こんなものですが

こんなものですが

近現代日本政治を読む、診る(42冊)


書 名:政治ジャーナリズムの罪と罰①
出版社:新潮文庫(平成8年) 

書 名:だれが日本を救うのか②
出版社:新潮文庫(平成11年)

書 名:総理の座③
出版社:文春文庫(平成12年)

書 名:総理執務室の空耳 黒河小太郎政治小説集④ 
出版社:新潮文庫(平成8年)

書 名:寸前暗黒⑤ 
著者名:黒河小太郎 
出版社:角川書店(平成13年)

 田勢康弘は日経政治部記者出身で、現在論説委員である。
僕は彼の書く政治を診る視点、分析力そして文章が好みであり、
いづれの本も読んでいて相性が合う、僕にとって“読みやすい”。
 黒河小太郎とは、彼のペンネームである。
 何より興味をそそるのは、各書そうであるが、随所に記される政治家のエピソード、分析の面白さである。宮沢喜一に関するところは秀逸である(別ページ「宮澤喜一という人」で紹介します)。
 当然、そうした人物観察眼の確かさに裏打ちされた、政治に対する分析、見方の鋭さからは、現在の政治、政治家の状況を悲壮な決意で冷静に書き綴っていく彼の
思いが伝わってくる。

 特に②は単行本では『指導者論』という題名で、彼がハーバード大学で「指導者論」研究に従事するきっかけというものである。
 彼が伝えたいことは、まず、政治から必死な「言葉」、「言論」が消えてはいないか、という政治家の“言語的貧困”を述べていることである。さらに言えば、語るべきものすら持っていないという“言語的消失、不在”という事態に至っているのでないか。語るものがないということは考えていないことであって、政治においては、哲学がない、志がないことを意味する。

 ここで、政治家の言葉をひとつ紹介しておきたい。
 平成7年4月、当時衆議院議員であった石原慎太郎が、その25年表彰で答礼演説をした一節である。次の言葉を残し、彼は国会を去った。
 『日本は国家として明確な意思表示さえできぬ、さながら去勢された宦官(かんがん)のような国家に成り果てている』と。なんとも石原らしい強い言葉である。
 「誰々」らしい言葉。自分の言葉で語る。それのみが聞く者を引きつける。小泉の言葉は彼らしい、明確でわかりやすいものである。その意味では、良しとしたい。しかし、重みはないな。言葉を自らの立場の維持に用いているに過ぎず、国民を説得しようとするものから出ていないと思う。

 この本の中で、ビートたけしの話を紹介しているので、引用しよう。
 『信用できる政治家というのは、敵を作る一言を言える人なんだよ。もともと、どうやってリスクを背負って、どうやって恨みを買うかというのが政治なんだ。それを避けるようなことばかり本に書いている政治家なんて、はなから怪しいんだ。』(P56)

 確かに、小泉はこれまでも敵を作る言葉、主張を言ってきた政治家である。「郵政民営化」然りである。そこから論戦が生まれるのだから、信用したい気持ちはある。この点、誉めてもいいのかな。

 政治と言葉について、最後に石橋湛山が首相就任直後に行った演説を引こう。
 『民主政治は往々にして皆さんのごきげんを取る政治になる。国の将来のためにこういうことをやらなければならぬと思っても、多くの人からあまり歓迎せられないことであると、ついこれを実行することをちゅうちょする。あるいはしてはならないことをするようになる。こういうことが今日民主政治が陥りつつある弊害である。(中略)私は皆さんのごきげんを伺うことはしない。ずいぶん皆さんにいやがられることをするかもしれないから、そのつもりでいてもらいたい。』(P62)

 選挙というシュクアから逃れることのできない政治家にとって、こう言える石橋の信念は大変なものといえるのではないだろうか。


 彼が伝えたいもう一点は、国民が自身の社会や国家に関心を寄せ、考えない限り、真の期待しうる指導者は生まれ出てこないと言うことである。これを「民度」=国民のレベルの問題だといわれるが、まさに政治や政党、政治家への怒り、不信、侮蔑、そして無視こそは、状況を悪化させはしても、向上はさせないのである。

 ③は、宮澤、細川、羽田、村山の各政権を記述したものだが、人物評の多さもさることながら、広く戦後の日本社会が「人材払底」になっていると記述する。そして、真の「エリート」の必要性をいう。

 真剣勝負の生きた政治家の言葉による戦いを読みたい方に、次の本は最適である。

書 名:忘れられない国会論戦 再軍備から公害問題まで 
著者名:若宮 啓文
出版社:中公新書(平成6年)


書 名:戦後総理の放言・失言
著者名:吉村 克己
出版社:文春文庫(昭和63年)

書 名:一九九一年 日本の敗北
著者名:手嶋 龍一
出版社:新潮文庫(平成8年) 

寸 評:湾岸戦争が起きたとき、僕は高校1年だった。
    当時、先生が教室のTVをつけ、爆撃している様を「見ておくように」
    という配慮からだったのか、見た記憶を持っている。
    本書は、イラクのクエート侵攻から戦争突入までの克明な記録である。
    ワシントン、バグダットの動き、そして、翻弄される東京がよく分かる。
    時は海部内閣、小沢一郎幹事長。
     イラクに自衛隊を出せる法律が成立した今、かつてこれほどまでに混乱
    を極めた当時を知ることは、日本という国とは何かをじっくり考えること
    にもなる。

書 名:情報、官邸に達せず
著者名:麻生  幾
出版社:新潮文庫(平成13年)

書 名:亡国の徒に問う 
著者名:石原慎太郎
出版社:文春文庫(平成11年)


書 名:竹下派 死闘の七十日
著者名:田崎 史郎 
出版社:文春文庫(平成12年)


書 名:国家の論理と企業の論理 時代認識と未来構想を求めて
著者名:寺島 実郎 
出版社:中公新書(平成10年)

書 名:首相公選を考える その可能性と問題点
著者名:大石 眞他編
出版社:中公新書(平成14年)

書 名:日本の連立政治
著者名:田中 秀征
出版社:岩波ブックレット(平成9年)

書 名:舵を切れ 質実国家への展望
著者名:田中 秀征 
出版社:朝日文庫(平成12年)


書 名:加治隆介の政治因数分解
著者名:弘兼 憲史
出版社:講談社文庫(平成10年)


書 名:政権争奪
著者名:戸川猪佐武
出版社:角川文庫(昭和57年)


書 名:昭和史七つの謎
著者名:保阪 正康 
出版社:講談社文庫(平成15年)

書 名:史観宰相論
著者名:松本 清張
出版社:文春文庫(昭和60年)

書 名:昭和史をさぐる
著者名:伊藤  隆 
出版社:朝日文庫(平成3年)

書 名:重臣たちの昭和史(上)(下) 
著者名:勝田 龍夫
出版社:文春文庫(昭和59年)

書 名:近代日本の政治家
著者名:岡  義武 
出版社:岩波現代文庫(平成13年)

書 名:西園寺公望 最後の元老
著者名:岩井 忠熊
出版社:岩波新書(平成15年)

 昭和前期、表題のとおり最後の元老として時の宰相を昭和天皇に奏薦してきたのが西園寺である。僕は、彼のような政治家は嫌いでなく、彼の教養レベルや時代感覚、政治姿勢に近い現在の政治家を挙げれば、宮沢喜一がそうだと思う。
 しかし、戦前の軍部を止めることはできず、政治的に失敗した人物である、
何しろ、最も避けるべきと考えていた日米戦争への道程を阻止し得なかったからである。
 リベラル的、「憲政の常道」を信奉する政治家と思えながら、
「文明」の名の下の侵略は是認し、アジアのナショナリズム(民族の独立運動など)を理解できず、さらに、自身、政党の総裁を務め、政党内閣制を定着させようとするも、思想・言論や政治活動の自由を守ることには冷淡な姿勢、ある意味、「仕方ない」で済ませてしまう、よく言えば達観している、悪く言えば逃げの姿勢、自己保身とも言える。こういった政治姿勢、宮澤とよく似ている。
 西園寺は、天皇の権力の源泉こそは、大元帥として陸海軍を統帥することにあることを承知しており、そのため、元老として、国家統治において、国務には関与できても、統帥には介入しようとしなかった。
 しかし、国務と統帥がバラバラならば、国家はどうなるのか。統一できるのは、「無答責」である天皇しかいない、というパラドキシカルなことになる。そして、西園寺は天皇に責任が及ばないことを自らの役割と心得ていた。(未完です)

書 名:吉田茂という逆説
著者名:保阪 正康
出版社:中公文庫(平成15年)

別ページ「吉田茂という人」で紹介します。

書 名:戦争の日本近現代史 征韓論から太平洋戦争まで
著者名:加藤 陽子
出版社:講談社現代新書(平成14年)

書 名:日本のいちばん長い日 運命の八月十五日
著者名:大宅 壮一編
出版社:角川文庫(昭和48年)

書 名:実録・天皇記
著者名:大宅 壮一 
出版社:角川文庫(昭和50年)

書 名:象徴天皇の誕生 昭和天皇と侍従次長・木下道雄の時代
著者名:高橋  紘 
出版社:角川文庫(平成14年)

書 名:皇居前広場
著者名:原  武史 
出版社:光文社新書(平成15年)

書 名:日本近代史学事始め 一歴史家の回想
著者名:大久保利謙 
出版社:岩波新書(平成8年)

書 名:靖国の戦後史                         
著者名:田中 伸尚 
出版社:岩波新書(平成14年)  

書 名:国際スパイ ゾルゲの真実            
著者名:NHK取材班 下斗米伸夫 
出版社:角川文庫(平成7年)


[現代政治家]
書 名:大臣
著者名:菅  直人
出版社:岩波新書(平成10年)

書 名:私は闘う
著者名:野中 広務
出版社:文春文庫(平成11年)

書 名:われ万死に値す ドキュメント竹下登
著者名:岩瀬 達哉
出版社:新潮文庫(平成14年)

書 名:田中角栄 その巨善と巨悪
著者名:水木  楊
出版社:文春文庫(平成13年)

書 名:後藤田正晴 異色官僚政治家の軌跡
著者名:保阪 正康
出版社:文春文庫(平成10年)

書 名:わが上司 後藤田正晴 決断するペシミスト
著者名:佐々 淳行 
出版社:文春文庫(平成14年)

書 名:自民党・ナンバー2の研究
著者名:浅川 博忠
出版社:講談社文庫(平成14年) 

[小 説]
書 名:小説 税制国会 リクルート疑惑
著者名:大下 英治 
出版社:角川文庫(平成1年)

書 名:三本の矢(上)(下)
著者名:榊  東行
出版社:早川書房(平成10年)

書 名:官邸(上)
著者名:成田 憲彦
出版社:講談社(平成14年)



© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: