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飛鳥京香/SF小説工房(山田企画事務所)
●編集終了●哀ランド(1989年)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
「ママ、このあたりだね」
私はすっかり年老いた、かたわらにいる彫に言った。眼下にはき
れいな海が吃える。
「そうだよ、ビィー、サンチェス島はこのあたりにあったんだ」
「じゃ、母さんが、花束をおとしてよ」私は大きな花束を渡し
た。
「そうだね、ビィー。お父さんも、喜ぶだろうさ。お前がこんなに
りっぱになったのだから」
花束は、私達の乗っている円盤から、吸い込まれる様に海へ落下
していった。
「さようなら、パパ、そしてありがとう」
海面を見つめるママの目には涙が浮んでいた。私は母の手をにぎ
りしめていた。
かつて、この海に、サンチェス島という島があった。今は、跡形
もない。
サンチェス島は悲しみの島、哀ランドだった。
さて、その話を始めよう。
潜望鏡がアラフラ海に突出していた。潜望鏡が、始まりだった。
やがて、水上にゆっくり艦橋があらわれ、ゆっくりと航行し始める。
甲板を波が洗い始めた。海の色はインディコブルーで、海の底はな
いようにすら見える。
潜水艦のハ″チが開かれ、数人の男がはいあがってくる。やがて
ゴムボートがひきずり出され、1人の男がそれに乗り込んだ。
「頼んだぞ、ボーン」
ゴムボートの男に、潜水艦から一人の男が叫んでいた。ゴムボート
の男は巨大な体で、答える。
「わかりました、チーフ」
ゴムボートは遠くに見える島をめがけ、エンジン音をあげていた。
数十分後、ゴムボートはその島の海岸線にたどりつく。夕闇がせま
っていた。男はゴムボートを岸へのりあげた。
突然、光が男を襲う。どこかに仕掛けられたサーチライトが男を
照らす。瞬間男は体を伏せた。
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