイ。この男をガーディアンは捜しているのか」
 メモリー・マンであるシータは自分のデーターバンタから必要なデータをアウトプット
していた。
「グレイ。彼はそんなに地球にとって必要な男々のか」
 シータはタリスを連れて来た有翼人の∇Aを呼びたした。
「か前は、この男の連れが、地面に飲みこまれたと言っていたな。もう{度、調べてこい。
できれば、地下を捜し、死体を見つけてくるんだ。わかっているだろうが、地虫には充分
気をつけろ」
 地下は地虫遠の世界だ。有翼人は地虫の地下トンネルを非常に怖れている。有翼人はし
ぶしぶ命令に従い、手勢を引き連れ、出かけて行く。
 もし、まだヘルムという男が生きていて、地虫毘助けられているとしたら。そう考えてシ
jメはもう一つ手を打っておくことにした。
 今度は人間樹園を管理する有翼人を呼び出し、指示を与える。
「ISSSN-一丸〇九の入間樹の種人間を檜えかえろ」
「しかし、シータ。この男はすぐに第2期成長に入るのですが」
「この処置は私Kとってとても必要なのだ。わかるかね」
 シータは有蔵人をにらみつける。
「わかりました。かかせK従います」
「それから、植え変えた地点を私K言う必要はない。いや言ってはならぬ」
 最後の言葉に不審の表情をあらわしたが、有真人は、命令を実行するために、人間樹園
へ降りて行った。
「さてヽこのタリスの処理だが」
 シータは独りごちた。
 心理分析機はタリスの深層意識を探り始めた。驚くべきデータがシータに示される。
「この男の深層意識は伺だ。こいつは人間じゃないぞ」
 シーメはタリスの調査を明日、もう一度やりな釦すこと毘した。彼の疲労は著しい。長
い睡眠時間が必要となっている。それにそろそろ地獄絵が来る時期だ。その阜偏もしなけ
ればならない。シータは自室へもどり休んだ。
 Jキ々ッダは、ようやく地上Kたどりついた。ユタリーンの男から頼まれた物を捜すた
めに、危険を犯し、タリスとヘルムのログットの残骸の所へやってきたのだ。
 船の残滓はあたり一面K吹き飛んでいる。
268
 小一時吸捜し、ようやくか目当ての小さなポッタスを見つけだした。合金でできた黒い
箱。なぜこんなものが必要忿のか、スキャ″グKはわからない。
 遠くから翼の音が聞えてきた。有翼人達が船を調べにきたのたろう。スキャッグは地下
トンネルにすばやく潜りこむ。
 】群の有翼人か降りて来て、あたりを必死で調へている。トンネルの出入口に時限爆弾
を仕掛け、スキャ″グはすばやく地下ステーショyに向かう。
 あとはヘルムの働きを待つだけだ。それに俺達は入間奏園の攻撃を準備しなければ。そ
うスキャッグは思った。
 遠く爆発音が響いてくる。何人の有翼人を殺っただろうか。
 ヘルムの乗ったロケットは古い代物だ。ナーダ77の引力圏を出てすぐにエンジンがスト
ップした。恐らく地獄船もこれが罠だとは思うまい。ひどいロケ″トなのだ。
 地獄船のバル船長は、生命体の存在に気づき、拾っていくつもりに々った。yニュピュ
レーターを操作し、ひどく老朽化した船をド″クに収容Lだ。
 メディカル・システムでヘルムの体を調へたバル船長はほくそえんだ。
「こいつは拾いものだ。種入間にぴったりた。これでまた儲けが増えるってもんさ」
   ヘルムはまったくロがきけない。あの薬のかかげた。センサーで体の各部を詳細にチェ
  プタされ加工室へと運ぱれた。加工室には種入聞か}体ずつ生体チューフに入れられ保存
  されている。ヘルムも詰めこまれる。大昔の地球の奴隷船よりひと.い扱いた。彼は商品に
  すぎない。
   バル船長は往時の海賊船長の姿をしている。顎ひげをはやし、眼帯を士けている。宇宙
  パトロールと交戦した時の傷らしい。他の船員も似たりよったりの格好だ。腰には、接近
  戦K大きな力を持つレイーサーベルを装着している。
   伺年か前は、彼らも正規の貿易商船員たったろう。しかし多発する恒星間戦争か、<生
  の何かを打ちこわした。一價千金を夢みる者にとって入間の休の売買ほど、儲かるも応は
  々いのだ。戦争はサイボーグを数多く生み、また体の各部の需要も増大ざせた。
   特にナーダ77の人間樹から生みだされる亜人類は戦士として星からの多望が強い。地獄
  船は種入間を売り、亜人類を買って帰るのだ。
   地獄船かナーダー]‥に着陸した。そこは空港と呼ぶにはいささか寂しい感じたが、必要最
  小阪の設備はそろっている。
   メモリー・yyシータがバル船長を迎えに来ていた。
  「バル船長、ひさしぶりだね」
26  「3ヵ月ぶりだね」
70 「どうだいヽ景気の方は? モーダ地区でか々り大きな戦争があるって聞いているよ。戦
  士がかなり入り用だろうね」
  「いや、いや。俺はあそこまで行っていない。この船じゃ無理さ」
  「そうかな。しこたま儲けたという話を聞いている」
  「その話は聞き違いじゃないか。かっと、失礼、あんたはメモリー・yンだな。嘘はつけ
  々いなー
   やがて船長達はエアカーで人間樹園での収穫の様子を見K行く事になった。
   シータの方は残って地獄船が運んできた種人間を一体ずつチエ″夕することに々った。
  ・フyタ区分をし、それをすべて自身のデータバンタに記憶するためだ。
   ヘルムは、三脚の補助足陀支えられた入間が近づいてくるのを見た。どうやらチューブ
  の種人間を端から一つ一つ調べているようだ。彼がJキャツグの言っていたメモリー・マ
  yらしい。
   ようやく、シータがヘルムの前にやってきた。地獄船のマニュピュレーターにつかまえ
  られた折、ヘルムは奥歯陀しこんでいた強化剤を飲みこんだ。この薬がきき始めている。
  チューブが持ち上げられ、シータの于が近づいてくる。
   }瞬、シータが何か起こったのかわからなかった。気がつくと、シータは種人間に首を
  がっちりとつかまえられていた。恐るべき資力だ。かまけにすばやく彼の腰から抜き取ら
れたレイ・ガンが頭部に当てられている。ガードしていた有蔵人も手のだしようか々い。
「訟前は何者だ」
 苦しい息の下からシータが反逆者に尋ねた。
『誰でもいい、か前に聞きたい事がある』
 ヘルムはテレパシーで直接、シータの心へ呼びかけた。
「か前はエスパーだな。くそっ、わかったぞ。ガーデづアyのヘルムだな」
『なぜ、それを知っている」
 強力な精神波が、シータの頭の中で荒れくるっていた。爆発的々精神エネルギーだ。シ
ータはあらがいようがない。心理技術者であるシータにとって初めての経験だった。この
ような恐るべきエスパーと対峙したのは。正直K答えざるを得ない。
『タリスは我々の手にある。彼の心から君の事を胱みとったのだ』
『タリスはどこだ』
『フライング・キャッスルの中だ」
『よし、あとて、案内してもらかう。先にグレイの所へ連れていってもらかうか。もちろ
んダレイを知っているだろう』
『グレイの居場所は知らん。私が檜えかえるようK命令したのだ。どこに檜えかえたかは
知らん」

273
272
く子っ、しかたが々い。初めに檜えてあ、た所まで、案内してもらおう』
ヘルムは、シータの後から船の外へ出た。有翼人達はこちらを県ているが、手を出せな
い。二人はよりやくエアカーまでたどりつく。突如、シjタの補助足をヘルムはレイガン
で焼き切った。
フわっ、何をするんだ。足が改いと私は歩けないんだ」
『禿げないようにしたんだ。これからはこの車がか前の足だ」
 エアカjは人間梅園へ向けて走り出す。空には有翼人が、速まきにつけて来ている。か
まけにフライング・キ″″スルが徐々にエアカーの上空へ近づいてくる。
 眼前にJキ″″グの地下ステーションで改がめた入間梅園が広がっていた。恐ろしい数
だ。見渡す限り、白色の、あるいは黄色の、各々の時期の入間奏がどこまで続くかわから
改い程連改っている。
この中からグレイを見つけださねぱ改らたい。
 エアカjは人間樹園の中に人ってから、か改りの時間走り続けた。ヘルムの前を人間の
体が、次々と通りすぎていった。数千、いや伺万体の入間……。
 子れが等間隔で整然と並べられている姿は何にも例えようが改いのた。二度とこん改経
験はしたくないとヘルムは思った。
 急に、シータかエアカーを止めた。
『どうした?」
「ここだ。ここか、グレイを檜えてあったところだ」
 その場所ISSSN-∇几○九だけぽつんと除いていた。
「さて、どうするね」
 シー9x t! 2やりと笑い、ヘルムの方を見た。シータの眼はバル船長遠のエアカーを遠く
とらえている。エアカーには誰もいない。
 ヘルムはISSSN-一九〇九の近くの入間樹にグレイの徊くかを心で尋ねてみた。心
をまったく開か々い者もいる。ほとんどが心は空白状態に近い。誰もダレイがどこに檜え
かえられたか知らないようだ。
 人間樹との対話に夢中になっているヘルムの背後から、突然、レイ・サーベルが襲って
きた。バル船長と、地獄船の船員遠だった。エアカーの無線で有真人からこの異変を聞き、
待ちぶせていたのだ。
 間一髪、ヘルムはレイ’サーベルをかわしたが、片腕に激痛が走った。数インチのとこ
ろをレイーサーベルがかすったのだ。
 彼らは入間樹に隠れて、近づいてきたのだ。シータはその瞬間エアカーから勢いよく外
へ飛びだしたが、無様にも地面を這っている。歩けないのだ。補助足をヘルムに壊されて
いる。
274
275
 地獄船の船員は、歴戦ら雄が。次々と入れかわり立ちかわり鋭いつきをかけてくる。最
初人間梅の間を逃げまわっていたヘルムは、ようやく船員の一人を倒し、レイーサーベル
を手にした。
 互角に戦い始める。βらに梅園上空陀飛来したフライング・キ″″スルヘテレパシーを
先程から送っていたが、どうやらタリスに通じたようだ。いい兆候だ。
 しかし、有翼人も戦列に加わってき九。彼らはハープに似た楽器をかき鳴らし始める。
その音に同調し人間奏かざわめく。楽器にあやつられ、近接する入間奏が、ヘルムに向か
ってきた。見九だけで気か遠くなる敬だ。片手でレイeサーベルを使い船員達を相手にす
る。さらに片手でレイ・ガンを構え、盲撃ちを始める。次にはテレパシーで手近かの人間
奏をあやつり、他の入間梅に対立させる。
 人間樹が動き出したので、動きがとれなくなった船員達は、有翼人の助けを借りて、空
へのがれた。
「うわっ、助けてくれ」
 シータは敬体の人間奏に踏みつけられた。有翌人が急いで助けあげたが、虫の息だった。
 番人小屋の中で休んでいたビッタは、時々らぬ楽器の音に驚いた。しかもこの音は:・・:
ビとクは自分の任務を果九才時がき九と思った。これから演技力を要求されるぞ。ビ″タ
は身をひきしめた。小屋の側の入間奏に袋をかける。昨日、有翼人からISSSN-一丸
○九、すなわちグレイを檜えかえるように命令された時から用意してあった袋だ。袋をか
ける前に入間樹の顔にふれる。完璧だ。これ々ら見やぶれまい。ビ。タは小屋へもどり、
床下から箱を引きずむ出す。スイ″チを入れて、言った。
「よし、行動を訟こせ」
 一方、上空のフライング・キャ″ベルの中でも異変か起こっていた。心理分析室に監禁
されていたタリJが目ざめた。タリスも自らの力を発揮する時がきたのだ。
 『タリJ、起きろ、起きてくれ。助けか必要なんか』
 ヘルムのテレパシーか届く範囲にうまくフライング・キ″″スルが入ってきた。ヘルム
のテレパシーが、タリスK通じた。ヘルムの精神力がクリスの筋力系に大きく作用する。
大いなる力がクリyの体中にみなぎる。
 タリyは部屋のドアを体当たりで開け、側にいた有翼入の腕をへし折り、レイ・ガンを
奪った。回廊にいた有翼入をレイ・ガンでなぎたかしながら、操縦室へ向かう。ヘルムの
テレパシーがその位置を教えてくれるのだ。
 操縦室へ突入し、有真人に反撃の機会を与えずK数秒で全員をかたずけてしまった。部
屋のドフを内側からロ″タした。
 ヘルムを助けるためにフライング・キャッスルを降下させようとした。
「伺をするつもりだ」

276
 声が部屋全体から聞こえてくる。タリでほある事に気がついた。部屋のあちこちを見渡
す。どこかに弱点があるはずだ。タリスは盲めっぽぅにパネルを破壊し始めた。
「やめろ、やめてくれ」
 声は哀願した。
「頼む、やめてくれ。体を破壊するのはやめてぐれ。それは私の神経システムの中枢々の
だ」
「訟前は誰なのだ」
 タリスは手を止めて尋ねた。
「私はナーダ77の領主だ」
 こフインダ・キ″ッスルがそれ自体一つの生奇体だったのだ。そして領主だった。
「しばらくの間、言うことをきいてもらえるかね。そうすれば私も乱暴は働か斤いよ、あ・
々だの体にはね」
「わかった。か前の思う通りにする。しばらくは訟前の勝ちだ」
 声はとぎれた。
 タリJは、フーフイングーキャ″スルをヘルムの頭上K停止させた。地上すれすれた。
Jキャヅグ達、地虫は、ある入物の指令により攻撃を開始していた。地下トンネルのも
-ーメー!IL
  ちらこちらから勢いよく飛び出した。樹園の方々から火災放射罫による火が燃えあがって
  くる。有算入は地虫を見つけ、反撃を始める。
   ヘルムは、思いきり跳躍し、フライング・キ″四スルの底部にとりついた、タリスに合
  図をテレパシーでかくる。タリスは急速にフライングーyキャ″スルを上昇させた。
   この任務は失敗に終わりそうだ。グレイをどうしても県つけなければとヘルムはあせっ
  た。
   ヘルムは、フライング・キャ″スルの底部にいるのが自分だけでないことに気がついた。
  小さ々子供だった。
   ビッタだ。ビ″夕は何とかヘルムに助けられ、フライング’キ″″ヱルの下部ハ″チか
  ら内へ人った。ハ″チはタリスが開けてくれた。有翼入はあらわれなかった。タリスがフ
  ライング・キャッJルの中枢、操縦室を押さえているので、うかつに手を出せ々いのだ。
   ヘルムは少年K尋ねた。
  「か前は?」
  「僕はピッタ、入間樹の番人さ。おじさん、グレイさんを捜しKきたんだろう」
  『そうだ、なぜ、それを知っている』
   ヘルムはテレパシーでビッタに尋ねた。
27 「昨日、有翼入からダレイさんを檜えかえるようK言われたからさ。あんなことは初めて

78 だからね。何かあると思ったんだ」
  「それじゃ、分前はダレイが今植えられている所を知っているんだ々」
  「そうだよヽ僕が植えたんだからね」
  「すまんか、さっそくそこへ連れて行ってもら分うか」
  「その前に、一つ頼みがあるんだよ」
  「何だ、言ってみろ」
   ビッタはポケットから小型の箱をとりだす。
  「かっとヽ無理やり、僕の頭からその場所をテレパシーで探ろうとしてもダメだよ。そん
  なことをすればグレイさんは死んでしまうよ。グレイさんの足もとに爆弾を埋めてあるん
  だ。このスイッを押せば総て終わりさ」
  「悪賢いガキだ。わかった早く言え」
  「僕も地球に連れていって分くれよ」
  「何、お前をか」
   ヘルムはピッタの姿を見まわす。
  「そりだ。僕はナーダ77で小さい時から育った。たから一度も地球を昆た事が々い。地球
  の事はダレイさんから色々聞いた。行ってみたいんだ。分願い、連れて行って分くれよ」
  「わかった。連れていってやる。早く、グレイの居場所を教えてくれ。火がまわってくる
 そ」
  「本当に、地球に連れていってくれるんだね。まちがいないね」
  「ああ、たから早く教えてくれ」
   フフイング・キャッスルの窓からピッタは指さした。
  「あすこだよ。李そこにみえるあの番人小屋の近くだよ。早く、このフーフイング・キャ″
  Jルを偏に降ろしてよ」
   フライン″でキャッJルは番人小屋の真上で静止した。タリスも操縦室から出てきて、
  三人でフラインダ・キ″ッスルから飛び降りた。
   小屋の横K袋に包まれている入間樹があった。ビ“9x t!それを示した。
  「これた。これがグレイさんだ」
   ヘルムは袋を破き、グレイの顔を確かめる。テレパシーで呼びかけるか、返事はない。
  「どうやら、ダレイのようだな。しかし心は閉じられている」
  「よしヽさっそく、フーフインダ・キャッスルヘもどろう」
   フラインダ・キャ″スルはもう彼らの自由にはならなかった。領主が蘇ったのだ。それ
  は三人を押しつぶそうとして急速に落下してきた。大地が震える。フライン″ミキャッス
  ルのために小屋は粉4Kたたきつぶされた。さらに有翼人も飛来してきた。
279 『スキャヅダ、助けてくれ。ここまで地下トンネルを掘ってくれ』

280
 ヘルムは必死でテレパシーによりスキャッグを呼ぶ。
 なんとか、スキャ″グには通じた。

 フライング・キ″。スルは再び大空へ舞い上り、また急激に三人の方へ落下してきた。
地面がゆれる。どうにか三人は走りつづけ逃れる。グレイの体を抱えて走るのはか忿り危
険船ト

 [♀ぐヽスキャッグヽ俺達はフライング・キャ″スルに押しつぶされてしまう』
 空からは有翼人がレイ・ガンを撃ってきた。その時突然走っている前の地面が割れた。
スキャッグが顔を出した。

乙早くしろ!」

 グレイを抱いて、ヘルム、タリJ、それにビ″タか地下トンネルに急いで逃げこんだ。
スキ″″グ達かここまで据り進んで来たのだ。
乙上はえらい騒ぎだ」
「それもこれもか前さん連のおかけさ」
 大き々音が響き、大地が揺らいだ。今入ってきた穴のあたりが地くすれを起こした。フ
ライング・キャ″スルがまた降下してきたのだ。土がパーフ.ハラと皆の頭の上に落ちてくる。
乙危いところだ。散切違ったら、俺札冊どなっていたぜ」
「さあ、これからどうする。どうやってグレイを連れて帰るかだ」

  {頼まれついでだ。すまないが地獄船の所まで俺達を連れていってくれ」
  「ちえっ、人使いの荒い訟方た恋」
  「この星から脱出するには、残念々がら、再び地獄船のやっかいに忿らねば忿」
  「ヘルム、覚えていてくれよ。俺はか前さん方の命の恩人恋んだからね」
  「わかった。わかった。か礼は後で、恋人とてもするさ。頼むよ」
  「わかった客人。仲間の助けを借りて大至急やるさ」
   地獄船のすぐそばに穴か開いたのはそれか≒耐町、らいたった頃だ。地獄船にはバル
  船長以下の船員は唾だ帰ってきていないようだ,
   人間梅園の方からは大き恋火の手があがっている。
  「か、燃えてる。燃えてる」
   スキャッグがうれしそうに言った。
  「人間が焼け死んでるんだぜ。そんなにうれしいか」
  〔クリス、彼らは人間梅恋人だよ。これで彼らは緩慢な死からのがれられたんだよ」
  「そうだ、それか幸せってもんだ」
   ヘルムはダレイの体を見下ろし恋がら、言った。
  「さあ、仕事を早くかたずけようぜ、タリス。ビIMX’ 4前はここに残ってグレイを見て
28 いてくれ」
282
 ヘルムとタリスが船のハ″チヘ向かう。留守番の船員がいた。彼は二人を船長達と思い
こんだ。
「船長、大丈夫ですか。大変な事に:・:・」
 ヘルムに気づいたかすでに遅かった。レイ・サーベルを抜こうとしたが、一撃で倒され
た。
「ようし、完了だ。発進だ。この船で脱出だ」
「ビ″ク、ダレイを船の中へ運べ」
 ビッタはグレイの体をそっと船へ横たえた。急にタリスは、レイ・サーベルをビ″タヘ
向ける。
「ビ″タ、すまないが、船を降りてくれ」
「どうして、さっきヘルムと約束したんだ。僕を地球に連れて‘いってくれるって」
 ヘルムも冷たく言う。
「残念だな。ここでか別れだ」
 yキャッグが横から口を出す。
「タリス、ヘルム、それはあんまりだぜ。この坊やだってグレイを助けるために働いたん
だ。いいじゃないか。乗せてやれよ」
「ユキ″″グ、分前は命の恩人かもしれんが、黙って船から出ていってくれ。俺達はグレ
  イを連れて帰るようK命令されているだけだ。他の人間は残念々がら、足手まといだ」
   「でも」
   「うるさい。ぐずぐずするな。か礼はまたあとでだ」
   ビ″夕はしかた々くスキャ″グと共に地獄船から外K出た。
   ビざタはヘルムとタリスK乗っとられた地獄船が、グレイを乗せて、飛び立って行くの
  を見上げていた。
   フライン″ミキャッスルが飛来し、追撃のために上昇しょうとした。しかしフライング
  ・キヤ″Jルはゆっくり停止した。入間梅園が完全に燃えあがるのをながめているように
  見えた。やがて地獄船とは別の方向へ飛び去って行く。残った有翼入もフライング・キャ
  ″Jルの方へ舞い上がっていった。ナーダー]‥は地虫の星と々ったのだ。
   あたりに入間樹の燃える煙が漂ってきた。ひどい臭いだ。
   スキャッダが言った。
  「りまくいきましたね。ガーディアン・ビッタ。奴らは完全に信じきっていますよ。あの
  種入間がグレイだとね。地球K辿り着いてからの奴らの行動が勉秘ですね」
   ビッタはヽ表層人格を、今の今まで人工的K作りあげていた偽りのパーソナリテづをか
  なぐりすてた。
28 「そうだ。彼らを監視していれば、コンタタトしてくる他のROW、つまり侵入者を突き
8Z 44;Qることができるから々。彼らの表層人格はかなり暫Fだ。君といる間、私といる間で
  もすきを見せなかった。二人は完全にタリスとヘルムになりきっている。いつROWの本
  隊から指令を受けるか、それを察知し々けれぱ」
  「本物のグレイはどうしました」
  「だいじょうぶ。安全な場所に隔離してある。後から私の船で地球へ連れて帰るよ。グレ
  づには休息と治療が必要だ。それに新しい家庭が必要だ。それにMEを生じるための子供
  がね。彼はかなねROWに痛めつけられていた。彼の話を聞いて私にはそれがよくわかっ
  た。彼が気づかないう・も陀私がかなり治療を行々ったんだ。彼と対話しながらね」
  「先刻、彼らが連れていった人間奏は?」
  「ああ、彼には囮になってもらう。グレイということでタリyとヘルムがこれからも守り
  をかためることKなるだろう。もう我々に過失は許されない。今回のグレイのようにね」
   煙の中から人間が数人とびだしてきた。バル船長と船員達だ。彼らは煙で真黒になり、
  地獄船が出発したのを見て怒り狂っていた。
   ビ″夕は隠し持っていたレイーガンを抜き、落ち着きはらい、全員を撃ち殺した。反撃
  のひまを与えなかった。
  「もう、地獄船もナーダ77に来ることは々いだろう。約束通り・、この星は君達地虫族の支
  配下となった。人間梅園も消滅した」
28「
「その点に関して感謝しています。ビ″タ」
「いやか互いさまさ、スキャッダ」
「しかし、ROWの擬態技術には驚きました。私もあの船にセ″トされていたフィルムを
見なければ信じられませんでしたよ。あのタリスとヘルムがROWだとはね」
 クリスとヘルムのロケットの残骸から、スキャッグが拾ってきたブラッタ・ボ″夕てに
はフイルムが収められていた。
 そのフイルムには驚くべき事実が写されていた。
 ナーダー]‥への途上でロケ″トは攻撃され、タリスとヘルムは死亡した。時をおき船の側
壁から緑色のゲル状の生物が侵入してきた。その生物は二つK分かれ、それそれヘルムと
タリJの死体K被いかぶさった。しばらくして二体の生物は二人の死体から離れて起きあ
がった。始めはぼんやりした形だったが、人間の形をとり始める。数分のも、そこKはタ
リスとヘルムそっくりの男が出現した。彼らは死体を始末し、船をナーダ77へ向けたのだ。
それからコッタピヅト内で彼らは眠りに着いた。人間のパーソナリティを学習するのには
時間がかかるのだ。
 船が爆発したのは、医療チューブでタリスの体が入間でないと感知されたからだ。自動
的に自爆装置か働いたのだ。
 スキャッダはピッタK言った。
86  「これでスリーパーとしてのあなたの役目は終了しましたね」
  「そりだ・今までの協力を感謝するよ」
   ビ″タはヘルムとタリスのすぐ後で地球を出発したのだ。ビ″タの事はガーディアンの
  内部でもあまり知られてい々い。彼はタイム・ジ″ンプを行ない過去へ瀕り、赤ん功の姿
  に変身しヽ地獄船にわざとつかまった・昭対聯がらナーダ77K来ていたのだ・今のビッタ
  の姿は十才の子供なのだが、すでにもう数百歳陀なっている。ピ″クは長命族で最上級ガ
  ーディフンに属している。
   いつ唾で、俺は戦い続けることができるだろり。新生人類は果たしてROWに打ち勝つ
  ことができるだろうか。ビッタは自問自答する。俺はしかし、新生人類のため、自らの生
  存のためにもどうしても戦い続けなければならぬ。ナーダ77の薄紫色の空を見上げながら
  ビッタは思った。


© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: